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英雄の戦い

 その魔物は白い5対10枚の白い翼を翻し上機嫌に目を細め言う。


「どうもはじめまして、私はこの裏ダンジョン最下層を守る者『ジャッジメントセラフ』という種族です。まあ私1人なのですがね」


 俺と楓はその天使もどきを前にして一切戦闘体制を崩さずに答える。


「いきなり随分なご挨拶じゃねえか、口調の割にはクレイジーだな」


「ははは、そちらが好んでやられているようなのでこうするのが礼儀だと思ったのですが?」


 一切悪びれずに返してきた、そう言われると返す言葉がない。

 少し困ったと頭を掻くと楓が話を切り込んだ。


「会話する意思があるなら通してくれない?別にすき好んで争いたくはないの」


 ドロップに興味はあるけどな、流石にこのダンジョンのボスにそれだけで挑むことは流石にしないんだが


「それは無理な相談ですよ、この扉は私を戦闘不能にしなければ通れません」


 だよなぁそりゃあこんな所任されてるんだから


「ただし」


 お?


「私は本気を出しません。まあ、貴方達に才があればですが」


「才、いったい何のだ?」


 問いかけるとすぐに答えが返ってきた、それも明確な。


「この中で動けるかどうかですよ



《選定の間》起動」


 


 は⁉︎

 身体が、痺れて、クッソしくじった麻痺系統のデバフか!


「涼太、大丈夫⁉︎」


 麻痺ったのは俺だけか、ぬかったな楓を残したのは失敗だ。


「おっと、治りませんよそのデバフは」


 は?そんなことありえるのか、それが本当なら俺は詰みじゃねえか、いや常にあれを使ってないなら解除すれば治るのか?


「本当に治らない?いえ違う、治しても直ぐに麻痺になってる」


 クッソ常時かけてきてるのか、なんとか切れるまで時間稼ぎを


「では説明に戻りますよ」


 この状況下で唯一平然と話を続ける。


「選ばれたのは貴方ですか、では私はお嬢さんに対して決して本気を出しません、そしてお嬢さんは私を倒してください。……ああ、そこのは戦闘が終わるまで安全は保証してあげますよ、一応仲間みたいですし」


 いきなり扱いが酷えな、いったい楓が何に選ばれたんだ。


「どういうこと、私になんの用があるの」


 楓が奴を睨みつけながら答える。

 出来れば扱いに触れてくれよ、別に気にしてはいないが。


「他人の話を最後まで聞いてください……私は諸事情で英雄を求めています。しかしそれは誰にでもなれるものではありません、故にここまでに力あるものを選定しここで才能を見極めるのですよ。」


