第23話 依頼
掲示板には依頼書の紙がピンでとめられている。剥がされたのだろうか、掲示板に貼られている紙はまばらになっていた。
「これを剥がして持っていくんだ。見習いの依頼はここらへんだな」
パドが紙に手を添えて、引っ張るような仕草をする。
掲示板はゾーン分けがしてあって、各等級別の依頼が貼ってあった。
「紙の右上に星のマークがついているだろう? それが等級と一緒なんだ。なんのマークも付いていない紙が見習い用の依頼書だ」
掲示板の上の方にあるのは星の数が4つある。中ほどのは星が2つか3つ。一番下にある紙には星はない。
なるほど。字が読めなくてもわかるようになっていて、内容がわからなければ受付で説明してもらうのね。
報酬のところは硬貨の絵があって、それが何個も描いてある。
その最後に銅貨6枚とか、銀貨1枚とか書いてある。
字が読めない人は星のマークと硬貨の絵で自分のやりたい依頼を探すのね。
見習いの依頼は街の雑用というところ。街の外の森で薬草採取などもある。
魔物の討伐依頼はない。
前世でアプリであった隙間のお仕事という感じだ。
冒険者っていうのは日雇い労働者という感じね。
保証のない職業だけど、一応の身分証を作れるから最低限のセーフティネットにはなっているというところでしょうね。
「一つくらいは今のうちに熟したほうがいいだろう。一月何もしないと失効する。再登録は銀貨二枚だ」
「高いわね」
「身分証のつもりで作られても実績がない者には身分の保証はしないって事だろう」
「それは理にかなっているかもね」
「最初にするのは何が適当かしら?」
「そうだな。子供の見習いは街で手伝いから始める方がいいが、ディアは顔を売る必要はない。一人でする依頼の方がいいだろう。この辺か?」
パドが示したのは薬草採取の依頼だ。
「これは常設依頼だから、取ってくれば買取の時に受託達成したことになる」
「この薬草、摘み方とか、コツはあるのかしら?」
薬草の絵は依頼書に描いてあるが、見分けられるかどうか。
「群生地の薬草を根こそぎとるのは禁止だな。根元から掘り起こすから全部取ると生えなくなる。ある程度残して摘む」
「根っこごと取るの?」
「カットしたら、そこから薬効成分が流れ出るとか言っていたな」
「そういうことね」
「今から行こうか」
パドは常時依頼の紙を指で弾いて私に訊いた。
「掘り起こす道具なんか持ってないわよ?」
「受付で借りられる。麻袋もな」
パドはちらっとカウンターを見て言う。
「へえ。親切ね」
「返さないと銀貨一枚とられる」
「借りっぱなしはダメということね」
「借り賃は報酬から引かれる。税金もな」
「借り賃と税金ね。わかったわ」
世知辛いわね。
受付で薬草採取をしたいからと道具を借り、入った門の左手側にある3の門から出る。森に面していて、冒険者ギルドから一番近い門だ。
こちらの門は冒険者や領都民が主に使うようで、馬車の往来は少ないようだった。
門番にギルド証を見せ、依頼のためと言って出る。
門からは城壁沿いに道があり、門の正面から少し離れた森に向かう道もあった。
この門から出る領都民は森に採取などをしに行くのだろうか。
道の両脇は丈の短い草原で、地面の色が所々に見える。
森に近づくほど草は青々として、丈も高くなっていく。
前を行く人々が森に入ると散っていくのがわかった。
「薬草は森に入ったくらいのところにもあるんだが、多分、採取されていると思う。少し奥に入ったところで探そう」
「わかったわ」
パドは森を歩くのに慣れている。
足音もしないし、見晴らしの悪いところなのに、道がわかっているように動く。
獲物を狙う時は目の前にいるのに気配が薄くなる。
私を狙った襲撃者のように殺気を振りまいたりはしない。
魔物も動物も、殺気には敏感だからか。
きっとキマイラを仕留めた時も、不意打ちだったのだろう。
キマイラがパドの存在に気付かずに攻撃を受け、わからないうちに仕留められたのだろうと想像した。
私は足下に生えている草を見て、絵で見た薬草と似た草がないか探しながらそう思った。
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