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【第一章完結】とぼけたS級冒険者と悪役令嬢   作者: 佐倉真稀
第一章 逃亡

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第18話 夜襲

 夜中にドンという音と衝撃が走った。

「な、なに?」

 飛び起きて着替える。

 冒険者の恰好だ。

 荷物は全部魔導収納に入れてあるから、問題はない。

 扉を開けて、パドの部屋に行こうとしたら、パドが出てきた。

 彼も冒険者の装備を身につけていた。

「無事か?」

「え、ええ」

「この宿は警備がしっかりしているから、こんな派手に襲撃を受けるなんて普通はないんだが。とりあえず、下に行こう」

「はい」

 もしかして私の追手?

 いえ、もしかしなくてもそうだわね。

 こんな高級宿に襲撃をかける馬鹿はそういない。


 でも、何故わかったの?

 何人も見張りを立てていた?

 ドレス姿じゃなくてもわかった?


『送り返すべきね』


「あ……」

「どうした?」

「いえ、あとで」

 階段を下りる途中で、武装した宿の警備と出会った。

「パド様、ご無事でしたか」

「ああ。何があった?」

「襲撃です。黒い装束の集団です。今警護の者が対応中です」

「派手な音と衝撃が来たが」

「相手が爆撃魔法を宿に。結界を崩すまでではないですが」

「暗殺集団ぽいが、そんな派手なことをしたのか?」

「結界を破れなかったからみたいです」

 二人は下りながら現状を確認していた。

「パド様の泊まる宿に襲撃をかけるとか、馬鹿なんでしょうね」

 警護は皮肉気に笑っていた。

「そんな大きな音がしたら、街の警備兵もやってくるのになあ」

「馬鹿でしょうね」

 私は二人を追って階段を下る。

 一階についたら、外から戦闘音が聞こえた。魔法と剣戟の音。

「ディアは宿の宿泊客と一緒に避難だ」

 パドは警備に視線を向けると警備は頷き私の方に体を向けた。


「こちらです」

 そこは地下室だった。

 すでに避難した客が何人もいた。

「この方で最後です」

「わかりました」

 宿泊客を守っている警護の人と宿の従業員、そして宿泊客がいた。

 それぞれ固まって、椅子に腰を下ろしている。

 重い鉄製の扉が閉められて、静かになる。

 宿泊客は10組。商人風の男性たち、富裕層の親子、貴族に見える老夫婦など。

 女性だけなのは私一人。

 皆、寝ていたようで寝間着に上着を羽織った者ばかりだった。

「どうぞこちらへ」

 私が立っていると、宿の従業員……受付をしていた女性が声をかけてきて椅子を勧められた。

「あ、ありがとう」

 私は勧められるまま、椅子に座った。


 それから息苦しい時間が過ぎる。皆不安そうな表情で押し黙っている。

 二時間ほど経った頃だろうか。

 警備の声がした。

 先ほどの警備の者だった。

「終わりました。開けます」

 扉が開けられた。

「襲撃者はすでに街の警備兵に引き渡し済みです。ご安心を」

 宿泊客からはほっとしたため息が漏れた。

 それから、従業員に誘導されて宿泊客は地下室を出て行った。

 私が出ると、パドが待っていた。

「早めに出ることにした」

「わかったわ」

 パドと一緒に宿を出た。


 宿の外の石畳に亀裂が入っていたり、戦闘で開いたような穴があった。

 かなり激しい戦いだった様子が見て取れる。

 厩に行き、綺麗に手入れされた馬を見た。厩番が鞍などをきちんとつけて連れてきた。

「艶々ね」

 そう言うと馬と厩番が嬉しそうにした。

「飼い葉は譲ってもらってある程度は俺の魔導収納に入っている。容量が小さいがな」

 腰のポーチをパドは叩いた。

 まだ馬たちは眠そうだったが、素直に従った。


 外はやっと白んできたところだった。

「門は開いているの?」

「通用口を開けてもらうんだ」

「え?」

「朝早く出たい者はいるんでね。身分証を確認して出してくれる。もともと連絡はしていたからな」

「仕事が出来る男なのね」

「ありがとよ。行くぞ、こっちだ」

 入ってきた時と反対側の門だ。

「領都はこっちの方角だな」

「その先は帝都に続いているのかしら」

「そうだな。帝都は帝国の中心にある。ここからだと馬車で一月以上はかかるな」

「遠いのね」

「そうだな。一旦馬を降りろ」

 門が見えて、止まって降りる。


 近寄ってきた門番にパドはギルド証《カード》を見せていた。

「ディア、身分証を」

 言われて身分証を見せた。

「間違いないですね。どうぞ」

 門の横の小さな扉を開けてくれた。

 中にはいると、入ってきた時と同じくらいの距離を歩く。

 そうすると、外側の扉に辿り着いて、そこにいた門番とも同じやり取りをした。

 そこを潜り抜けるともうだいぶ日が昇っていた。

 パドはあたりを警戒しているのか視線を巡らせていた。

「よし、行くぞ。この街道を真っ直ぐだ」

 私たちは馬に乗り、一路、領都を目指した。


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