灰羽の天使
試練のダンジョン〜50階層〜
俺たちは今50階層にある巨大な扉の前で絨毯を敷いて飯を食っている、途中で魔物が毛皮を落としてくれた。
「なあ楓どうする、このまま挑戦しちまうか?」
「う〜ん、それでもいいんだけど改めて道具の確認しとかないと。憶えてない道具とかもあるかもだし。」
「大丈夫だと思うけどな、必須のものは大体憶えてるし。」
「ダメだよ、そうやって油断してちゃ。ここは50階層、何があるかわからないんだから。」
「そこまで言うならとりあえずしとくか、別に死にたいわけでもないしな。」
「じゃあ装備品の確認からしとこうか。」
装備品(俺)
武器 魔剣クラン
防具 黒鎧ナフテル
旋風の籠手
疾駆のブーツ
装備品(楓)
武器 聖杖セクレト
防具 マジックローブ
ギフトリング
マジックブーツ
俺の装備品のクランは『切れ味増加』のスキルがついていてナフテルの方は『滑斬』のスキルで斬撃を受け流しやすくなってる、あと二つはスピード増加だな。なんせ前衛に出て基本回避でやってるから装備はこうなる。
楓のセクレト、マジックローブ、ギフトリングは魔法威力の増強だな、後衛で魔法をブッパさせてるからな、あとセクレトには他に魔力を流すと元から先鋭な部分が魔力で補完されて槍としても使える。マジックブーツはこれまた少し変わった装備で壁や床にひっつく、マジックテープみたいに。これを初めて鑑定盤で知った時盛大に鑑定盤に突っ込んだのはいい思い出だ。
「まあ、いつも使ってるから知ってるものばっかりだな。」
「これくらいは憶えておかないと戦えないでしょ、問題は道具だよ。」
「とりあえず必要な物だけでいいだろ、魔物の腰巻だとか頭蓋骨だとか出してもだれも得をせん。」
道具
上位ポーション×12
中位ポーション×21
下位ポーション×65
上位マナポーション×8
中位マナポーション×13
下位マナポーション×21
増強剤×1
酸化液×2
砥液×7
油瓶×28
アイテム袋×1
ポーションポーチ×4
戦闘で使う物はこんなものか、油は37階層の植物から取れたから火炎瓶とか料理とかではありがたいよな、砥液もふりかけるだけで武器を砥げるから随分とお世話になった。ポーションポーチも瓶なら量が入るから割と上層で手に入れた割には重宝してる、アイテム袋の方がいいけど。
「あれ、増強剤って何だったっけ?」
「ほら、やっぱり憶えてないのがあったでしょう、それは飲むと一時的に力を上昇させる薬でしょ、31階層くらいで二つ拾った時に一個使って翌日の筋肉痛でもう二度と使わないとか言ってた。」
「ああ、そんな事あったな。筋肉痛が辛すぎて記憶から消してたわ、使いたくなかったし。」
「何があるか分からないんだからいざとなったら使ってよ、ほんともう忘れっぽいんだから。」
「分かってるよ、何度も言うが俺も死にたいわけじゃない。じゃあ行くか、50階層の扉の先に。」
「そうしよっか」
俺たちは広げた物をまとめてアイテム袋へ入れポーションポーチにアイテムを分けて入れる、増強剤は俺が持つらしい……ハァ。
ギギギギギギィ
そう音を立てながら扉が開く、中には一人、いや一匹の魔物が立たずんでいた。
ドミニオン・トレイター
天使の堕天した姿を彷彿とさせる魔物、光と闇の両方の魔法を使う。
「まあまあやばそうな敵だな。」
体長は3メートル程、白い服に顔が隠れる程に深く被り物をし、灰色の羽をはやした天使だった。
一向に動く気配のないその天使は恐らく室内に入ると攻撃してくるのだろう。
「なあ楓、闇属性ってどんな魔法だ?俺は炎、雷、水、土、風、光、無しか知らんぞ。」
「授業ではさらっと流れたからね、基本魔物や魔族しか使えない魔法でデバフよりの物が多いみたいだよ。」
「とりあえず俺は突っ込む、いつも通り援護頼むわ。」
「それでもいいけど大丈夫?魔法どうにか出来るの?」
「あれで捌けるんじゃないか?無理だったらエンチャントで相殺する。」
「ああ、そういえばあったね。君の魔法特攻ぶりはやばいもんね。」
「あ、その前にアイツここから狙ってみないか?案外効くかも。」
「頼むよ、どうせ魔力も尽きないんだしでかいの一発。」
「仕方ないなあ、ちょっと待って。」
ここで撃ってくれる流石は楓さん、魔力∞はやることが違いますな。
そして組み上げた魔法は上位魔法をオリジナルでさらに上位化させた魔法。
「《プロミネンス》」
紅の炎が魔物のいた広間を焼き尽くす、だがしかし中の魔物はまるで何もなかったかのように佇んでいた。
「やっぱり無理だよ、部屋の外からだと威力減衰がかかってるみたい。見た目以上に熱がこない。」
「ま、そう上手くもいかないか。倒せれば楽だったんだけどな。」
まあ、仕方ないよな。てかこれで倒れられても拍子抜けだけど。
「じゃあ、行きますか。」
そう言うと俺は広間へと突っ込んだ。
「ルオオオォォォォォオ‼︎‼︎」
あれ、なんか怒ってね?
