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第5話 化け狐との馴れ初め

 山の麓の駐車場に辿り着いた。

 運転手は既に馬鹿息子から金を受け取っているので随行していた車に乗って帰るらしい。

 何ならそのままベンツを中古車販売業者に持ち込んで燃費の良い車と交換して来てくれないだろうか。

 まあその辺はそのうち馬鹿息子にでも頼むとして。


「おや、永海さん。もう来たのかい?

 まだ定年までは五年もあるだろう?」


「ああ。予定よりも早く馬鹿息子に追放されちまってね」


「はっはっは!追放住職のスローライフってかい!

 永空君も中々ナウでヤングな事しよるじゃないかい!」


 この爺、育三は定年前に早期退職して退屈だからって金の掛からないネット小説を読み漁ってる口だ。

 その割には全然語彙がナウでヤングじゃないのだが。


「おう。これからうちの寺には数々の災いが訪れるから楽しみにしておけよ。

 ところで山小屋の管理はどうだい?直ぐに住める状態になってるか?」


「もちろんの助よ!そういや小屋でも普通にスマホ使える様になったぞ」


「マジンガー!?じゃあネットで注文した商品とか受け取っといてくれる?」


「一件百ペソで承ろう」


「今ってペソのが高くね?

 もうペソが冗談になる時代じゃなくね?」


 結局荷物一個につき百円で話がついた。

 そして山を囲うフェンスの中に入って。


「自力で山登るのめんどくせぇ。

 何か丁度良いあやかしおらんか?

 乗り易い背中したのが良いんだけど」


 乗り易い背中した奴いるよなぁ。

 絶対に乗り易いんだよなぁ。


『我の背には乗せんぞ。

 お主、早速自重する気が無くなっているな。

 我が遠ざけねば、あやかしは直ぐに寄って来るのだぞ』


 まあ人里ではあやかしが寄って来ない様に化け狐を傍においてた訳だしな。


 俺は子供の頃から、どうやらあやかしってものに好かれやすい体質だったらしい。

 あやかしってのは妖怪とか物の怪の類だな。

 普通の人には見えないもんが見えたり、普通の人ならしない体験をしたり。

 危険な目に会った事は無かったが、兎に角あやかしが傍に寄って来る。


 この化け狐と出会ったのは五つの頃だったか。


『お主、今のままあやかしを傍に置いておったら死ぬぞ』


「えぇぇぇええ!?ちょちょちょっと、勘弁して下さいよぉぉぉおお!」


 なんてベタベタなリアクションは取らなかった気はするが、俺は化け狐のアドバイスを聞いて出来るだけあやかしを寄せ付けないように契約した。

 伸びた髪とか食ってたから五歳以降、俺の髪は一生伸びなかったんだよな。

 大学の頃とかロン毛にしたかったのになぁ。

 まあ今や坊主どころかスキンヘッドだから寧ろ髪を食われるのは有難くて仕方が無いが。


『最近は髪は食っておらんぞ』


「え!?じゃあ俺ってば天然の禿げ頭なの!?」


 衝撃の事実発覚で少しばかり凹んだ俺はベンツに戻ってヤケ酒を飲んだ。

こちらの小説はアルファポリスで開催中の【第7回キャラ文芸大賞】にエントリーしています。

アルファポリス大幅先行公開となりますので、是非そちらもご覧下さいませ。

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