第35話 張り切り雪女
「嫌だ嫌だ嫌だ!」
今日は朝っぱらからあいつが騒がしい。
あいつって誰かって?
見た目は美人なのに中身が残念過ぎるあいつだよ。
「嫌だ嫌だ!春なんて来なければ良いんだ!」
主に雪国の住人から顰蹙を買いそうな発言だな。
雪女の全員が全員そうではないのだろうが、うちに居付いている雪女は尋常じゃなく熱さに弱いらしい。
秋でも文字通り、キンキンに冷やした部屋から出て来なかったぐらいだから、相当だろう。
その割には震々を連れて夏の間にうちまで辿り着いたんだから、相当に気合いの入った雪女なのだが。
そう言えば最近震々見ないけど、何処行ったんだ?
もし馬鹿息子が来た時について行ってたら、死ぬほど面白いんだけどな。
あいつ暖かくなったら様子見に来るって言ってたから、その時が正解発表になるだろう。
今日は一日飲んで、まったりすると決めているので、雪女に構っている暇は無い。
酒を飲む日は実質的に多忙なのだ。
「去り行く冬の思い出に雪まつりをしよう!」
俺と化け狐の視線が雪女に向き。
俺達は視線を戻して、飲みかけのウイスキーの蓋を開けた。
「去り行く冬の思い出に雪まつりをしよう!」
いや、聞こえてなかった訳じゃねぇから。
聞こえた上で、聞く耳を持たなかっただけだから。
同じ台詞を二回言っても、、、。
変わらない事って、あるんだぜ。
「しよう!」
ちぃ!
雪女の遊び仲間筆頭、五子が反応してしまった!
「わかったわかった。で、雪まつりって具体的には何するんだよ?」
俺が筆頭だが、基本的に皆五子には甘い。
単なる雪女の提案だったなら適当に流していたところだが、幼女である五子が乗り気な以上は、付き合ってやるのが大人ってもんだ。
実年齢は俺よりも上だろうけれども。
「沢山の雪像を作ってな!
それを皆で見る斬新な祭りだ!」
「ほぼ札幌でやってるやつだな」
「なっ、、、早速パクられたのか!?」
「今日思い付いたならパクったのはお前だよ」
俺の指摘があまりにも衝撃的だったのか、三十分も部屋に引き籠った雪女。
しかし中身の残念さが良い方に転んで不都合な事を全て忘れたのか、猛烈な勢いで外に飛び出すと何やら作り始めた。
「五子も手伝いに行くか?」
「うん!」
五子も外に飛び出して行って、二人でキャッキャする声が聞こえるが、俺は敢えて部屋に籠っていようと思う。
別に寒いから外に出たくないとかではなく、今回は観客として、完成した作品を見る役割に徹する為だ。
決して寒いとか、暖かい部屋で飲んでたいとかではない。
『面倒なのだろう?』
「五子を見てるのは癒されるから良いんだが、雪女がちょっとな」
『冬はあやつの季節だからな』
「だとしても張り切り過ぎじゃね?」
結局雪女は夜まで雪まつりの準備をしていた。
半端に外に出なくて本当に良かったと思っている。
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