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【第一章完結】とぼけたS級冒険者と悪役令嬢   作者: 佐倉真稀
第一章 逃亡

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第20話 領都

 領都まで襲撃はなかった。

 小型の魔物にはたまに出会ったが、大型の魔物や群れには会わなかった。

 街道の先に城壁が見えた時、ほっとした。

 でも、この先狙われないわけじゃない。

 引き締めなくては。

 この先、パドが側にいるわけじゃない。

「それで、この街で、ディアは何をするんだ? ずっと手持ちの資金で暮らすってわけにいくのか?」

 道中、パドがそんなことを訊いてきた。

「そうね。事務仕事は得意なんだけれど、そうそうそういう仕事には就けないでしょうね。魔法が使えることを活かして、冒険者かしら?」

「……冒険者ギルドで解体するだけでも食っていけそうな気がするぞ」

「雇ってくれるかしら?」

「くれると思うぞ。あの解体魔法は凄い」

「褒めても何も出せないんだけど……」

「いや、本当だ。解体が多いギルドは泣いて喜ぶ」

「血生臭さが身に染みそうね」

「それはそうだな」

 わははと口を開けて大げさに笑う。

 そういうところは中年ぽいけど、憎めない感じがする。

 たまに大声だと馬がブルルと鳴いて抗議する。

「おう、わりぃな。うるさかったか?」

 そう言って鬣を撫でる様子は馬好きなんだなと思う。


 パドは馬に名前を付けた。

 売るのなら付けないほうがいいのに、付けたのだ。

 黒い体毛からなのか【ディー】と名付けた。

 私は迷ってまだ付けられないでいる。

 懐いてくれているから手放すのは惜しくなっているけれど。

 街道を領都へと向かって馬を走らせる。

 アイチェよりも城壁が大きい。

 領都の門の前には馬車や荷馬車、徒歩の旅人などが大勢並んでいた。

 今は昼前だ。

 大体門が開くのは二の鐘が鳴ってから。

 それが大体前世でいう9時頃だ。

 鐘が鳴る時間で人々は動く。


「昼前に入れるかと思ったが、こりゃあ昼過ぎるな」

「仕方がないわ。待つしかないでしょう」

 門を出ていく人もいる。

 行商人や冒険者のような人たちが多かった。

 大型の馬車が護衛付きで出ていくのも見た。

 あれは都市間を結ぶ定期便の馬車なのかもしれない。


「次」

 私たちの番になった。

「彼女の護衛だ。彼女はこの領都に家がある」

 パドがギルド証《カード》を見せる。

 門番は一瞬驚いたように目を瞠る。

 私も身分証を見せ、隠れ家の番地が書かれた紙を見せた。

「この身分証と住所だけでは貴族門は通れないかもしれないですよ」

「そこは役所で何とかする」

 パドがそう言うと門番は頷き、通っていいと道を開ける。

「それしかないですね。領都レイにようこそ」


 門はアイチェと同じくらいに厚かった。

 構造は同じで、20メートルほど門から歩かないといけなかった。

 内側の門を潜り抜けるとアイチェより人も馬車も多く、通りは混雑してた。

 不思議と、領都は落ち着いた色合いの家が多く、赤い屋根、赤レンガ造りの建物、石を切り出して作ったような建物。

 窓は木枠でガラスが入っていた。

 印象は栄えた街。

 見張り塔の屋根にはカウーンレイ辺境伯の旗が翻っていた。


「凄いわ。活気があるわね」

「ああ。最初に役所に行って手続きをしよう。そう言えば鍵とかは預かっているのか?」

「え?」

「家の鍵だよ」

「あ、預かっているわ」

「よし。行こう」

 役所。行政機関ね。

 そう言えば、今世では行ったことはないわね。

 貴族院なら王城にあったから行く機会はあったけれど。


 領都レイは四角に近い形をしている。

 それぞれの面に門があり、一の門、二の門と呼ばれている。

 私たちが入ったのは二の門だ。

 帝都がある方角にある門は一の門とする慣例があるそうだ。

 オキーフ王国は単に、南西南北と方位をつけていたけれど。

 役所はギルドが集まる通りの一番大きい建物だった。

 この役所には代官の執務室など、主要な行政機関が集約されているそうだ。

 代官は貴族だから、邸宅は貴族街にあるそう。


「パドは何でも知っているのね」

「情報に詳しくないと冒険者はやっていられないんだよ。俺は貴族絡みの仕事も受けるしな」

「そうなのね。パドに会えたのは幸運だったわ」

「……こっちだ。馬を預けて、中に入るぞ」

 建物の裏に馬車が停められている場所があり、その奥に馬を預ける場所があった。

 役所に入るとまず受付があり、パドが用件を言うと、番号札を受け取った。

「この番号で呼び出しだと」

 木片に数字が書いてあった。E6と。

 待合所になっていて、木のベンチが置かれていた。

 私たちのほかにも、待っている人はいて、そこそこ待ちそうだった。

「待つしかないわね」

「まあな」

 そして待つこと30分くらい。

「E6の方。2番の窓口へどうぞ」

 カウンターで手をあげている男性がいる。

「あそこだな」

「そうね」

 私たちは呼ばれた窓口に向かった。




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