盾斧の石像
前回の奴は確かドミニオン・トレイターとか言う天使だった。
全9階級の中で上から4番目の天使ドミニオン。
あいつの上位者が出るのか、それとも悪魔かあるいは神か。
「何が来るか分からないがとりあえず扉の外から攻撃してくれ」
「あれまたやるのね、前の魔物とか悲惨だったよ」
「知らんな、最後の自爆でチャラだろ」
「そこまで……まあそりゃそうか、今度こそ警戒しなよ」
緊張を隠すように会話を交えながら扉を開ける。
「丸?」
前回と同じく広い正四角形の部屋の中には石のような材質で出来た円形の何かが鎮座している。
「とりあえず何か撃ってみてくれ」
「はい、そういうところだよ、まずは鑑定盤で調べる」
「すみませんね、じゃあ」
『エンシェント・シールド・マーダー』
100年以上前に失われた魔導兵器マーダー。
戦闘に特化したゴーレムであり片腕に円形の縁が刃となった盾が装備されている。
巨大な円形の盾を構えると身体もより一層硬くなる。
前回のボスとは何も接点は無いんだな。
「ゴーレムらしいな、おそらくあれの奥に身体があるんだろうな」
「ここからの魔法じゃ効きそうにないし補助魔法で強化してから入ろうか」
「そうだな、ゴーレムかとりあえず俺も…《エンチャントウォーター》」
その後いくつかの魔法がかけられた、ステータスが上がった感覚がある。
「じゃあ行こうか」
俺は疾走を開始し、楓は詠唱を開始する。
詠唱は破棄出来るがそれなりに脳が疲れるらしいな。
「《ウォーターブレイク》」
水球が頭上を通り過ぎ、ゴーレムの頭上で急速落下し炸裂する。
〇〇ボムとかいう攻撃魔法の上位互換らしい。
しかし、そのタイミングで魔物は盾を上部に掲げて防ぐ。
ボスにしては思考が疎かだな、ゴーレム系統だから単純なのか。
近づいてみるとそれは意外と大きく2.5メートル程、岩のような図体を横なぎに剣を払うと腰部分を狙うことになった。
––––ガキン
は?
硬っ⁉︎おかしいだろゴーレム系統の弱点って水と爆発系だろ。
その攻撃により傷すらつけられなかったことに動揺した俺は
「ごはっっ」
水の炸裂弾から身を守りきった巨体から繰り出される蹴りに気がつかなかった。
吹っ飛ばされながら後退し即座に体制を整える。
「大丈夫⁉︎完全に当たってたじゃん」
回復魔法を詠唱破棄し発動し回復させられる。
「あぁ、いま大丈夫になった。なあ、あいつの弱点って」
「わからない、調べたいんだけどあいつを私から逆方向に向かせられる?」
「注意を引くくらいなら可能だと思う」
「ならお願い、なんとかして調べる」
作戦が立てられそれに乗っかる。
俺はゴーレム目掛けて走り込む。
残りの距離2mになるとそこは相手の間合い。
唸りを上げ円形盾のが振り下ろされ戦斧のように迫り来る。
いくら身を隠すよう縮こまってたとしてもその2mを超える巨体を隠せる盾。
俺はその盾に突っ込み先読みで攻撃の先まで読む。
盾での一撃を回避し、もう片腕で振られた拳すら回避。
十分俺に視線を惹きつけて俺は思いっきりスライディング、股下を抜ける。
しかし、これに驚異的なスピードで反応し盾斧のを水平に薙ぐ。
「チッ、ゴーレムの癖して速すぎるだろ」
それを俺は剣で受けつつ後ろに飛ぶ。
しかしそれで威力を殺し切れるわけもなく2、3m程飛び転倒した。
だが、俺の仕事は完了。
股を抜けた俺を追って後ろを向いたゴーレムを俺と楓で挟む形になった。
––––ガガガガ‼︎
計4か所、水以外の主だった属性、炎、風、電気、光の槍がゴーレムの四肢を削る。
「風属性のところが1番ダメージが大きいよ!」
俺からは影になって見えないことを見越し楓から報告がなされる。
「《エンチャントウィンド》」
即座に立ち上がりエンチャント、2mの位置から懐に飛び込む。
「すまんな、流石に全力じゃあゴーレムにスピード負けなんかしないんだわ。」
すれ違い様に3連撃を加え、反転し剣を構える。
ボロボロと風化し身体が崩れ去る。
ブン、と振り回される盾斧を屈んで回避、両足を切りつけさらに屈んだ状態から起き上がり腕に一撃。
流石にたまらなかったのかゴーレムは身体を崩しながら飛び去る。
……
飛び去る⁉︎
飛び去ったゴーレムは随分とスリムは身体をしていた。
今まで腕に装備していた盾斧からは柄が現れておりそれは手に収まっている。
おっと鑑定盤、鑑定盤っと
《マーダー・スラッシャー》
エンシェント・シールド・マーダーの純戦闘体制、守りを捨て攻撃とスピードに全てを振り切った。
なるほどなあ、これが第2形態って奴ですか。
「楓、第2形態らしい、攻撃、速度特化」
得た情報を提供し、奴のすっかり変わった武器を見る。
大きさは柄を合わせて2.5mほど、元は盾だった所は形を変えて完全に斧になっている。
柄にサイズを使ったのか、刃のサイズが減っている、それでも巨大だが。
あれはあいつの能力なのか、それとも武器か、戦闘中には変わるのだろうか。
しかしそんな思考も続けられず武器の変形が済み突撃してくる。
先読みすると計5閃、先読みで分かる短時間で繰り出される攻撃の数じゃない。
先程までは2回の攻撃が増え単純計算で1.5倍。
ただ攻撃に身体も武器も特化された今ではそんな単純ではないだろう。
その全てを流しかわす。
楓に強化された肉体で耐えるのが限界、何か手を考えなければ。
おそらく当たれば一発だろう、お互いにどう当てるか。
行われてるのは近距離の高速戦、楓からの援護は……いや、あった。
しかしどうやってこいつを射線に入れるかな。
ギャリン!と音を立て互いの武器が弾かれる。
流すのを、少しミスったな。
あっ、あれすれば良いじゃん。
「涼太‼︎」
その声に視線を瞬間的に送りすぐゴーレムと向き合う。
しかしゴーレムも斧をした方向に弾かれた状態にいた。
それでも追撃をやめるつもりがないのだろう、次に放たれたのは拳だった。
ゴーレムの身体はそれだけで一種の鈍器である、有効な手だ。
少なくとも俺以外にはな、俺はその手首を掴み、投げ飛ばす。
装甲を外したのは失敗だったな、それが有れば難しかった。
そして飛ばされたゴーレムは、
「《ウィンドスナイプ》」
風の弾丸に頭を貫通され、あるかもわからない奥の手を使わず倒された。
「お前よく一瞬の視線だけ見て魔法の準備してたな」
「そりゃあよく見てますから、少なくとも助けを求めてるようには見えなかったよ。」
「そんなに分かりやすいのかよ、俺って」
以外とポーカーフェイスが得意だと思ってたんだけどな。
いや意図を読んでくれるなら良いんだけどな。
「あー、まあね」
「そうですか、じゃああれ拾って次行こうぜ」
そこにはゴーレムと同じ材質の丸い玉が落ちていた。




