第21話 役所
番号が呼ばれた窓口に来た。
「すまないがこの住所に向かいたい」
パドが家の場所が書かれた紙を男性に見せた。
「貴族街ですね。貴族である証明は持たれていますか」
「それが……父が用意した場所なんですが、まさか貴族街とは知らず。この市民証明しかなくて。あとその家の鍵しか」
私は市民証明と鍵を見せるとそれを見た男性が唸る。
「うーむ。困りましたね。これだけですと門は抜けられませんね」
男性は眉を寄せて首を横に振った。それを見てパドが口を開く。
「カウーンレイ辺境伯に謁見の願いは出せるか」
「は?……はい。希望は出せますが、受けてくれるかはわかりませんよ?」
「俺のギルド証でも、なんの力にもなれないか?」
パドはそう言ってギルド証を見せた。男性の目が見開かれた。
S級冒険者というのは本当に力がある存在なのね。
「!……わかりました。こちらが謁見願いの用紙になります。お名前を連名で、ここに。それから謁見の目的を」
謁見の目的。父に言われたからでは無理よね。
「彼女の保護だな」
「え?」
私が考えあぐねているとパドはきっぱり言った。
「よくはわからんが、しつこく野盗に狙われてな。この容姿だからか目をつけられたかもしれん。最初は一人で旅をしていたからな。アイチェの『微睡亭』でも襲撃を受けた。今頃は騒ぎになっていると思う」
「それであなたが?」
受付の男性は驚いた様子で、パドに問いかけた。
「ああ。彼女の護衛を引き受けていてな」
「わかりました。その事情であればもしかしたら謁見が叶うかもしれませんね。カウーンレイ辺境伯は理不尽な目に遭う民を見捨てる方ではありませんから」
男性が納得したように頷き、私たちは書類に記入をした。
「連絡は冒険者ギルドにしてくれ」
手続きは無事に済み、男性が連絡先を問うとパドがそう答える。
「わかりました」
頷いた男性は返答には時間がかかると、私たちに言ってすべての手続きは終わった。
私たちは役所を出て、宿屋を探すことにした。
「また高級宿屋?」
宿屋を探すのかと思えば、パドにどう見ても高級感を漂わせている宿屋の前に連れてこられた。進む足に迷いがなかった。
「いや。ここはアイチェで拠点にしている宿屋の系列でな」
「私はそんなに支払えないわよ」
贅沢に慣れているのね。私だって公爵令嬢だったけれど、自由なんてほとんどなかったから贅沢なんてわからないわ。
ジト目で見たのがわかったのか、困った顔でパドは指で頬を掻いた。
「警備が居るからここの方がいい。結界も張られている」
「……そうね。アイチェにいないとわかればあちこち探すでしょうしね」
「二、三日だろう。その後は屋敷に住めるようになるんじゃないか?」
「それならいいのだけれど」
なんとなく、すんなり行くとは思えない。
「ここは奢るから。ほら」
「仕方ないわね」
奢りならまあ、いいか。
「いらっしゃいませ」
「二つ部屋を借りたいんだが、空いているか?」
「今二人部屋が一部屋しか空いてないのですが……応接室と寝室がありますので広さは十分かと」
「……寝室は鍵がかけられるか?」
「はい。内側からですが」
「ではそれでいい。三日ほど泊まる」
「かしこまりました。パド様でございますね。いつもありがとうございます。ご案内してくれ」
受付がカギを従業員に渡した。
「こちらです」
案内されたところは二階の角部屋で、明るく上品な内装だった。
「食事は一階にあるダイニングルームで提供しております。部屋番号をおっしゃっていただければ大丈夫です」
「わかったありがとう」
パドは案内の従業員にチップを渡して、扉を閉じた。
「ディアは寝室で寝ろ。俺はこっちのソファーで寝るからな。鍵もかけておけ」
「ありがとう」
紳士だわね。
「俺はこれから冒険者ギルドに行ってくる。その間は部屋にいて、ゆっくりしているといい。俺が帰るまで誰も部屋に通すな」
「わかったわ」
私の答えに頷くとパドは外から鍵をかけて部屋を出て行った。
私は息を吐き出して、汚れを落として着替えることにした。この部屋にも、お風呂が付いているのはわかったから。
「少し休んでもいいわね」
私は浴室の扉を開け、中に入ったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
面白いと思われましたら☆応援(評価)お願いします!
ブックマークもぜひ!