「へぇ、それでここで選ばれたのが」


「そう、貴方です。ここまでの環境変化に対応でき、力もあり、そして何よりも英雄の才能がある‼︎私達が求めている人間、それが貴方です‼︎」


「なら何で戦う必要が?才能の有無は分かってるなら願いをいえばいいじゃない、叶えるかは知らないけど。」


「しかしですねぇ、才能とはいえ開花しなければ意味を持ちません。ですから私と闘いで才能を開花させた上で伸ばすのですよ。」


「まあそんなことはどうでもいいわ、貴方を倒せば涼太は治るのよね」


「ええもちろん、所詮は選定と才能開花の邪魔をされないようにするための措置ですから」


「そう」


「ただし私は本気を出しませんが殺す気で行きます、本気でもない私にこのされるようではその程度の才能ですしね。その際は処理が楽なのでその男は殺します。」


「すぐに処理するわ……待ってて、すぐに終わらせてくる。」




……そうか、俺が足手まといになってるのか。

 英雄の才能ね、ないのは昔から分かってたけどこうもはっきりと言われると凹むね。











 涼太、待っててすぐに終わらせる。


 最初に仕掛けたのは私、杖を振るい無限の魔力にものを言わせ大量の魔法陣を展開する。

《思考速度上昇》《思考力回復》《並列思考》に《火槍》《雷槍》《風弾》《水弾》《光拡散弾》全ての魔法を過程もその名前すらも吹っ飛ばしてイメージだけで使う。


「これは!なるほど魔術師として上級者なんてレベルを遥かに超えている。しかし足りませんね」


 5対の翼の1対目が光を放ち無数の魔法陣が生成され、その魔法陣から光の弾幕が形成される。

 互いの弾幕が打ち消し合いいくつかの魔法がすり抜けて飛んでくるも一つのリングに触れる。

「《アイギス》」

 50階層以後も強化されその絶対防御を誇る盾がすり抜けた光を打ち消す。

 相手も同じ頃に2対目の翼が輝き、透明なベールが包み込む。

 互いに攻撃魔法と防御魔法を展開し、しばらくするとそれは途切れた


「以外としぶといわね、もっと早く終わると思ったんだけど」


「ふふふ、そうですねでは次はこれです」


 3,4対目の翼が同時に輝き肉体に光が降り注ぎ翼の輝きの消失と共に手には細身の剣が握られている。


「この剣の銘は……っと!あぶないですね」


 何かしら喋ろうとする奴の顔目掛けて風槍を撃った。


「話してる方がアホなのよ」


 再び複数の魔法陣を形成し放射する。

 その攻撃に奴は動かずに対応する。

 1対目の翼がひかり剣にエンチャントを施した。


 1対目は光系統の魔法、2対目は守りのベール、3、4対目の一方はあの剣だろうけどあと1つは?


「あまり芸がないと私が勝ってしまいますよ。」


 その言葉と共に耳をつんざく音が鳴り響き、豪雨となんら変わらない密度の魔法が切り刻まれる。


「っ‼︎」


「魔法だって切れるんですよ、エンチャント済みの武器であればね」


 焦りもせずもはやアドバイスまで寄越してくる。


「随分と余裕そうね、その態度が続くかしら」


 さらに魔法を増やす、今までの中位魔法の数を減らし脳への負荷を考えず上位魔法を乱射する。


「まだペースが上がりますか、良いですねえさっさと私を倒してくださいよ。」


 それでもその斬撃を抜ける魔法も余波程度のもので身体にかすり傷を負わせる程度に終わる。


 これ以上の量を出せないことを知ってか知らずかスピードを上げた斬撃は魔法の豪雨を突き抜け目の前に迫る。


 こんなのと近距離戦をしたとしても負けるのは確実。


「この程度ですか、戦闘経験が足りませんでしたね。残念です」


 そう言って剣を私に振るう。


 ちょっと舐めすぎじゃない?


 そこから私は後ろへ飛びさらに靴裏に仕込んだ罠を自分で発動させる。

 1つは補助魔法の硬化、これは次への布石。

 もう1つは風球、靴から出されたそれは爆風により硬化された私を安全圏へと吹き飛ばす。


「なるほど、ただそれでは同じことの繰りかっ‼︎」


 最後に1つ、私がさっきまでいた場所に設置された罠化した魔法、最上位魔法 《プロミネンス》。


直撃


「ちょっと私を舐めすぎじゃない?」


 燃え盛る紅炎の爆撃に飲み込まれありとあらゆるものは融解か破壊を余儀なくされる。


 残り火ですら軽く上位魔法を上回る炎から黒こげになった身体が


「まさか私の防御魔法を破壊するとは思いませんでしたよ、本当に才能の塊ですね」


 出てくることもなく悠然と炎をバックに歩み出て来る。

 そんな……当たった、直撃だった、なのに何故


「あら大丈夫でしょうか、心は折れてませんか?まだチャンスはまりますよ、もう一度同じものを当てれば良いのです。」


 無理だ、そんなの、今のは完全に不意打ちだったもう一度当てろって?

