24話
「盗賊団、ですか?」
「ああ、それもかなりタチの悪い盗賊団どもでな」
ミツキが脳内で残念なことを思い浮かべながらも、なんとか冷静さを保って返答すると、モットーが忌々しいものを思い出したような苦い顔になる。
「〝堕落の音頭〟については私から説明しましょう」
そんなモットーに変わってエミリーが前に出てきて〝堕落の音頭〟の情報について説明を開始した。
曰く、窃盗、強盗、誘拐、殺人などなどなんでもやる集団である。
曰く、非常に強いリーダーと、知略戦略を練るのがうまい参謀がいて、今まで討伐に乗り込んだ冒険者たちはすべて返り討ちにあっている。
曰く、多数の奴隷を抱えていて、その奴隷たちがかなり強く、またその奴隷たちのほとんどが誘拐されて強制的に奴隷にさせられた人たちである。
曰く、現在はこの街から北にある山脈のどこかに拠点を持っている。
「──とまあこのような、典型的な外道である盗賊団ですね。そのため、この盗賊団の団員たちはすべて殺してもいいというのがギルドでの総意ですね。リーダーや幹部たちの首さえ持ってきてくれれば」
「なるほど、そのリーダーや幹部たちの情報というのは?」
「その点についてはリーダーの情報だけしかありませんが、私ならそのあたりを判断できる能力がありますので、皆殺しでかまいません」
「ふむ、了解しました」
エミリーはかなり辛辣な発言をしているが、ミツキは特に気にせずにうなずく。
その後リーダーの特徴がモヒカンであることや、武器が盗賊団のテンプレたる斧であったりだとかいろいろと情報を獲得して依頼内容を確認すると、執務室を出る。
それから、執務室があった冒険者ギルドの二階から降りて、ギルドを出る。
「ふふっ、まさかいきなり指名依頼を受けることになるなんてね。期待以上だわ」
「そう言えば依頼って種類があるのか?」
なんだか楽しそうなアイリスに対して気になっていたことを質問する。
「あら、分からなかったのならさっき聞けばよかったのに」
「いや、そうなんだけどさ。なんかエミリーさんちょっと怖かったから……」
「ふぅん、あの〝柔剛〟相手にもどんどん攻め込んでいたあなたにも怖いものがあるのね」
「まあね。それよりも依頼の種類は?」
「ふふっ、そうだったわね。依頼の種類は四つよ。常時依頼、通常依頼、指名依頼、緊急依頼ね」
ミツキが素直にエミリーが怖いということを認めたことについて楽しそうにしながらも説明を開始した。
「常時依頼はよく出てくる魔物の討伐や薬草の採集みたいに常に需要がある依頼のことで、依頼を受付で受ける必要がないものね。新人冒険者は基本的にこれをやってお金を稼いでいるわ」
「ふむふむ」
「次に通常依頼。これは掲示板で依頼の紙を受付に持っていくことで受けられる普通の依頼ね」
「なるほど」
「三つ目の指名依頼は特定の冒険者に対して指名する形でする依頼。これは普通の依頼よりも高い報酬をもらえることもあるから結構お得よ。まあ、指名依頼を受けるにはそれなりに有名にならないといけないけど」
「ふむ、今回はギルドマスターからの指名依頼の形になっているのか」
「そうね。それから最後の緊急依頼だけど、これは例えばドラゴンが街にやってきたとかっていうときには冒険者が街を守るために駆り出されるわね。拒否権はないわ」
「ふ~ん、そんな事態にならないことを願うしかないな」
「まあ、実際にドラゴンが攻めてきたら普通なら逃げるように指示を出すし、いざとなったらモットーが動くからこの町は滅多なことでは落とせないと思うけどね」
「そっか、よくわかったよ。ありがとう」
ミツキは素直にアイリスに感謝する。
「どういたしまして」とクスクス笑いながら言ったアイリスは、ふと思い出したかのように、
「そういえばミツキは今回の指名依頼はどうやってクリアするの? 盗賊団の場所は現状分かっていないのよ?」
「ああ、そうなんだよね」
今回の依頼は最終的な目標は盗賊団〝堕落の音頭〟を壊滅させることだが、まず盗賊団のアジトを見つける段階で報酬が入り、盗賊団を壊滅させることでさらに報酬が入るという二段階の依頼になっていた。
これはなかなか難易度が高く、この依頼を受けるだけで冒険者ランクを〝ランク2〟にするという話が泣ければ割に合わないと言って多くの冒険者たちなら断っていただろう。
「一応考えはあるけれど、正直いきなり〝ランク2〟に上げるなんて言われたから俺も驚いていたんだよね。いいのかな、そんなにあっさりと上げても」
「普通は良くないと思うけれど、あなたの場合はモットーを試合形式とはいえ打ち破ったからね。それだけの実力者なら早々にランクを上げておくのが得策だと思ったのだと思うわ」
「なるほど、これなら目立てるかな?」
結局のところ、ミツキがこの依頼を受けたのは目立ちたいからということだった。
割に合わなくとも、盗賊団を単身壊滅させればそれだけで十分な偉業だろうとミツキは判断したわけだ。
(まあいざとなったら〝調和〟すればいいしね)
誰にも認識されないというのは目立ちたいミツキとしては嬉しくない部分も多々あるが、まだまだこの世界での戦闘に慣れていない状態だし、圧倒的なチートができるようなスキルや兵器を持っていないのだから仕方ないとあきらめる。
「あ、そうだ。確かアイリスって薬なんかも作れるんだよね?」
「ええまあそうだけど、何かほしい薬でもあったの?」
「うん、俺が盗賊団を見つけるまでの間に──」
今はとにかくやれることをやるのだという気概で、ミツキは動き出すのだった。




