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デスゲームで134連勝した俺のところに、「助けてください」とわんこそば女が来た~彼女とそばを食べるまで~  作者: 芦名 雅


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第9話 その企画を通したい


 翌週の木曜日。ミナト遊戯企画の会議室で、花巻こはるは自分の企画書を開いた。故郷の福引から考えたゲームを、今日は会社に採用してもらう。玖城朔に中身は相談していない。あの人には、出来上がった規則を参加者として読んでもらう約束だった。


 会議室の椅子は9脚あった。出席するのは4人なので、5脚余る。花巻は扉に近い1脚を机へ寄せ、資料を置こうとして、窓側の画面を見た。そこからでは、自分の用意した表示が斜めになる。資料だけを持ち直し、画面の隣へ移った。


 座って説明するつもりだったが、最初は立っていたほうがよさそうだった。椅子は、6脚余ることになった。


「見積り、ここに置くぞ」


 技術担当の津村修平が入ってきた。花巻が企画部へ移る前からの先輩で、椅子の装置を試した時にも、玖城と話してもらった。今回も装置の仕組みと費用を相談している。作業着の袖はまくったままで、紙の端へ小さな部品番号を足していた。花巻は原案の横を空けた。数字の並ぶ紙が2枚。片方は、もう一方より最後の欄が大きい。


「こっちが、全部盛り込んだ場合ですか」


「そう。頼まれたものは、全部作れる。ただ、合計はここまでいく」


 津村は高いほうの紙を上へ置いた。花巻は合計ではなく、その上にある一行へ指を当てる。再抽選処理の追加、と書かれていた。


「この判定も、新しく作らないと駄目ですか。前の仕組みを使えればと思ったんですけど」


「結果を出して終わりなら、それでいい。今回は、出した結果をまた戻すだろ。ほかの処理とぶつからないか、表示もちゃんと戻るか。そこを確かめる手間が大きいんだ」


 花巻は頷いた。値段を間違えたわけではない。津村がどの作業を数えたのかも分かった。それでも、自分の紙からその行を消すのは、まだ早い気がした。


「でも、欲しくない物が当たって、もう一度引けるとなったら……迷うと思うんです。そこも面白そうで」


「なら、その面白いところを見せてくれ。削った場合の見積りも出してあるから、比べて決めよう」


 津村は安いほうの紙も隠さなかった。椅子へ座り、ペンを耳から外す。花巻は2枚を重ねず、並べたままにした。


 続いて、配信編集担当の久米真琴が端末と細いケーブルを抱えて入ってきた。首へ掛けたイヤホンの片側が胸元で揺れている。観客に見せる映像と、景品の持主を示す画面を作る人だ。今回の打合せでも、花巻が券の動きを説明するたび、誰の顔を映すのかを聞いてきた。


「映ります?」


「はい。入力は、こちらです」


 花巻が画面の下を示すと、久米はケーブルを挿し、端末へ目を落とした。暗かった画面に、参加者ごとの欄と仮の人名が出る。花巻は眼鏡を押し上げ、離れた位置から文字の大きさを確かめた。


「名前や細かい表示は、まだ仮です。動かしてみて、誰が何を持ってるか追えるかどうか、見てください」


「ありがとうございます。気になったところで、止めてもらってもいいですか」


「もちろん。今日は何度やり直しても、誰にも怒られませんから」


 久米が笑った。花巻も笑いかけたが、扉が開いたので、姿勢を戻した。


 最後に入ってきたのは、企画部長の牧瀬律子だった。この企画を採用するかどうかを決める上司だ。短い黒髪を耳の横へ収め、腕時計を見てから扉を閉める。牧瀬は紙を受け取ると、まず題名を見る。数字の多い仕様書でも、その順番だった。今日も表紙を読み、ペンを持ったが、まだ何も書かなかった。


「揃ってるね。花巻さん、どうぞ」


「はい」


 最初の紙を持ち上げた。装置の図面は、その下にある。説明用に、色の違う紙を机へ並べた。〈引く人・A〉と〈受け取る人・B〉。参加者2人が、違う役割を選ぶ場合の見本だった。