「おい、さっきの効いてたみたいだぞ、戻れ戻れ‼︎」
「ルッルオ⁉︎ルオォオ‼︎」
俺と楓が扉へ戻ろうとすると天使は必死に叫ぶ、するとさっきまで開いていた扉が閉まってしまった。
「チッ仕方ない、真面目に戦うか。」
「初めからそうしよう、扉を閉める時なんか少し哀れだったよ。」
「それじゃ、行きますかね。」
恐らく上がっているレベルと装備によって加速されたスピードで相手へと駆ける。
すると相手は4つの魔法陣を同時に展開し光槍と闇槍を二発ずつ放ってくる。
槍と俺の距離が3メートル程になると
「分解」
その槍は消滅した。
魔法なんて所詮は魔力の塊、分解出来ないわけじゃない。
「《フレイムランス》《ウィンドボム》」
魔法ならうちのキャスターさんも負けてはいない、炎の槍と破裂する暴風が天使を襲う。
「《エンチャントフレイム》」
剣に炎を纏わせ斬りつける。
「《ルアァウ》‼︎」
ただし流石と言うべきか叫ぶと同時に笏が現れ俺の斬撃を受け止める。そして同時に魔法陣を展開、今度は楓に向かって光槍を放つ。それを楓はきっちりと避け
「《ライトレーザー》」
高速で魔法を組み上げ羽を羽ばたかせ空中に逃げようとする天使に光線を放つ。俺は笏を手で掴み居場所を反転させる。
「ルアァゥゥ」
天使に直撃し悲痛な声を上げるがさらなる追撃、炎を纏った剣により灰色の羽を落とす。
切られた部分を押さえようとしながら天使は片手で自らの持つ笏を振り回して俺に距離を取らせる。
俺は楓のいる場所までとりあえず退避した。
「なあ楓、案外余裕そうじゃないか?」
「いっつもそんなこと言って、そんなこと言ってるといつか手痛いシッペ返しを食らうよ。」
そう話していると天使ら今まで水平に振り回していた笏を両手で掲げた。
「ルアァァ‼︎」
一際大きい声を上げるとまるでダンジョンが呼応するかのように音を立て
ズガアァァアン
と天使へと雷のような魔力を与え、その魔力によって天使を中心とした巨大な魔法陣が構築される。
莫大な魔力に押し潰されるように天使の羽の切り口からは血が吹き出し骨が折れる、そんな中で天使はこちらに向かってニヤッと笑いかけた気がした。
「おい、防御魔法展開してくれ‼︎」
「あの規模は今からじゃ間に合わない、あれを使うよ‼︎」
「なんでもいい、俺は防いでる間に分解出来るように解析を進める‼︎」
「最高硬度防御魔法 《アイギス》」
楓は自分の性格スキルを用いて自分の服へ罠として施した魔法陣に触れて魔法を発動する。
その魔法が発動し俺たちを覆った直後、室内は白い光に埋め尽くされた。
「ねえ、これっやばい、分解出来る?」
「規模がデカすぎる、もう少し時間稼いでくれ」
「10秒、それが限界。出来る?」
楓がそう問いかけてくる、全く
「誰に言ってんだ、出来る。……てかやらないと死ぬだろ」
「死なないよ、出来るんでしょ。」
その答えに返事を返さず魔法の解析に移る、この魔法の術式は確かに膨大だ。ただし威力を最大限出すためだけの技、王国の大規模かつ緻密な結界に、比べりゃ
「もう無理、崩壊まで3、2、1」
「崩壊、後はお願い」
結界が崩壊し、光の波動が轟音と暴風を連れて俺たちに迫る。
それに向かって俺は右腕で楓を抱き寄せもう片方のてを光の波動へと突き出し
「分解」
上位魔法を超える膨大な情報をひたすらに捌く、捌く、捌く。
一体何秒こうしていただろう、10秒か20秒か、背中にしがみついているものがあることを常に確認しながら全てを捌ききる。
光が開けた、巨大な光の波動が去り周囲が見えるようになる。
室内は奴と俺たちがいた箇所を除いて全て崩壊仕掛けていた。
それもすぐにダンジョンが修復してしまい、部屋には俺達と奴のいた場所に佇む一本の錫杖だけだった。
「あれが……あいつのドロップアイテムか?」
「多分、そうなんだろうね、あの状態でまだ魔物だとは思えないし。」
そう言いながら楓は鑑定盤を向ける。
主天使の錫杖
主天使が使っていた笏が変化したもの、主天使の力を使い全ての魔法をブーストし詠唱を破棄する。
「あの天使が魔法陣から魔法を撃ってたのは主天使って種族の影響らしいね、あとこれ貰っていいかな?」
「別に良いぞ、俺は魔法を使う事とかエンチャントしかないしな。」
「ありがとう。えーっと、あ!あそこに扉があるよ、行ってみよう。」
「いや、ちょっと休んで行こうぜ。」
「それも良いけど復活するかもよ、入り口に広間があったし出口の扉の先にもあると思うよ。」
「ならそうするか、このまま外へ出られれば万々歳だしな。」
扉の先はまだダンジョンの中でした、今のが中ボスだったのだろうか、マジで勘弁してほしい。
てかアイテム使わなかったな、ついでに増強剤も……ラッキー。
魔法は《》で挟む方針にしました。