 私の魔法を全て切り刻んでくる相手に?冗談じゃない。

 第一戦闘分野が違うじゃない、遠近完璧な相手と遠距離専門の私じゃ私が不利でしょ。

 それに種族だってこのダンジョンのボスを務めてるようなのが人間相手に1対1って。


「そうですか無理ですか、なら仕方ありません。先に少年から始末しときますかね」




……?

少年?

涼太を?

始末?

……?


「なにを…言ってるの?……手は出さないんじゃ」


「あら、それは貴方が勝った場合でしょう。今を見てください私の勝ちは確実、部屋に散らばるゴミを先に掃除して何の問題が?」


 涼太へと視線を向けるも視線が合うことはなかった、けど私の中ですべきことは決まった。

 ゴミ?掃除?





へぇ


「私が……させるとでも?」


 その瞬間、私を押さえつけていた何かが吹き飛んだ気がした。

 そしてそれと同時にこの世界に来た時以上に力が湧き上がる感じがする、果ては全能感さえ。


「ふっふふふ、ここで来ますか。いやぁ本当に貴方にはありますよ英雄の才能が。さあ見せてください、この空間で動ける英雄の卵達のみが持つ力、《覚醒》を」


「《聖炎《フレア》》」


 眩い炎が突き進む。

 奴はそれを切り裂こうとするも聖炎はそれを弾き飛ばしそのまま飲み込んだ。


「ガッはっ!」


 その炎から這い出るように出てくると全身から煙を出して焼けたというよりまるで浄化されたようだ。


「ここまで変わるのですね、私もギアを上げるとしますかね。これが本気を出さずに使える最大限の力です。」


 そう言うと5対目の翼が輝きその頭上に光の粒子が集まっていく。

 もしかしてあれがこの部屋に入った瞬間の攻撃?

 だとすると食らいたくはないなあ、けど相手もそれは分かってるはず。


「さっさと決める‼︎」


 おそらくだけど今の私の能力は魔法に光の上位属性の聖属性を追加する、使い方は自然にわかる。


 さっきまでと同じく複数の魔法を並列展開し撃つ。

 しかしさっきまでとは威力の桁が違う、さっきのものを豪雨と表現したなら今のは聖光の濁流が敵を飲み込まんと猛進する。

 それを5対の翼を翻しかわし魔法で迎撃し、剣で逸らす。

 ありとあらゆる手を持ってして光線発射までの時間を稼ごうとする。


 翼を狙う弾幕を避け、その影から迫る爆風を打ち消し背後から撃ち抜こうとする槍を剣でそらし天井に着地、そこを狙った弾丸ですら回避された。


 少しまずいかな、でも次で確実に仕留める。


 地面に着地した瞬間に地中から槍が飛び出し、再び空中へ飛び立ったところを聖炎の雨が穿つ。3対目の翼を輝かせ加速、身体能力を強化したのだろう。それにより聖炎雨の範囲から脱出。そこへ聖水の波が押し寄せるも同じく回避そしてその先にある壁へと着地……までは読んでた!

 そして触れられたことにより設置罠起動、《聖紅炎《ホーリープロミネンス》》。

 そして、それは眩く静かに対象を消し去ったもう影すらも見えない。


……終わっ、た?やっと、これで帰れる。


「勝った、やったぁ。ねぇ涼太終わったよ。大丈『ドゴッ』」


「はぁ、はぁ……芸がないと私が勝ってしまうと最初に言ったはずですよ」


 あれ、目が回る、吐き気も、頭が痛い、殴られたんだろうか。

 目の前には身体をボロボロにして、たたずむさっき殺ったはずの敵がいた。


「さすがに貴方のように身体を硬化させることは叶いませんでしたが吹き飛んで逃げる事は出来ました。」


「これで終わりです《選定の光(ジャッジメント)》」


は、ははは、ダメ……だったんだ。


 その声と共に光の粒子が集まり完成した光玉から極太のレーザーが照射される。

 そして私は身体から何かが抜け落ちる感覚と共に死んだ。







 ごめんね……涼太。

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