第18話 夜襲
夜中にドンという音と衝撃が走った。
「な、なに?」
飛び起きて着替える。
冒険者の恰好だ。
荷物は全部魔導収納に入れてあるから、問題はない。
扉を開けて、パドの部屋に行こうとしたら、パドが出てきた。
彼も冒険者の装備を身につけていた。
「無事か?」
「え、ええ」
「この宿は警備がしっかりしているから、こんな派手に襲撃を受けるなんて普通はないんだが。とりあえず、下に行こう」
「はい」
もしかして私の追手?
いえ、もしかしなくてもそうだわね。
こんな高級宿に襲撃をかける馬鹿はそういない。
でも、何故わかったの?
何人も見張りを立てていた?
ドレス姿じゃなくてもわかった?
『送り返すべきね』
「あ……」
「どうした?」
「いえ、あとで」
階段を下りる途中で、武装した宿の警備と出会った。
「パド様、ご無事でしたか」
「ああ。何があった?」
「襲撃です。黒い装束の集団です。今警護の者が対応中です」
「派手な音と衝撃が来たが」
「相手が爆撃魔法を宿に。結界を崩すまでではないですが」
「暗殺集団ぽいが、そんな派手なことをしたのか?」
「結界を破れなかったからみたいです」
二人は下りながら現状を確認していた。
「パド様の泊まる宿に襲撃をかけるとか、馬鹿なんでしょうね」
警護は皮肉気に笑っていた。
「そんな大きな音がしたら、街の警備兵もやってくるのになあ」
「馬鹿でしょうね」
私は二人を追って階段を下る。
一階についたら、外から戦闘音が聞こえた。魔法と剣戟の音。
「ディアは宿の宿泊客と一緒に避難だ」
パドは警備に視線を向けると警備は頷き私の方に体を向けた。
「こちらです」
そこは地下室だった。
すでに避難した客が何人もいた。
「この方で最後です」
「わかりました」
宿泊客を守っている警護の人と宿の従業員、そして宿泊客がいた。
それぞれ固まって、椅子に腰を下ろしている。
重い鉄製の扉が閉められて、静かになる。
宿泊客は10組。商人風の男性たち、富裕層の親子、貴族に見える老夫婦など。
女性だけなのは私一人。
皆、寝ていたようで寝間着に上着を羽織った者ばかりだった。
「どうぞこちらへ」
私が立っていると、宿の従業員……受付をしていた女性が声をかけてきて椅子を勧められた。
「あ、ありがとう」
私は勧められるまま、椅子に座った。
それから息苦しい時間が過ぎる。皆不安そうな表情で押し黙っている。
二時間ほど経った頃だろうか。
警備の声がした。
先ほどの警備の者だった。
「終わりました。開けます」
扉が開けられた。
「襲撃者はすでに街の警備兵に引き渡し済みです。ご安心を」
宿泊客からはほっとしたため息が漏れた。
それから、従業員に誘導されて宿泊客は地下室を出て行った。
私が出ると、パドが待っていた。
「早めに出ることにした」
「わかったわ」
パドと一緒に宿を出た。
宿の外の石畳に亀裂が入っていたり、戦闘で開いたような穴があった。
かなり激しい戦いだった様子が見て取れる。
厩に行き、綺麗に手入れされた馬を見た。厩番が鞍などをきちんとつけて連れてきた。
「艶々ね」
そう言うと馬と厩番が嬉しそうにした。
「飼い葉は譲ってもらってある程度は俺の魔導収納に入っている。容量が小さいがな」
腰のポーチをパドは叩いた。
まだ馬たちは眠そうだったが、素直に従った。
外はやっと白んできたところだった。
「門は開いているの?」
「通用口を開けてもらうんだ」
「え?」
「朝早く出たい者はいるんでね。身分証を確認して出してくれる。もともと連絡はしていたからな」
「仕事が出来る男なのね」
「ありがとよ。行くぞ、こっちだ」
入ってきた時と反対側の門だ。
「領都はこっちの方角だな」
「その先は帝都に続いているのかしら」
「そうだな。帝都は帝国の中心にある。ここからだと馬車で一月以上はかかるな」
「遠いのね」
「そうだな。一旦馬を降りろ」
門が見えて、止まって降りる。
近寄ってきた門番にパドはギルド証を見せていた。
「ディア、身分証を」
言われて身分証を見せた。
「間違いないですね。どうぞ」
門の横の小さな扉を開けてくれた。
中にはいると、入ってきた時と同じくらいの距離を歩く。
そうすると、外側の扉に辿り着いて、そこにいた門番とも同じやり取りをした。
そこを潜り抜けるともうだいぶ日が昇っていた。
パドはあたりを警戒しているのか視線を巡らせていた。
「よし、行くぞ。この街道を真っ直ぐだ」
私たちは馬に乗り、一路、領都を目指した。
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