第22話 登録
ベッドに寝転がっていたら、いつの間にか窓の外が暗くなっていた。
「いけない。寝ちゃってたわ」
飛び起きて洗面所で顔を洗い、身だしなみを整えた。
髪は緩くまとめ、リボンで肩くらいの位置に一つで結ぶ。
「服に皺……許容範囲よね」
ワンピースを確認してほっと息を吐く。
戻ったところでノックがあった。
「はい」
開錠し、扉を開ける。
「夕食が届いたぞ」
パドが帰って来てたのに気付かなかった。
冒険者の装備はすでに外して、シャツとスラックス姿になっている。
靴もブーツではなく、革靴に履き替えていた。
「ありがとう」
ソファーの前の長めのテーブルに食事が置いてあった。
具だくさんの野菜スープにパンと肉料理。
飲み物は果実水だった。
それを美味しくいただいていると、パドが口を開いた。
「冒険者ギルドには連絡が来たら、この宿に教えに来てくれと頼んでおいた」
「ありがとう。パドには感謝しかないわ」
「いや。護衛のついでだ。……それで、ディア、冒険者登録をしないか?」
「え?」
「市民証明書もいいんだが、冒険者ギルドに所属しておいた方がなにかと便利だ。出身地を隠せるしな」
「あ……」
そうだ。この国の人間ではないことも、リアーガーン公爵領から来た事もわかる。
「登録時はこの領都出身でいいはずだ。あの家に住むならな」
「そうね。貴族街だけど!」
そこに行けるか、まだわからないけれど!
「決まりだな。明日、登録に行こう」
「よろしくね」
「ああ」
それからは雑談をして、食事を終えた。
翌朝、宿の朝食を食べてゆっくりしてから冒険者ギルドに行くことにする。
早朝だと受付が混んでいるからだそう。
その間に馬の様子も見に行くと、艶々に手入れされていてご機嫌な様子だった。
良かった。
冒険者ギルドには歩いていく。もちろん装備を身につけた冒険者の恰好だ。
この宿は富裕層、特に商業ギルドが近くにあるため、商会関係者が多い。
高級商店が立ち並ぶ通りに面しているせいもある。
そのためか、冒険者の恰好は道を歩いていても少し浮く。
パドの装備は見る人が見たら、高ランク冒険者とわかるだろうけれど。
私の装備はあまり汚れもないし、初心者丸出しに見えるだろう。
大通りを20分ほど歩くと様相が変わってきた。
雑貨や衣料などの店が少なくなり、店構えも庶民的になる。
冒険者が使う魔道具の置いてある店や、ポーションなどを扱う薬師の店、防具や武器を扱う工房、テントやマントなどを扱う雑貨店などが並び始める。
その先に冒険者ギルドが見えてきた。
どこの支店でも、ギルドの建物は変わらない。大きさに多少の違いはあるが。
「あそこね」
「そうだ」
入口の扉は開け放たれていて、出ていく冒険者がいる。
その入り口を入ると、アイチェより広いスペースにカウンターや壁際に待合に使うのか、木のベンチが置かれていた。
正面はカウンターで、カウンター越しにギルド職員が立ち働いているのが見える。
左手には依頼の木版がかけられている掲示板、右手には買い取りカウンターがある。
今いる冒険者は少ないがそれでも、掲示板の前には人がいて、カウンターの受付には何人か並んでいる。
「こっちだ」
パドが人のいない受付に向かう。私はその後をついて行った。
「ようこそ、こちらは登録カウンターですが」
カウンターにいた青年は訝しそうにパドを見る。
「ああ、俺じゃねえ。こいつだ」
「こ、こんにちは」
青年はパドから私に視線を移すと納得した顔で頷いた。
「そうですか、ではこの用紙に記入を。書けないようでしたら代筆します。わからないところは未記入で大丈夫です」
カウンターに紙とペンが出される。
名前、歳、出身地、役割。
これだけでいいのかしら。
役割はわからなかったから、そこは空白で出す。
「結構です。登録料は銀貨一枚です」
私はお金を出そうとしたが、パドに止められ、パドが支払った。
「お待ちください」
青年はカウンターの後ろにある机に向かった。
「私も出せるわ」
「この国の硬貨じゃないだろう? あとで両替しないとな」
そう言えば、持っている硬貨はオキーフ王国のものだった。
そこまで気が回らなかった。
「両替したら返すわね」
「そうしてくれ」
そしてしばらくしてパドの持っているギルド証と同じものを手に青年が戻ってきた。
「こちらになります。まず見習いから始まります。ある程度依頼を熟して貢献度が溜まるとランクが上がります。ランクが上がると星がここに打刻されます。星の数がランクです。見習いの次はG級で、正式な冒険者となります」
「わかったわ」
「わからないことがありましたらいつでも訊きに来てください。依頼は掲示板に張り出してありますが、受付で紹介することも出来ます」
「ありがとう」
ギルド証を受け取り、掲示板に移動した。
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