第3話 全員生還、4分
前回の帰り際、花巻と連絡先を交換した。毎度いきなり訪ねてこられても困る。来る前に連絡しろと念を押しておいたら、さっそくメッセージが届いた。
花巻〈今度は全員、生きて帰られてしまいました〉
俺は洗濯物を畳む手を止め、画面を見直した。前回の紙相撲では7人、その前のわんこそばでは全員が死んだ。今度は死者がいないらしい。だが、全員助かった報告にしては、ずいぶん困った言い方だった。
玖城〈何かまずかったのか〉
そう返して、畳みかけのシャツを仕上げた。重ねて置こうとしたところで、次の通知が出た。
花巻〈宝を1つも探していただけなくて、怒られました〉
畳んだシャツを、まだ畳んでいないほうへ戻した。
玖城〈何をやった〉
花巻〈宝探しです〉
俺は画面から目を離した。宝探し。そばでも、紙相撲でもない。何かを探し、何かを見つければ勝つ。聞いた限りでは、少しは考えるところがありそうだ。
花巻〈今日、伺ってもいいでしょうか。今度は、先にご連絡しました〉
確かに、そこは改善されていた。
玖城〈7時なら〉
花巻〈ありがとうございます! 会場図を持っていきます〉
続いて、会場図の写真が送られてきた。部屋の配置や宝箱の位置に、赤いペンで書き込みがしてある。
◇
午後7時、花巻は時間どおりに来た。肩から大きな鞄を下げ、脇には筒状のケースを抱えている。俺がそれを見たので、玄関へ入るより先に説明した。
「図面です。今日は装置はありません」
「それは助かる」
「この前、部長に説明した時も、装置の話より先に、何をするゲームなのか説明しなさいって言われまして」
「会社でも同じことやってんのか」
居間へ通すと、食卓の端に立ててあった青い紙力士へ目が向いた。2日前、俺が足を折り直したものだ。腕の下へ支えを入れ、背中側も厚くしてある。
「玖城山、強くなってますね」
「今日はやらない」
「私も、新しいのを作ってきたんですが」
「宝探しの話をしろ」
花巻は鞄へ伸ばした手を引っ込めた。筒から大きな紙を出し、食卓へ広げる。巻き癖で持ち上がった端を、青い力士で押さえた。
「これが会場です」
中央に四角い広間。その周りに、小部屋が6つ。宝箱の絵が3つあって、入口とは別の場所に出口が描かれている。赤い矢印が、広間の壁にある案内板を指していた。
「ここにあるのか?」
「何がですか?」
「探すもの」
花巻が口を開けた。
「まだ説明してませんよね?」
「矢印が向いてるだろ」
「それは私の作業用の印です! 会場にはありません!」
彼女は急いで矢印の上に付箋を貼った。そんなに慌てなくても、俺は開催済みのゲームへ今から入り込まない。だが、先に答えを隠したかった気持ちは分かる。
「で、全員助かったんだろ。何が悪かった?」
「4分で終わったんです」
「早いな」
「制限時間は1時間でした」
花巻は結果報告を図面の横へ置いた。6人参加、6人生還。前の2回と違い、失格の欄には何も書かれていない。
その下に、宝箱開封数、0。
俺はそこを指した。
「誰も宝を見つけてないじゃん」
「そうなんですよ。でも、でも、裏ルールは見つけてもらえました!」
その声には、少し誇らしさがあった。
俺は椅子へ座り直した。花巻も向かいへ座る。前回は、わんこそばの装置がまだ使えると言って胸を張っていた。今回は違うことを頑張ったらしい。
「順番に聞かせてくれ」
「まず、宝箱のどれかに、出口の鍵が入っています。鍵は1つです。見つけて、正面の出口から出た人が優勝。時間切れになっても首輪が外れていない人は、敗退です」
「鍵を取られたら、他の奴はどうする?」
「そこを考えていただこうと思って、別の解除方法も作りました。会場のどこかに、首輪を解除する6桁の番号を隠してあります」
花巻は企画書の一行へ指を置いた。鍵以外の解除条件は会場内に提示されている、という文がある。存在そのものまで隠して、ただ当てろと言うゲームではない。
「その番号を入力すれば、鍵がなくても生きて帰れるのか」
