第4話 転生
私がこの世界に転生したことに気付いたのは、祖母の葬儀の時だった。
可愛がってくれた祖母との別れの時に、一緒にいられなかったことにショックを受けていたせいかもしれない。
王宮から公爵家の屋敷に馬車を飛ばした。馬車で一時間もかからないのに。
それでも最後の時に間に合わなかった。
領地にいた両親も兄も妹も間に合ったのに。
危篤の連絡が来てすぐ戻ったのに。
「ディア、たった今……」
そう言って父は目を伏せた。
眠るようにベッドに横たわる、大好きな祖母。
死んでるなんて思えないほどだった。
「おばあさま! ああああ!」
祖母の手を握り、祖母の眠るベッドに取りすがって泣きじゃくり、手の中で冷えていく祖母の手に更に胸を締め付けられた。
祖母から引き離されて暴れる私を抱きしめた父が、震えているのに気付いて力が抜けた。
「どうして? やだよぅ……」
なんで私は第三王子の婚約者になったの?
大好きなおばあさまの死に目にも会えないのに。
寝る時間を削らされて、間違えると鞭で打たれて。
食事も時間に遅れたら、もう食べられない。
私を見るみんなの目が冷たいあの場所。
「もう、いやああ」
そして、私は熱を出して倒れた。
夢の中で、私は子供から大人になった。
全く違う容姿、名前。生活も何もかも。
テレビ、動画、パソコン、会社。
スマホ、ゲーム。
全く知らない単語や魔道具みたいな電気で動く機械。
すぐに連絡が取れる道具。
知らない世界がそこにあった。
ゲームや小説、マンガにアニメ。
そういうのが夢の中の私は好きだったようだ。
スポーツも好きで、学ぶことが好き。
一つのことをある程度知識を深めては別なことに興味を持つ好奇心旺盛な女。
結局、浅く広くの知識を持つだけに終わり、専門職にはなれなかった。
性格に尖ったところはなく、人付き合いもそれなり。
彼氏はできなくて独身生活を謳歌していた。
両親と仲が悪いわけでもなかったが、結婚はと言われるのが嫌で、一人暮らし。
忙しい合間を縫って趣味も満喫していたら、凄く納得がいかないゲームがあった。
その頃人気があった「救国の聖女と五人の英雄」というゲームだ。
能力上げパート、恋愛シュミレーションパート、RPGパートがあり、それぞれのパラメーターと五人の英雄との親密度で結末が変わるいわゆる乙女ゲーム。
その頃の流行を取り入れたのか、ヒロインと当て馬の悪役令嬢が攻略対象者を取り合うゲームだった。ヒロインが勝てば婚約破棄に平民落ち、国外追放、お家取り潰し、処刑コースなど酷い目に遭う当て馬令嬢たち。
悪役令嬢が勝てばお友達エンド。
婚約者のいるイケメンに手を出す方が罪深くないの? と思うけれど、聖女認定のヒロインは攻略対象者とともに、世界の危機を救うのだから仕方ない。
いや、おかしくない!?
そう。その夢の中の私は悪役令嬢に酷く同情していた。
特に第三王子の婚約者ディアベイル・リアーガーン公爵令嬢は酷い目に遭う。
政治的バランスを考えて国王が頼み込んで成立させた政略結婚の婚約相手なのに、王妃からは虐められるし、第三王子は婚約したくなかったと虐める。
挙句に距離感を注意したら、ヒロインは泣き出して、悪者になる。
かといって婚約を解消する選択肢はゲームにはなかった。
ゲームをしていた私はドン引きだった。
最初の処刑コースで驚いて何周もして救われたのが、ヒロインのバッドエンドのお友達エンドだけなのは酷すぎた。
『どういうことなの?』と叫んで以降、夢の映像が途切れた。
待って。ディアベイル・リアーガーンってよく知っている名前。
「私!?」
飛び起きた。
ベッドの上だった。
私の部屋。そう、ディアベイル・リアーガーンの公爵家での部屋。
私は身体を抱えてガタガタ震えた。
「私、殺される!」
そう叫んだ。
「お嬢様!?」
メイドが青い顔をして飛び込んできた。
私が王宮へ行く前によく仕えてくれたメイド。
「殺されるとは? お嬢様? お嬢様!」
叫び声が聞かれていて、大騒ぎになった。
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