「福引です。ただ、引いた人と、景品をもらう人を、別にできるようにしました」


 牧瀬の前へ、2枚をずらして置いた。津村が、自分のほうへ来た券を指で止める。花巻は机の端に置いた紙の景品を、1つ取った。


「Aさんが抽選券を使って引きます。でも、出た景品はBさんがもらいます。引く前に、券へ受取人を登録できるんです。自分以外の人も指定できます」


「引く前に決めるのね」


「はい。当たりが出てから、やっぱり自分がもらいます、とは言えないんです」


 牧瀬が2つの名前を確かめた。花巻はAの紙を抽選箱の見本へ寄せ、景品の見本はBの紙の前へ置いた。引いた人の前には、何も残らない。


「当たると、こうなります」


 久米が画面を進めた。仮の参加者の1人が大きくなり、その横へ〈当選〉と出る。花巻は、机の2枚と画面を交互に見た。


「そこ、違います」


「当たりを引いた人を、大きく映します」


「その人、もらえません」


 久米の指が止まった。画面の中で、景品だけが別の参加者の欄へ入っている。大きく映った人は、何も持っていなかった。


「……喜んだ人は?」


「そちらが受取人です」


 花巻が別の四角を示すと、久米は表示の枠をそちらへ移した。今度は、引いた人の名前が小さくなる。


「今度は、引いた人が見えなくなりましたね」


「その人も残せますか。あとで、あの人が引いてくれたんだ、って話してもらえると思うので」


「2人とも残す、と」


 久米は端末へ2つの枠を置いた。津村が椅子を寄せ、画面を見上げる。牧瀬は紙へ何かを書き、そのペン先で画面の景品を指した。


「本人は喜ぶとも限らないでしょう。受取人にされたくなかった場合は?」


「そこは、相手に同意してもらわないと登録できません。知らないうちに受取人にされることはないです」


「じゃあ、もらうことには同意した。でも、欲しい景品が当たったとは限らない」


 紙の景品を持つ手が止まった。自分なら、当たりが出た時点で嬉しい。けれど、このゲームの参加者が全部同じ顔をするとは限らない。目の前の仮の参加者にも、まだ顔がなかった。