「はい。首輪が外れた方は、係員用の通路から退出できます。正面の鍵を使わないので、大賞はありませんけど」
「全員、同じ番号?」
「覚え間違いがないように、そうしました」
「なるほど」
誰か1人が見つければ、全員へ教えられる。それ自体は別にいい。大賞を狙う奴、先に安全を確保したい奴、番号を材料に鍵のありかを聞く奴。会場の作り次第で、いろいろ動く。
「最初に見つけた奴が、みんなに教えた?」
「はい。『これで外れるぞ』って。それで、全員が同じ番号を入力して、そのまま帰りました」
「鍵は?」
「使いませんでした」
「宝箱も?」
「開けませんでした」
花巻は宝箱の絵へ指を滑らせた。3つのうち1つには、鍵と大賞の受取証。残り2つにも、次の箱の手がかりや、別の小さな賞品を入れてあったらしい。
「ここ、開けると音楽も鳴るんです。中の光が順番に点いて、鍵が上がってくるように作って」
なんだ、その無駄に豪華な仕掛けは。こいつの企画は、どうして装置ばかり凝っているんだ。その半分でも、ルールを考えるほうに回せなかったのか。
「……で、その仕掛けは、誰にも見てもらえなかったわけか」
「はい……」
肩が落ちた。装置の失敗ではないが、せっかく作ったものが使われなかったのは、かなり堪えたようだった。
「でも、番号を見つけた時は、みんな喜んでましたよね。それが、裏をつくってことではないんですか?」
「喜んだのはいい。何を探して、どう見つけたのかが聞きたい」
花巻は付箋を1枚剥がした。先ほどの矢印が再び現れる。その先には、広間の壁に取りつけた案内板が描かれていた。
「番号と、それを入力すれば首輪が外れるっていう説明は、この案内板の裏です」
「裏ルールだから?」
「はい!」
俺は、少しだけ黙った。
何か意図があるかもしれない。よくある場所だから、見つけたつもりになった奴を別の場所へ誘導するとか。表の文を読むと裏へ回る必要があると分かるとか。
「表には何が書いてある?」
花巻が写真を出した。
〈困った時は、うらを見よう!〉
「裏ルールって、板の裏って意味じゃねえよ!」
「えっ」
「しかも、ひっくり返せって教えてるじゃねえか」
「直接、番号のありかとは書いてません」
花巻は写真を俺に向けたまま、真面目な顔で反論した。確かに番号とは書いていない。だが、首輪を外す手段を探している奴が、その文を見て裏を確かめない理由もない。
案内板は、壁から外せるように留めてある。写真の下へ目をやると、指を入れる切り欠きまでついていた。
「これは?」
「外しやすいように」
「裏を見る時に?」
「指を挟むと危ないので」
命をかけた宝探しで、案内板に指を挟まない配慮だけは、ちゃんとしていた。
俺は写真を置き、会場図を見直した。案内板の前に、長方形の印がある。花巻へ聞く前に、別の写真を探した。
あった。
床に、黄色い足形が2つ。
「ここに立って読んでください、ってことか?」
「読みやすい距離です」
写真を拡大した。案内板を囲む電球が、赤や黄色に光っている。
「何だ、この周りの電飾」
「順番に光るんです。暗くても気づけるように」
「隠してるんだよな?」
「番号は裏なので、表からは見えませんよ」
もう探させるのをやめて、首輪を外す受付にしろ。
俺が黙ると、花巻は企画書を手元へ引いた。端を指でなぞりながら、言葉を選んでいる。
「見つけてもらえなかったら、裏ルールを作った意味がないじゃないですか」
「だから、裏ルールっていうのは、こう……ルールの意表を突くような勝ち方のことだよ。裏に書けばいいって意味じゃねえんだ」
「だって、ちゃんと裏にルールを書いてあるじゃないですか!」
「その『裏』じゃねえって言ってんだよ!」
「でも、分かりにくくしすぎると、何をすればいいのか分からなくなりませんか?」
そこは、間違っていない。難しくすれば面白くなるなら、規則を読むだけで何時間もかかるゲームを作ればいい。そんなものに命を預ける気はない。
ただ、花巻は難しくする前に、解くところまで取り除いている。
