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氷騎士王

〜90階層・隠し部屋〜

 このダンジョンの石造りの外周、その一箇所を押すと隠し扉は開いた。


 そこに待っていたのは今までの氷騎士の鎧より造形が緻密で繊細だった。

 『アイス・ナイト・キング』さしづめ上位種というところだろう。


「こいつは援護を頼む」


 勝てるか分からない以上は特訓とはいえ無理は出来ない。


「分かった、どうせするつもりだったけど」


「《エンチャントフレイム》」


 いつも通り俺は相手へと走り込む。

 隠し部屋の全容は4方が約20mの室内、敵の居る中心部に俺が到着するのに数秒、撃ち込まれた魔法は炎の槍が一発のみ。

 振るわれる右手の氷の片手剣を流し、勢いをそのままぶつけるも関節部から外され鎧を傷付けることに終わる。

 そして氷騎士王は振り絞った槍を正確に心臓目掛けて突いてきた。



……槍⁉︎



 咄嗟に武器の変化に気付き、いや気付かされ身体を逸らすの槍はすでに放たれており腕を掠める。

 瞬間的に左手に槍が表れた、魔物は最初に何処かに槍を隠してたのだろう、だが所詮は一発芸だな。

 俺は先読みを使用して再度突っ込む、最初から分かってたなら何も問題は無い。

 と思っていたのも束の間、俺が、『先読み』のスキルで知った未来は複数あった。

 正直言ってこれだけならば今まで何度かあった、相手がこちらの動きに対応して動こうと考えるとその分未来が見える。

 問題は見えた攻撃の種類だ。その数総勢8種類。

 片手剣、両手剣、細剣、短剣、槍、鎌、斧、鎚である。

 先読みを信じるなら相手は最低8種類の武器が使用可能となる、しかもそこそこの練度で。

 その先を見た俺は咄嗟に後ろに飛んだ。

 しかしそこに追撃が放たれる。それは氷の矢だった。


「《フレイムスナイプ》」


 そこに楓の援護射撃が入り相殺、後ろへ下がる時間が出来た。

 さっきの武器と合わせて弓の9種をその切り替えすら見せず扱い切っている。

 ただ今の戦闘で拾える情報もあった。

 だがどのタイミングでどの武器を持っていようと最初の一撃に使われた右手の片手剣だけは無くならなかった 。

 弓の時ですら鞘に収めただけで消えなかった。

 恐らくあれが主武器なんだろうがいまいち謎がわからない。


「こいつは少しキツイな、武器は消すか」


 このままいっても疲れるのはこっちが先だろうか、相手に体力が有るかすら分からない以上長期戦はやめておきたい。


 俺は再び氷騎士の間合いに入り先読みを使って打ち合いを開始する。

 1合ごとに複数現れる未来の中から安全そうなものを選び反撃のタイミングを伺う。

 しかし打ち合う数が増えるにつれ少しずつ傷が全身に出来ていく。

 そして無限のように感じる時の中でやっと氷騎士が隙を見せた。

 俺はそこに咄嗟に飛び込み炎の斬撃をお見舞いする。

 しかし相手も武器に取り回しの効く短剣を持ち斬りつけてくる。


「《分解》」


 しかしその武器は勿論消滅させ、自分の出せる限りの一撃を叩き込んだ。

 一部の鎧にヒビが入り、敵はよろめく。

 今までも氷製の武器を消す事はできたが、次の一撃が防げない故に不可能だった。

 だが、その隙を突き拮抗状態から抜け出した以上は有利だろう。


「《フレイムランス》」


 追撃が放たれ俺もそれに続きこのまま勝利を決めに行く。

 フレイムランスは直撃、俺の斬撃への反応も遅れ剣筋は先読みで見ても一つ。


「《分解》」


 最後の抵抗にと突き出された片手剣を分解しようとすると


「–––––‼︎」


 氷騎士の叫びを上げ消滅しかけた剣が復活する。

 生成系統の魔法で武器を補ったか、だが無駄だ剣筋が読めている以上回避が可能。

 じゃあな、俺達の勝ちだ。

 最後は氷騎士の、いや、氷騎士王の首関節部を刎ねる。


「近接戦において学ぶことが1番多かった敵だったな」


 がらがらと崩れていく氷の鎧をよそに俺は何気なくそう呟いた。


「そうなの?」


 楓が少し首を傾げながら戦闘を終えた俺に回復の魔法をかける。


「あぁ、メインで片手剣を使いつつ他の武器を上手く使ってた。トリックは分からなかったが俺もアイテム袋からうまく武器を取り出せればあんな事も出来るだろ。」


「うーん、トリックってさもしかしたらあそこのドロップ品になにかあるんじゃない?」


 楓の指差す先に一つの手甲があった。


『氷騎士王の手甲』

この手甲にあらかじめ複合しておいた武器を任意で装備した手に出す。


「成る程なぁ、やってたのは武器の入れ替えじゃなくて出し入れの方が正しいのか。」


 確かに出たり消えたりしてたのは左手だけだったもんなぁ。


「これは問答無用で涼太のものだね、これは私は絶対使わないし。」


 というわけで手甲を受け取ってとりあえずは氷騎士と同じく左手に装備した。

 視線を遮ない軽い盾だと思うとそれだけでも便利だしな。


 そしてここに来たメインの理由の宝箱の中身は


『氷騎士団の聖剣』

 氷騎士の王が使うことを許される聖剣、この剣を持つものは氷魔法を習熟する。


 最後の雄叫びによる剣の修復は氷魔法を使ってたんだな。

 習得じゃなくて習熟ってのもやばいよな。

 だがそれなら何故最後まで使わなかったんだ?







あっ、もし近接戦に全振してたなら魔法面が……。

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