第24話 採取
森に入って1時間くらい経っただろうか。
ヒュッという音がしてパドの足元の草が揺れた。
「え?」
「スライムだ。こいつは放っておくと増えて薬草でも何でも食べてしまうから、見つけ次第討伐することにしている」
よく見ると、地面に濡れたような、水クラゲが砂浜でに打ち上げられたような感じだ。透明な表皮がぱっくり割れて、中にある石のようなものが割れている。
「足元を這いずっていることが多いから、少し気を付けてくれ。踏むと転んでしまうかもしれないからな」
スライム。最弱の魔物という位置付けだけれど、冒険者の評価はそんな感じなのね。
「討伐依頼とかあるの?」
「スライムは子供でも退治できるし、素材も価値がないから大量発生しない限りはないな」
見習い冒険者が森に入る場所は厄介な魔物が生息している領域ではない。
それでもいないわけではない。
外は危険なのだ。
「気を付けるわ」
それから、草をかき分けて歩きながら、薬草を探した。
「あ」
葉の形が似ている。
「パド、この葉が絵と似ているわ」
パドが辺りを警戒しつつ視線を向けた。
「そうだな。これだ」
「では採取するわね」
根元の土にシャベルを突き刺して、掘り返しそっと土を払っていく。
「出来たわ!」
パドが薬草の状態を見た。
「初めてにしては上出来だろう。この調子で10株ほど採取していこう」
その場所には群生していたので、離れた場所をランダムに選んで採取した。
「よし、もう一カ所くらい見つけて採取したら冒険者ギルドに戻ろう」
「わかったわ」
それから、2時間くらいかけてもう10株採取し、冒険者ギルドに戻った。
買い取りカウンターに薬草を出すと、一株一株確認してから買い取りと常時依頼報酬をカウンターに置かれた。
「報酬が銅貨5枚、薬草20株で大銅貨5枚だ。評価はAだな」
「ありがとうございます」
貰った硬貨を財布にしている小さな革袋に入れた。
大銅貨10枚で小銀貨1枚、小銀貨10枚で銀貨1枚。登録で銀貨1枚って大金なのでは?
私は公務で大きな数字ばかり見てきたから、庶民の金銭感覚がわからないけれど。
「これでしばらくは大丈夫だ」
パドがそう言ってくれてほっとした。
宿に帰ると、お風呂に浸かりながら考える。
襲撃者は諦めたのだろうか。
謁見が終わって隠れ家へ行けるようになったら、父に連絡を取らなければ。
お風呂から上がって手紙を書いた。
父宛てだ。
それと、カウーンレイ辺境伯宛てに。
書き終わるとノックの音がした。
「夕食が来たぞ」
「はい」
逃亡生活の方が、食事のレベルが上がっているなんて、びっくりね。
パドは食事にこだわる人なのかしら。
王城にいた頃なんて、食事はきっと庶民の方がいいレベル。
学院は下位貴族に合わせていたから、それほど豪華な食事ではなかった。
王子妃教育を学院に入る前に終わらせていてよかった。
なんとか、自由時間を確保できたから。
「ディア、ちょっと相談がある」
「なにかしら?」
「例のピアスだが、襲撃があるか試したい。もちろん森の一角に置いて、だ」
「すぐに襲ってくるかしら?」
「近くにいるなら可能性は高い」
「そうね。アイチェの周りの村とかにも探しに行っているかもしれない」
「領都と村の間の狩人小屋で廃棄されたままのがある。そこを借りることにしようかと思っている」
「謁見を終わらせてから?」
「そうだな。連絡がきた日時にもよるな」
「わかったわ」
「対処は俺がする。ピアスを置いたらディアは宿で待機だ」
「……わかったわ」
それから冒険者ギルドに連絡が来て、謁見の日は10日後の2の鐘に宿に迎えが来ることになった。
パドはすぐ決行することにし、狩人小屋に私がピアスを置いた後、結界を張る。
パドは少し離れたところに野営して、襲撃を待つと言っていた。
そして、その狩人小屋に向かう日が来た。
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