いざ帝国へ
転移の光が晴れるとそこは洞窟の中だった。
「転移失敗したのか?それとも違うダンジョンか?」
また違うダンジョンを1から攻略とかやめて欲しいんだけど。
「う〜ん、違うと思うな、この壁とかダンジョンの環境が変わり始める前と同じだよ、1階層にいるんじゃない?」
「そうなのか、俺は全然覚えてないけど楓が言うならそうなんだろうな。」
それからは楓に腕を引かれダンジョンの入り口まで案内された。……なんで覚えてんだよ。
「あぁ〜……眩しっ‼︎」
しばらく進むと明かりが見えて来た、テンション上がって外に出て見上げるとこれだよ。
このダンジョンから出てきた、もしくは入ろうとしてるダンジョン攻略をなりわいとしてる冒険者(?)に変な目を向けられた。
「もう、焦りすぎ。でもやっぱり久しぶりだね、みんな元気にしてるかな」
眩しそうにしながら外に出てきた楓はクラスメイトの心配をしていた。
「大丈夫だろ、光輝?とかが纏めてくれてるんだろ、安全にレベル上げでもしてるんじゃないか?」
「ここで戦おう」とか言ってた記憶しかないけど楓いわく強いらしい。
それから俺たちは冒険者の1組にダンジョンで軽く遭難したと伝えて近場の町まで馬車に同行させて貰った。
その際いくつか質問を楓が世間話に交えてしていた。
「そうなんです遭難中はほんとにきつくて。あっ私達遭難中邪魔になるからってステータスプレートやお金を捨ててしまって、どうすれば再発行してもらえるか知ってます?」
「ステータスプレートか、ありゃあ身分証みたいなもんだから検問所で再発行してもらえると思うぜついでに冒険者ギルドで魔石を換金しておけよ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
冒険者ギルドは冒険者に依頼を届けたり魔石を換金する場所とのことだ。
しばらくすると町に着きそこで分かれた。
冒険者達は馬車なので検問する場所も違うらしい。
「ステータスプレートを」
「すみません俺達2人ともダンジョンで遭難してなくしたんですよ。」
「遭難?まあ良い。おい、ステータスプレートを持ってきてくれ」
検問官にステータスプレートと針を渡された。
正直、針とか防御が高くて刺さらないので自前のナイフで指を切らせて貰ったけど軟膏要らないね。
王城はマジで異世界人に合わせてくれてたんだな、今更この程度で痛くも痒くもないわ。
ステータスプレートに名前、年齢、種族のみ出して提出する。
「ん、通ってよし」
「検問ってこれだけで大丈夫なんですか?」
検問のくせに適当すぎないか?って異世界ものの小説読んでて滅茶苦茶そう思うんだよね。
「知らないのか?犯罪者はステータスプレートの横に×がつくんだ、そういうやつには注意しろよ。」
あぁ、なるほどそんなこと聞いたことあるようなないような、いや無いな。
「変なこと聞いてないでさっさと行くよ。」
楓にせかされてはいはいと言いつつ検問所を抜けると
「わぁ、普通」
いたって感動も無くまあ中世ヨーロッパにありがちな普通の家が立ち並びまぁ活気はあるだろうと言うレベルの人がいた。
「いったい涼太はこの文明の国に何を求めてるの、魔物がいてこのレベルなら十分でしょ」
多少呆れながら声をかけられる、分かってはいたんだが、まあ期待くらいはするよねもっと感動出来るレベルの建物を。
でも楓の言う通りダンジョンより弱いとはいえ魔物のいる地上でよくこのレベルの建物と人口を維持してるよな。
それからは冒険者ギルドに行き魔石を換金、ダンジョンの深い場所のは「凄えぇぇ」となろうもんなら面倒なのであくまで浅い層の魔石だけを換金してもらった。
換金を終えると帝国に行くと言う商業者を探して馬車に同行させて貰う。
すると俺達の他にも冒険者を雇っていたんだろうか、1人の男がやってくる。
「いやぁ無料で護衛をやって貰えるなんて良い人達を見つけたもんだ」
「いえいえ、こちらこそ冒険者でもないのに雇っていただけてありがたいです」
相変わらずの楓の社交力にとても助かっています。
「ただねぇ、一応護衛をされる商人として実力も見ておきたいんですけど良いですかね」
