一方的な侵攻
〜75階層・階段設置部屋〜
『マーダーウェポンコア』
武器と接続する事により武器の定型を消失させる。
えーっと、要するに変形するってことか。
接続ってどうするんだろうか。
「おっ!吸収された」
今回のボス(?)ドロップは俺に渡された。
なんでも武器の性質が変わらないなら杖の形を変える必要は無いそうだ。
それから俺は何度か実験を繰り返した。
その際に、分解で接続状態から外せるか、その他変形にかかる時間を調べた。
結果から言うと分解は出来る。
ただもう一つの変形は戦闘中はキツそうだな。
割と構造をしっかり考える必要がある、ただ鈍器なら出来そうかな。
「楓ぇ、やっと調べ終わったぞ」
「そうなんだ、じゃあ行こうか」
2体目のボス格を倒して75階層、100階層までならここからがラストスパートになるだろう。
本来はじっくりと時間をかけていきたい所だろう。
しかし沼地、灼熱地帯と人間にはキツい環境が用意されている。
正直言ってこの環境が続くのなら一般人なら限界が来るだろう。
俺は炎のエンチャントで体制を付けられるが他人には不可能、服に付けようものなら着た人間が焼けるだろう。
まあエンチャントの初級をさらっと楓がマスターして環境変化は余裕なわけだが
「ここから先はいつ休憩出来るかわからないぞ、肉体もそうだが精神的な面が特に」
「涼太がコアで遊んでる間に十分休ませてもらったから大丈夫だよ」
いや、遊んでたわけじゃあ。
確かに変形とか合体とか全男子の憧れだがきちんと実験だから……うん。
「な、なら大丈夫……かな」
「じゃあ行こうか、少し武器を慣らしながら行こうね」
慣らしながらか、使い過ぎてもう俺のスキルかってくらい慣れたんだけどな、言えないけど。
〜80階層〜
周囲には熱を持った霧が立ち込み豪雨が降り注ぐ。
そして霧の奥に岩石の巨人が身体からゴリゴリと破壊の音を奏でながら迫る。
環境が変わるのは81階から、なら何故こんな地獄が広がっているか、それはこの階層の敵達である『マグマゴーレム』にある。
彼らは己が魔石を溶岩の中に石と共に入れ、身体の中を移動する。
水は身体に触れると蒸発し、ほかの魔法はマグマを飛び散らせ魔石だけが体内を移動して躱す。
そんな敵の倒す方法を色々と模索した結果、雨で持続的に熱を奪えば固まるのではないか。
と言う結果に終わり、以前沼地での氷原を作る局地的環境変化を使い雨を降らせたわけだ。
––––ガキッ、ゴギ、バゴッ、ガラ
急に固体となった己の肉体を制御できず身体をかけさせていくゴーレム達。
中には身体を動かしたせいで体内で魔石が砕け、死んでいくゴーレムもいる。
「この光景って敵側からしたら阿鼻叫喚って奴なんだろうな。」
「ははは、いや、その、なんで言うか、ここまでなるとは思ってませんでした。みたいな……」
「とりあえず始末して回るか」
そこからの掃討は早かった。
確かに動きはするが剣で切ってもすり抜けるような感触だったゴーレムが己の身体を削りながらですら鈍間な動きしか出来ていない。
途中から武器の形状を金棒に変化させ、そこからは作業となんら変わらなかった。
「じゃあ……次に行こうか」
楓は少しテンションを低めに声を上げた。
きっと彼女はマグマゴーレム界隈で悪魔として語り継がれるんだろうなあ。
〜85階層〜
81階層から再び環境が変わり次は氷結地帯。
エンチャントを自らに施し環境に適応する。
氷を付けて耐性を付けても炎を付けて周辺温度を上げようと適応出来るから意外に快適だ。
そして85階層の敵『スノウ・フェアリー』まあ、有り体に言えば雪女だ。
彼女ら……でいいのか?は背筋の凍るような声を響かせ氷魔法を打ち放つ。
「《ヴゥアァァァ》‼︎」
彼女は複数の氷柱を背後に用意し、連射をしてくる。
ただ
「《分解》」
近づいてくる全弾を魔法の氷から魔力へと分解させる。光景的には霧散の方が適切なのだろうか。
俺相手に魔導師は勝ち目薄いだろ。
楓は楓で詠唱いらず、魔力無限だし魔物が同じ土俵で勝てるわけもなかった。
そんな俺達の前に結局ここはただ都合の良いレベル上げ場所だった。
〜90階層〜
迫り来る氷の刺突がずらした身体の目の前を通り過ぎる。
俺が今戦って居る『アイス・ナイト』は武器によって複数の種類が同階層に存在するタイプの敵だ。
本体は氷の甲冑のみで中身は無くリビングアーマーに近いのだろうか。
過ぎ去った槍による刺突が若干引き戻されたと思うと刃先が俺の身体をとらえる様に振られる。
手の動きからそれを感じとった俺は剣で受けエンチャントの施された空いてる方の手で殴り飛ばす。
とはいえ氷の甲冑の防御力は高くヒビすら入らない。
そこから再び中距離戦となり不利な戦いを強いられる。
もちろんそれには限界が来るもので先読みを使うと複数回の刺突の内どうしても避けれないものが出てきた。
チッ、どうしようもないか。
「《分解》」
そう呟くと同時に心臓にあと数cmと迫った相手の槍が消えゆく。
俺のスキルの《分解》は様々なものを分解する、その過程や方法を吹き飛ばして。
結果氷が水となる過程を吹き飛ばして水素と酸素に霧散したわけだ。
「やっぱりここまで来るとチートスキル無しの純剣術なら劣るなぁ」
いつかの階層と同様に俺はこの階層で訓練に励んでいた。
するとだ、戦闘面での気付き以外にもわかるところがあった。
『マーダーウェポンコア』により作り出された武器はその重さは変わらず大きさによって硬さが変わることなどだ。
どうやら同じ武器の性能を変えずに延ばしたり圧縮したりしているみたいだな。
この発見より俺の武器を今までの片手剣から大剣に変え、サイズだけ片手剣にしている。
こうすると重さによって火力が上がったり武器の変形の幅が広がった。
「ねえ、何か隠し部屋あったよ」
ここで滞在しながらゆっくりと探索をしていたらしい楓から教えられたことに俺は割と驚いた。
「マジで‼︎そんなこと今までなかっただろ?」
ここに来て新しい危険は出来る限り避けたいと思う。
「別にスルーすればいんじゃないか?」
「それがさ、宝箱もそこにあるみたいでね」
そうか宝箱か、正直あそこから出るアイテムに何度救われたことか。
リスクは追いたくないがさらなる危険を考えると何が正解だろう。
「とりあえず行ってみよう、危なそうなら逃げれば良いしね。」
なら楓の案に乗ることにしようかね。ただ、全力で逃げる準備だけは整えておくか。