「その宝探し、何で思いついた?」
「小学生の時、クラスで流行ってたんです。お昼休みに、宝物とヒントを書いた紙を隠して」
彼女の指が、案内板から小部屋へ移った。会社の会場ではなく、当時の教室を思い出しているらしい。
「4年生の時です。隠す係を順番でやって、机の下とか、掃除道具入れの近くとか。ヒントを見て、次のヒントを探して。最後に宝物を見つけた人が、次の係になるんです」
「お前も隠してたのか」
「はい。でも、私の時は、なかなか見つけてもらえなくて」
花巻は、紙の端へ小さな四角を描いた。
「棚の後ろに入れたんです。隙間があって、絶対に見つからないと思ったので」
「見つけてほしいのか、ほしくないのか、どっちなんだよ」
「隠してる時は、見つからないほうがいいと思うんです。でも、みんなが別のほうへ行っちゃうと、ちょっと……」
彼女は四角のそばへ、細い線を引いた。
「途中で、こっちにも何かあるかもしれないよって言いました」
「教えたのか」
「ヒントです」
「それで?」
「そこを探してくれたので、もう少し右って」
俺は、現在の会場図を指で押さえた。
「それが黄色い足形になったわけだ」
花巻が案内板の写真を見た。赤や黄色の電飾に、指の入る切り欠き。見つける係へ、あれもこれも教えたくなったらしい。
「見つかった時は、嬉しかったんです」
「それは分かる」
「だから今回は、最初からちゃんと見つけられるように」
「最初から、見つけたあとのところに立たせてるだろ」
花巻はペンを持ったが、何を書くか決まらないようだった。写真の上をペン先が行き来する。俺は、鍵の入った宝箱の絵へ指を戻した。
「番号を見つけるのが簡単でも、そこから考えることがあればいい。お前のは、番号を教える奴に、何の迷いもない」
「全員、帰れますから」
「自分はもう帰れる。それを黙っておいたら、何か得するのか?」
「特には」
「教えたら損する?」
「しません」
「じゃあ教えるだろ。鍵を探してる間に、首輪の時間が減るんだぞ」
花巻は椅子の背へ寄りかけ、そこで体を起こした。
「でも、玖城さんなら、大賞を探しませんか?」
「番号を先に見つけたら、首輪を外してから探す」
「それは、できません。外したら退出していただくので」
「なら、他の奴に番号を教えて、鍵のヒントを譲ってもらうのもいい」
「皆さん、番号を聞いたら帰ったんです」
「だから、探す前に帰れるようにしたんだろ、お前が」
俺は結果報告を引き寄せた。4分。首輪をつけ、規則を聞き、最初の案内板を読んだあとの時間だけで、全員がいなくなった。
誰も宝箱を開けず、誰も鍵を奪い合わず、誰も嘘をつく必要がなかった。
「全員助かるのは構わない。でも俺が出るなら、助かる前に考えたい。今のは、誰かが裏を見て、番号を読み上げただけだ」
花巻は赤いペンで、黄色い足形の写真へ丸をつけた。消すのかと思ったら、その隣へ〈要検討〉と書いた。
「じゃあ、明かりを消せば」
「暗くする話だけで済ませるなよ」
俺は図面を裏返した。白いほうへ6つの番号を書く。花巻が書類を寄せ、机の真ん中に場所を空けた。
「同じ解除番号を使うなら、最初から全員に、1桁ずつ持たせるのはどうだ。6人分そろえれば、帰れる」
「教え合えば、全員そろいますね」
「そう。でも、誰より早く入力した奴には、追加の賞金が出る」
花巻は6つの番号を見た。1本、指でなぞってから、俺へ目を戻す。
「自分の1桁を教えず、他の人の分だけ聞くんですか?」
「そいつは先に帰れる。残った奴は、最後の1桁が分からない」
「でも、1桁なら10通りです」
「一度しか入力できない。間違えたら、その首輪は解除できなくなる」
彼女の指が、紙の上で止まった。
「一番早く入力した方は、正しい番号を知ってますよね。帰る前に教えてもいいですか?」
「いい。知ってて帰るか、最後に教えるかも、そいつが選ぶ」
「では、最初から全員に同時に教える約束でも」