?……商人⁉︎そのゴツい筋肉と野太い声で商人⁉︎いやいやあんた熊くらいなら縊り殺せるだろ⁉︎
「え?あっ商人の方でしたか!大丈夫ですよどちらの方と」
さすがのコミュ力の化け物でもこの不意打ちは予想外みたいだったな、ちょっと面白い。
「では……わたしが直々にお相手いたしましょう」
やっぱりだよ!あんた護衛いらないだろ!身分の分からねえやつを雇うなんてなんかおかしいと思ったよ雇った護衛の身ぐるみ剥ぐ気だよ⁉︎
「はっはっは、冗談ですよそちらの男性も驚きすぎです」
「ちょっと涼太、何失礼なことしてるの⁉︎」
「いえいえ、こちらもふざけましたから、この見た目なら仕方ないですよ」
冗談か、冗談か⁉︎まだ少し信じれないんだが、まあ実際の筋肉がなくてもステータス補正があるから冒険者は筋トレしないんだったか、でもなぁ。
一頻り笑うと商人のおっさんは1人の男を連れてきた。
「こちらの方が冒険者パーティー『戦帝』のリーダーをしているシアルさんです」
「よろしく、あんたらが同行者だったんだな」
その人は金髪で短髪の細マッチョ、人当たりの良さそうな20くらいの男だった。
そして、男は俺達をここまで連れてきてくれた冒険者のリーダーだった。
「あなたが護衛の方だったんですね。あれ?今ダンジョンから帰ってきたばかりなのに疲労とかは大丈夫なんですか?」
「もともと俺達は帝国に帰る予定でな、そのために日が高いうちに上がったんだ。それで帰るついでに護衛依頼を受けたわけだ。」
なるほど、と楓が相槌をうつとシアンさんがどちらが戦うんだ?と問いかけてきた。
「あっ、じゃあ俺がやります」
ここまで完全に黙っていたからな、このくらいはやっておかないと。
「おっ⁉︎あんたか馬車の中でもちっとも喋らなかったしこのまま任せるのかと思ったぞ」
「いや流石にそれはダサいでしょう、会話も交渉も任せて戦闘もってのはねぇ」
「そりゃそうだよな、男女差別ってわけじゃねぇが男なら女に護られたくはないだろう」
ルールは寸止め、魔法禁止、武器ありの近接戦
「だが俺は武器は使わねぇし当てて貰ってもかまわねぇぞ」
シアンさんは相当自信があるのか素手を選択してきた、まあ雇う護衛が怪我してるなんて意味ないからな。
「じゃあ俺も素手で行きます」
ただ、どれだけ自信があっても楓いわく冒険者のレベルって低くて10高くて200くらいらしいからな。例外もいるようだが、
「彼女の前で格好つけたいってことか?まぁ、実力さえあれば合格だな」
武器使ったら殺す自信しかねぇからだよ、そもそも彼女じゃねえ。
範囲は半径5mほどの円で決闘開始。
先に仕掛けたのは
「ほら仕掛けてこいしっかりと試験してやるよ」
というわけで俺だ。
適当に近づきストレートをかます。
「少し大ぶりじゃないか?素手の戦闘慣れしてないな」
自信あるだけはあるのかその攻撃を躱してカウンターを入れてきた。
「あれ?」
そう声をあげるシアンさん。そのカウンターは拳一個分俺の顎からそれていた。
「どうしました、俺って何か反則でもしました?」
「あっ、いや上手く避けたな見えなかったよ。」
「はぁ、では仕切り直しを」
シアンさんが今度は俺からと言わんばかりに連撃を放ってきた。
まあ、未来視使ったら全部見えるんだから当たらないよね。
最後は足払いでバランスを崩して寸止めで終わりだった。
「ふぅ、割と本気だったんだが1発も当たらなかったな。ダンジョンで遭難しても生きてるわけだ。」
足払いで倒れた状態から立ち上がってほがらかに握手を求めてきた。
なるほどこれが陽キャの力か凄えコミュ力だ。
出された手を無視するわけにもいかず渋々と握手をしてるとゴツい商人が近づいてきた。
「やるな、あんたまさかシアンさんに勝っちまうなんて」
え、何このおっさん凄い絡んできた、もしかしてこの人って凄い人?いや過度な期待されても困るんですけど、まあそりゃ試験官を完封したら期待しますよねぇー。
はぁ、まあいいか別に目立つのが嫌いってわけでもないしな、好きでもないが、てか他人の目なんか気にしてたら自己中できねぇよ。
そして商人のおっさんと『戦帝』のパーティー、シアン含めた4人に質問攻めにされながら(もちろん楓も引き摺り込んだ)馬車は出発した。