「……そうですね。喜んでいなくても、受け取った人は映してほしいです。その人に何が当たったかも、分かるように」


 久米は頷いた。欄の上へ〈受取人〉と書き、引いた人の欄へ〈抽選者〉と付ける。花巻は2つを読み直し、机の券をその並びへ合わせた。


「それなら、こっちの記録とも揃うな」


 津村が言った。


「最初に持ってた人と、実際に使った人を分ける仕組みはある。それを使えばいい」


 見積りの安いほうへ目をやった。その数字で作れるところまで、紙の上だけではなく見えてきた。すぐに高いほうをよけず、次の券を取る。


「それで、もう1つ入れたいものがあって。再抽選予約券です」


 牧瀬が顔を上げた。久米は、先ほどの表示を一度戻す。


「一度引いてから、そのままもらうか、引き直すかを選べたらと思ってます」


「これも、画面に入ってる?」


「入れてます。順番どおりに動かしてみますね」


 久米が端末を押した。最初に、抽選者の枠が光った。景品が受取人の欄へ入る。花巻はそこまでを頷いて見た。


 引き直しが始まると、受取人の欄に最初の当たりが残ったまま、新しい景品が入った。花巻は机の券を動かしかけた。


「そこは、確定前なので、まだ――」


 画面では、抽選者の枠が再び光っていた。花巻は、どこを直せばいいかを言うため、受取人の欄を指した。


 その人が、今、何を持っているか分からなかった。


「すみません。戻してもらえますか」


 久米が止めた。花巻は最初の当選まで戻してもらい、紙の景品を受取人の前へ置き直した。取り消した景品と、今持っている景品を分けて見せればいい。


 再び画面が動いた。花巻は紙の景品を手元へ戻し、別の景品を取った。牧瀬が、机の上を見ている。


「今の当たりは、どこへ行った?」


「箱へ戻ります。今、持っているのは、あとから出たほうです」


「画面では、同じ欄に2つ出てる」


「前の当たりも履歴に残しているので……今持っているほうを、太くすれば――」


 言いかけて、端末の画面へ目を落とした。同じ受取人に、古い結果と新しい結果。説明を足す場所を探している間にも、久米の指が次の操作を待っていた。


「見分けがつくようには直せます。ただ……」


 久米は、空いたところへ枠を1つ増やした。


「当たった人の顔を映したいところで、今はこっちです、って説明を入れることになりますね。顔と文字、両方を大きくするのは厳しいです」


 紙の景品を握り直した。やっと当たった人へ、別の人が何を言うか。それが見たかった。今の画面では、当たったことを喜ぶかどうかより先に、まだ当たりなのかを確かめなければならない。


 津村が、高いほうの見積りを彼女の前へ寄せた。


「その表示も、引き直すたびに正しく戻るか確認することになる。見積りの、こっちの作業だ」


 寄せられた見積りを読んだ。一度見た金額だった。二度目に大きくなったわけではない。


「……引き直しは、やめます」


 握っていた景品を机へ置き、再抽選予約券だけを自分のほうへ引いた。


「分かりやすくは、できると思います。でも、私が見てほしかったのは、当たったあとに誰が何を言うかで。ここで画面の読み方を説明していたら、そっちを見てもらえないです」