「いい。ただ、約束どおりに教えるかは分からない。先に教える奴も、聞くまで黙ってる奴もいる。違う数字を言う奴だっているだろ」
花巻は紙を手元へ向けた。いつものようにセンサーを増やそうとはせず、6つの番号の間へ小さな矢印を引いている。
「嘘の数字で、相手を先に入力させるんですか」
「自分より早く帰りそうなら、やる奴はいる」
「それ、間違いを入力した人は、ずっと残るんですね」
「そう。ほかの奴が正しい番号を教えてくれても、もう入力できない」
赤いペンが、1つの番号の横で止まった。花巻は顔を上げ、俺を見た。
「それなら、数字が正しいか確かめる方法を、1つだけ残せませんか。誰の話も信じられないと、最後は勘になります」
俺もペンを止めた。
確かに。疑えるだけでは、選べることにならない。相手がどこまで知っているかを確かめ、嘘なら別の相手へ話を持っていく余地があったほうがいい。
「1人、1回だけ。1桁と数字を指定したら、それが正しいか分かる権利はどうだ」
「はい。それなら、全部を教えなくても判定できます」
「俺が確かめた結果を、お前が信じるかは別だけどな」
花巻は、書きかけた矢印へ線を足した。1回で何を確かめるか。その結果を誰に言うか。そういうところが、まだ紙の上に残っている。
「答えの値段、ですかね」
「題名?」
「最初は1桁しか知らないのに、誰に教えるかで価値が変わるので」
俺は6つの番号の上へ、その言葉を書いた。彼女がつけた題名に、今日は首輪の存在を隠すような陽気さがない。かといって、ただ物騒なだけでもない。
「それでいこう」
花巻の口元が緩んだ。すぐに、新しい紙を取って処理の順番を書き始める。俺は図面の裏へ賞金と締切の条件を足した。途中で1つの数字を変え、彼女に戻された。全員へ一度に情報を知らせる機能も必要だと言うので、そこは頼んだ。
机の端に、開かれなかった宝箱の写真が残っている。
「この箱は、別の企画でも使えるだろ」
俺が言うと、花巻は写真を引き寄せた。
「使います。音楽も、ちゃんと作ったので」
「次は、誰かに聞いてもらえるといいな」
「はい。……玖城さんにも」
「中身を知らないやつならな」
彼女は頷いて、会場図を巻いた。明るい案内板も、足形も、赤い矢印も筒の中へ戻っていく。全部をなくす必要はない。何を教えて、何を考えさせるかを、本人が次に選べばいい。
玄関へ向かう前、花巻は鞄から小さな封筒を出した。
「花巻山も、置いていっていいですか?」
「宝探しの資料と一緒にしまっとけ」
「次、持ってきます」
それだけは、妙に自信のある返事だった。
彼女が帰ると、食卓には新しい規則案が残った。俺は洗濯物を片づけるつもりで立ち上がりかけ、もう一度その紙へ目を落とす。
自分は1桁を持っている。確認できるのは1回。誰も自分へ本当のことを言っていないかもしれない。だったら、最初に確かめるのは、誰の数字だ。
指先で1つの番号を隠した。
その数字を渡す代わりに、何を約束させる。
花巻へ教えるためではなく、俺が帰るために考えた。
気づくと、帰っていったばかりの彼女へ、確かめたい条件を送りそうになっていた。スマートフォンを持ち上げ、やめる。
自分で作ったゲームだ。聞いたところで、答えは自分で決められてしまう。
俺は画面を伏せ、彼女が持ってくる次の企画を考えた。
番号のありかは、書いてこなくていい。
────────── ここから付録 ──────────
企画メモ 答えの値段
花巻の宝探しを元に、玖城と花巻が考えた情報取引ゲーム。番号を解く難しさだけではなく、知った数字を誰へ渡すかを勝負にする。
開始時の情報
参加者は6人。解除用の暗証番号は6桁で、0から9までの数字を使う。先頭が0でも6桁として扱う。開始前に番号を固定し、ゲーム中は変更しない。
各人には、互いに異なる1つの桁位置と、その桁の正しい数字を専用端末で知らせる。6人の情報を合わせれば、必ず6桁すべてが分かる。誰がどの桁を知るかは全員へ公開するが、数字そのものは本人にしか知らせない。
交渉と確認
