Grand King ⑨ 2/3
ふと、瞼を開く。
どれくらいの間気を失って居たのだろう。
視界に現実が入り込む。
今見えている物は『天井』だろうか?
今自分が置かれてる状況を把握しようと、私は周囲をを確認する為首を動かした。すると。
「お、気がついた?」
首を動かして見えた先にはレン様の姿が。
そして、レン様は椅子から立ち上がり、何故かこちらに近づいてくる。
推しが一歩二歩三歩と私の至近距離まで少しずつ・・・。
「まっ・・・!まままっ・・・!待ってくださいぃぃっっ・・・!!」
私はレン様が一歩前に進む度に速まる胸の鼓動に生命の危機を感じ咄嗟に手を出し制止した。
「えつと・・・」
「それ以上はダメです!!」
もう一歩前に出ようとするレン様の動作も見逃さず制止した。
「もしかして、まだ・・・」
「いいえ・・・貴方が『轟レン』さん本人だという事はわかってるんです・・・!だから、だからこそダメなんです・・・!」
「緊張しなくていいよ?ここ俺の『PTR』だから俺しか入れないし、セキュリティも厳重だよ」
「ふ・・・ふたりっきり・・・!?レ・・・レン様とふたりっ・・・きり・・・・・・あわ・・・・・・あわわわ・・・・・・」
「あーー・・・ごめんごめん、うそうそー全然マネージャーが出入りすることもあるから」
「ホッ・・・・・・良かった・・・・・・」
「キミ、やっぱ面白いね」
「えっ・・・?」
「外でファンの人達に俺がいる事がバレたら、必ずサイン求めて来たり、頭を撫でて欲しいってリクエストして来たり、みんな近づいてくるわけ。だから、俺から近づいて拒否られたの、はじめての事だからさ」
「ご・・・ごめんなさい!」
「良いんだよ、寧ろ俺としてもやりやすいから」
「すみません・・・」
「なに?」
「出来れば、あと5メートルは離れてくれませんか?」
「」
―――――――――――――――――――――――――――
「それでー、話なんだけどさー」
約10メートル先からレン様が話す。10メートル先のソファに座っている私はコクリと頷き応えた。
「※※※」
10メートル先のレン様が両手の人差し指を交差させるジェスチャーを作りながら何かを口にした。
何と言ったか声が小さくてわからない。
天井と壁が全て白い空間が一瞬にして一変した。
私の目の前に見覚えのある景色が広がる。
「ここって・・・」
「ここは【エリアA No.13】、もしかして、ネットニュースで見た事あるのかな?」
何故今見ている空間に見覚えがあるのだろうと私は記憶を探る。
そして、探った記憶の中から
【エリアAにて18人死亡事件、武力魔法の行使痕跡あり】
という見出しのネットニュースを思い出し、そのニュース記事の映像と今目にしている物が一致しているから、見覚えがあるのはこの為だと理解した。
そして、驚く事にどこからともなくレン様の周りに数十人の人が集まって来た。
まるで、ワープバスでポイントに瞬間移動して来たかのように。
「カメラ起動してと・・・」
手につけたスマートリングを外している。
「えーっと・・・そうか、近づいちゃダメなんだっけ・・・あっ、これ持っといてくれる?」
レン様が近くに立っている青年にスマートリングを手渡した。
そして、次の瞬間―――。
レン様の表情が一変した。
背筋に悍ましい程の悪寒が走る。
そして、恐ろしい殺気を帯びたままレン様は
両手にビリリリ……と【黒い電気現象物】を纏うと
その手で周りの人間に超スピードで手刀を食らわせた。
周りの人間全員が血しぶきを上げながら床に倒れた。
「あぁ、大丈夫。この人達、『本物』じゃないから」
と、返り血を額につけながら、普段通りの表情を見せるレン様は私から見ても、狂気的に見えた。
殺気溢れるレン様の顔は学園ランキング公式戦の【ダンジョン戦】と【VR会戦】で何度も見たこと筈なのに。
今日はいつにも増して怖気を孕んで見える。
ただ、その狂気さを孕んだ顔面こそが、美しく麗しくも写った。