 津村が、2枚の見積りの位置を入れ替えた。久米は追加した枠を消す。牧瀬は、花巻が引いた券へ目を向けた。


「引き直しがなくても、ほかはそのまま遊べる?」


「はい。引き直すところだけなので、ほかには影響しません。規則からも外しておきます」


「分かった。そこは外しましょう」


 牧瀬が初めて、企画書の一行へ線を引いた。花巻は自分の紙にも同じ線を引く。題名が見えなくなるほど塗り潰しはしなかったが、今の案の束へ戻すことはやめた。


 久米が残った画面を再生した。抽選者の枠が光り、受取人の欄へ景品が入る。そこまでで止まった。花巻は、紙の景品から手を離した。机でも画面でも、同じ人が持っていた。


「このあと、譲れるんですね」


 久米が聞いた。花巻は別の紙を取った。今度は、帰還と書いた景品が2枚ある。それを、1人分の券の前へ並べた。


「はい。これが帰還景品です。最後に持っていれば、生きて帰れます。持っていない人は敗退して、首輪が作動します。ただ、交換できる時間なら、これも人に渡せるんです」


「2枚持っていたら?」


「自分が帰る分は、1枚で足ります。もう1枚は、まだ持っていない人へ渡せます」


 花巻は、帰還景品を2枚持っているAの紙から、1枚も持っていないBの紙へ視線を移した。余った景品をどうするか。そこを選んでもらいたかった。


 牧瀬がペンを机へ置いた。


「1人1枚まで、というのはどう? それなら、誰が帰れるか、画面を見ればすぐ分かる」


 さっき引いた線へ目を落とした。再抽選は外した。それを外した画面は、確かに見やすい。こちらも1枚までにすれば、もっと見やすくなる。


「2口目は、その人には要らないんでしょう?」


 牧瀬の声に、顔を上げた。


「自分だけが帰るなら、そうです。でも、まだ持っていない人は欲しいはずです」


 2枚目の帰還景品を、Bの紙の前へ置いた。Aには1枚残っている。まだ手を離さない。


「自分の1枚は残して、もう1枚をどうするか考えてほしいんです。1枚しか持てないと、それができなくなってしまうので」


「ただ助けるのを、待たせるだけにならない?」


「すぐ助けたいなら、それでもいいと思います。その人が選んで渡すなら」


 指を離した。AとBの前に、帰還景品が1枚ずつ残った。次に、Bへ渡した1枚をAの前へ戻す。今度は、ただで譲らない場合を見せる。


「でも、Aさんはまだ賞金も欲しいかもしれません。だったら、Bさんの抽選券と交換してもいい。Bさんも、帰還景品はなくても、抽選券なら持っているかもしれないので」


 別の紙を1枚置いた。帰還景品とは違う色だった。津村が、花巻の手の動きを見ている。久米は、まだ画面へ移さなかった。


「相手が、その値段では嫌だと言ったら?」


 牧瀬が聞いた。花巻は、2つの紙の間へ手を置く。


「それなら、断ってもいいです。Aさんも必ず売らなくちゃいけないわけではないし、Bさんは別の人に頼んでもいい」


「じゃあ、交渉がまとまらないまま、終わることもある」


「あります」


 花巻の声が、自分で思っていたより短くなった。牧瀬はその返事を待っていたように、企画書の終了条件へ指を置く。花巻も、同じ行を読んだ。


 帰還景品を持たない者は、敗退する。


「余っているのに、渡されない人がいるんですね」


 久米の言葉に、花巻は頷いた。


「助ける相手も、助けないことも、自分で選んでもらいたいんです。持っている人が決める前に、装置が誰かへ配ってしまうのは違うと思うので」


 津村が、耳へ戻しかけたペンを止めた。


「そこは、同意した記録を取ればいい。断ったのに、渡ったことになるような作りにはしないよ」


「お願いします。渡すところは、ちゃんと本人に決めてほしいです」


 帰還景品を2枚、同じ人の前へ戻した。余った1枚を、机の端へ片づけなかった。牧瀬へ向け、2枚とも見えるように並べ直す。


「ここは、残したいんです。余った1枚をどうするか、そこを考えてもらいたいので」


 牧瀬はすぐには丸を付けなかった。久米へ顔を向け、2枚あることを表示できるか聞く。久米は画面の欄へ、小さな数字を足した。


「枚数を出すだけなら、大丈夫です。渡った時に、帰れる人が1人増えたと分かるようにしたいですね。お金とは、別の欄にしましょう」


「はい。そこは分けてください。帰れるかどうかが、いちばん先に分かるように」


 花巻が答えると、津村が頷いた。牧瀬も紙へ視線を戻す。花巻は、膝の横へ下げていた手を机へ置いた。力が入っていたのか、帰還景品の角に爪の跡がついていた。


「分かった。譲渡は残しましょう。その代わり、いつまで変えられるかは、最初にはっきり伝えて。締め切ったのに、まだ動かせるように見える画面は困るから」


「はい。締め切ったら、もう変えられないと分かる表示にします」


「そこまで直したら、運営にも見てもらいましょう」


 自分の紙へ、締切と表示の修正を書き留めた。さっきの再抽選を戻すためではなく、残すほうを確かめてもらうための修正だった。


 机には、まだ説明していない紙があった。花巻はそれらを次の束へ揃え、3人へ順に見せた。久米が画面を戻し、津村が確認する項目を見積りへ足す。牧瀬は、運営が選べる部分と、参加者が選ぶ部分を1つずつ確かめた。


 景品を受け取る仕組みだけで、企画の全てが終わるわけではない。花巻の手帳には、もう1つの操作の確認と、その上限が残っていた。そこは説明用の画面を別にし、今日の修正で変わっていないことを3人と確かめた。