制限時間は30分。数字や確認結果を口頭、メモ、端末の共有機能で教え合える。複数人へ同時に知らせてもよい。嘘をつく、黙っておく、約束を破ることも認める。運営は情報の共有や約束の履行を強制しない。
1人に1回だけ、確認権を与える。任意の1つの桁位置と候補の数字を指定すると、その組合せが正しいかどうかを本人にのみ回答する。正しい数字自体を教える権利ではない。権利は譲渡できず、使用後は復活しない。
自分が知る数字や確認画面を相手へ見せ、情報の証拠にしてもよい。ただし、画面の提示や端末操作を暴力で強制してはならない。共有機能で送った数字が運営に認証された正答だとは限らない。
解除申請
各人は制限時間内の好きな時点で、完成した6桁を申請できる。解除申請は1人1回だけ。申請前の入力画面は修正できるが、確定後の取消しはできない。
正解なら首輪が解除され、生還が確定する。不正解なら、その首輪の解除申請は以後受け付けない。不正解者と、期限までに正解を申請しなかった者は、30分の終了時に首輪が作動する。別の参加者が後から正解を知らせても、使用済みの申請権は戻らない。
解除した人の氏名と解除時刻は公開するが、申請した数字は公開しない。解除した人は直ちに退出しても、終了まで残って交渉してもよい。自分が申請した正解を残った人へ教えることも合法。
賞金と全員生還
生還者は1人100万円を得る。さらに、最初に正解した人へ追加賞金300万円を支払う。機器の判定単位で同時に最初の正解となった人が複数いる場合、追加賞金をその人数で等分する。同時とみなす判定単位は開始前に提示し、後から変えない。
全員が最初から本当の数字を公開し、全員が正解を申請することも認める。死者を出すための再判定は行わない。ただし、誰より早く正解したい人が、自分の数字を伏せたまま他人の数字を集めたり、共有の時刻を破ったりする余地は残る。
遊びの焦点
最後の1桁を知る人には、その数字を渡す前の交渉力がある。正解者が出れば、残った人はその人から完成した答えを聞くこともでき、元の情報提供者の独占は崩れ得る。情報の値段は、固定の金額ではなく、その時点で誰が何を知っているかによって変わる。
確認権をどの桁に使うか、画面を見せて信用を得るか、正解を知ったあと誰へ教えるかを参加者が選ぶ。全員の協力で生還する結末も、誰かが嘘を信じて申請を使い切る結末も、同じ公開規則から起こり得る。
端末への干渉、認証画面の偽造、暴力による操作の強要は禁止。通常の発言として偽の数字を告げることと、運営の正答表示を偽造することは区別する。
企画書の余白
〈知っていることは、まだ渡していない間に値段がつく〉
その下に、花巻の赤い字で追記がある。
〈確認する方法まで隠さない〉
企画書 宝探しゲーム
企画担当:花巻こはる
発想の元:小学4年生の頃、クラスで流行していた宝探し。隠す係と探す係を交代し、ヒントの紙をたどって宝物を見つけていた。
基本ルール:6人、制限時間1時間。3つの宝箱のうち1つに、正面出口の鍵と大賞の受取証がある。正面出口の使用は1人で、通過すると施錠される。鍵以外の首輪解除条件も会場内に提示する。期限時に首輪が外れていない者は敗退。
裏ルール:案内板の裏に書かれた6桁の共通番号を入力すれば、首輪が解除される。解除者は大賞を得られないが、係員用の通路から退出できる。首輪を解除した人は宝探しを続けられない。6人とも解除すれば、その時点で終了。
会場案内の抜粋:案内板の表に「困った時は、うらを見よう!」。板の下には指を入れやすい切り欠き。足元に読む位置を示す黄色い足形。案内板の周囲には、赤や黄色の電球が順番に光る電飾。
実施結果:全員生還。所要時間4分。宝箱開封数0。正面出口の鍵は未使用。大賞の受取人なし。
担当者の所見:「裏ルールを見つけていただけました。案内板も外しやすくしてあります」
上司の意見:「助かったことは構いません。宝探しより先に、全員が帰っています」




