第36話 我が家の雪まつり
「よし!完成したから目隠しをして外に出ろ!」
普通に嫌なんだが。
雪女が張り切って準備した雪まつりの発表会をするらしく、俺に目隠しをしろと命令する。
だが俺は目隠しをしたくないし、何なら寒い夜に外にも出たくない。
クリスマスみたいな一大イベントならばまだしも、雪女の自主イベントで一々厚着して外に出るのは面倒だ。
しかし雪まつりの準備には五子も参加していた。
孫や娘の頑張りを目に焼き付けない爺は、もはや爺の風上にも置けないと、俺は考える。
五子は俺の孫って訳でも娘って訳でも無いんだが。
『幼女に甘いな。生臭坊主』
「その言い方は犯罪臭が漂うから止めてくれる?」
俺は品行方正な生臭坊主なので、犯罪なんかには手を出していない。
特殊な性的趣向も持ち合わせていないので、勘弁して欲しい。
「風邪引かないように厚着するから、ちょっと待ってろ」
何だか長引きそうな気がするので、真冬用の完全防備をしておく。
手拭いを使って目隠しをしたら、五子に手を引かれて縁側で腰を下ろした。
「まだだぞ?まだだぞ?」
雪女の言葉に素直に従っておく。
化け狐は俺の隣にいるな。
こいつの事は目を瞑っていようとも、存在を感じ取る事が出来る。
付き合いの長さもあるが、存在感の大きさもある。
『我は力のあるあやかしだからな』
「そうですねぇ」
それだけって訳でもないんだがな。
まあ別に今言うべき事でも無いから黙っておくが。
「まだだぞ!まだだぞ!」
そんで、これは何時まで待たされるんだ?
もう外に出てから三十分以上は経っている気がするんだが。
こんなに待たせるなら、準備が出来てから呼べば良かっただろうが。
「もう良いぞ!」
永遠にその時が来ないんじゃないかと、そう思い始めた頃に、ようやく目隠しを外す時が来た。
目隠しを外すと、まず見事な雪女の雪像が目に入って来た。
「ん?」
揺らめく火の玉に照らされる庭には、幾つもの雪像が出来ていた。
左から順番に、普通に立っている雪女、椅子に座った雪女、雪玉を投げる雪女、雪玉に当たった雪女、元気に走る雪女、雪上に転がる雪女、ガッツポーズをする雪女、笑顔の雪女、ウインクする雪女。
何だこの雪女のゴリ押しがしつこ過ぎて、ちょっと不快な雪女まつりは。
「春が来て私がいなくなっても、、、忘れないでくれよな、、、」
そう言って、何だかしめやかな雰囲気を出した雪女だが。
「お前って春が来ても、暑いからって冷凍室に引き籠るだけだろ?」
「うん」
「自分より雪が似合う存在はいないとか考えて自分の雪像ばっかり作っちゃったのか?」
「うん」
「もう、部屋に戻って良いか?」
五子に手伝わせてまで、一日掛かりで自分の雪像を作ってたってのは相当なナルシストっぷりだ。
流石に雪の専門家である雪女が作っただけあって、雪像の出来は札幌で開催される雪まつりの作品よりも精巧なんじゃないかと思うけれども。
そろそろ体の芯まで冷えて来たので、風呂にでも入って暖まりたい。
「待ってくれ!作ったのはこれだけじゃないんだ!
五子と一緒に作った自信作だけ見てくれ!」
雪女は部屋に戻ろうとした俺を制止すると、何らかの力で自分をモデルにした雪像を次々に壊し始めた。
そして雪の中からせり上がる様にして大きな雪像が現れる。
それは、我が家のあやかし達が全員集合した雪像だった。
河童も雪女も座敷童も楽しそうに微笑んでいる雪像の中心には俺がいて、俺の隣には。
「こういうのなら来年もやっても良いかもな」
俺は一言呟いて不服そうな顔をしている化け狐の頭を撫でた。
こちらの小説はアルファポリスで開催中の【第7回キャラ文芸大賞】にエントリーしています。
アルファポリスでは既に完結済みですので、是非そちらもご覧頂き、面白いと思ったら【投票】をお願いします。