 玖城には、まだどの紙も見せていない。


 会議が終わる頃、窓の光が机の手前まで動いていた。牧瀬が紙を揃え、表紙へ戻る。花巻はペンを持ったまま、その手元を見た。


「この修正を条件に、採用します。表示の確認と、規則の登録はこれから。公開するものは、そこまで終わってからね」


 返事をしようとして、先に息を吸った。再抽選予約券へ引いた線が、表紙の端から見えている。帰還景品の譲渡には、残す、と自分で書いた。


「はい。ありがとうございます」


「忘れないうちに、直すところと日程を決めておきましょう。2人は、いつなら空いてる?」


 牧瀬が席を立つ。花巻は慌てて資料を追いかけず、自分の紙へ日付を入れた。津村が隣から、直した表示を見せてもらう日を指す。


「この日なら見られる。次の日は別の試験があるから、ここで一度合わせたいな」


「じゃあ、その前の日までに画面を送りますね」


 久米が答えた。花巻は2人の予定を並べて書き、規則の削除と締切の説明を、自分の欄へ入れる。全部の欄へ自分の名前を書くことも、玖城の名前を書くこともなかった。


「この見本、もう少し使ってもいいですか」


 花巻が仮の券を指すと、久米は画面の保存を終えて頷いた。


「ええ。表示を直したら送ります。映すのは、喜んだ人じゃなくて……」


「受け取った人、ですね」


「ええ。嬉しそうでなくても、そこを映します」


 花巻は笑った。景品を渡すところへ、本人の顔が戻ってきた。津村は紙の帰還景品を1枚持ち上げ、爪の跡を見てから花巻へ返す。


「これは、作り直したほうがいいな」


「……そんなに跡、ついてます?」


「次の説明でも使うんだろ。2枚とも、きれいなのにしとけ」


 差し出された紙を受け取り、撫でた。跡は消えなかった。新しく作ればいい。少なくとも、この1枚をなくして済ませることにはならなかった。


 自分の机へ戻ると、使わなくなった券を原案のファイルへ入れた。今の企画の束とは別にする。予算の高い見積りもそちらへ移し、残った紙を順番どおりに揃えた。


 机の端に、スマートフォンが置いてある。花巻は画面を開き、玖城の名前を出した。昼の会議が終わってから、まだ一度も連絡していない。書類の写真を撮ろうとはしなかった。


 電話をかけると、数回鳴ってから繋がった。


「通りました!」


「そうか」


 もう一度そう言いそうになった。口を閉じ、代わりに机の紙を見る。どこを外して、どこを残したかを、一番聞いてもらいたい人へ話せない。話さないことも、ここまでの約束だった。


「今日は、それだけです」


「分かった」


 向こうで、何かを置く音がした。玖城が何をしていたのかは見えない。彼が続きを聞いてくるのを待たずに言い足した。


「今度は、5分もかかりませんでした」


 短く、笑う声が聞こえた。


「それでいい。待ってる」


 花巻も笑った。何が採用されたかを教えなくても、通ったことは、もう伝わっていた。電話を切ってから、画面に出た通話時間を見た。5分までは、ずいぶん余っている。今日は、何も足さなくてよかった。


 引出しから封筒を1枚出し、机へ置く。案内を入れる中身は、まだ揃っていない。上には〈募集のご案内〉と書いた。下に宛名を書くため、いつも使っている赤ペンを取り、蓋を外しかけて戻す。


 黒いペンに替えた。


 玖城朔様。


 書き終えたところへ、社内の連絡が届いた。久米から、表示の枠の名前を、この2つで確定してよいかという確認だった。端末を開き、抽選者と受取人の欄を見比べる。


 よいです、と返し、机へ戻った。


 封筒は空のまま、宛名だけができている。その脇へ、修正する規則の束を置いた。余った帰還景品の紙は、そのいちばん上へ残した。


────────── ここから付録 ──────────


第9話の記録 採用会議の議事録抜粋


 対象:花巻こはる担当の福引企画。出席:採用判断を行う企画部長・牧瀬律子、装置と費用を確認する技術担当・津村修平、映像と画面を確認する配信編集担当・久米真琴、企画説明と規則修正を担う花巻こはる。


決定事項


 再抽選予約券を現行案から削除する。規則・表示・試験項目から外し、原案のファイルへ保存する。


 帰還景品の複数所有と、認められた交換時間中の譲渡を残す。新しい受取人の同意を必要とする。


 表示の修正と運営確認・規則登録を条件に採用する。公開は登録後とし、現時点では正式募集を開始しない。


修正事項


 抽選者と受取人を別の欄に表示する。景品の所有数と譲渡の締切・確定を示し、帰還景品と賞金の欄を分ける。


 規則の修正は花巻、画面の修正は久米、実装と試験の確認は津村が担当する。


非公開事項


 玖城へ伝えたのは採用結果のみ。具体的な規則は公開していない。本抜粋にも抽選券の枚数、抽選の上限、追加景品の操作と候補一覧は載せない。


 担当者の所見:「再抽選は外しました。帰還景品の譲渡は残しました。募集のご案内は、宛名まで書きました」


 上司の意見:「採用しました。玖城さんへは、規則が確定するまで内容を伝えないでください。宛名は、先に確定して結構です」


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