第13話 存外可愛い
今年の夏はカリフォルニアの様にカラッとした暑さになるらしい。
何て事は湿気大国日本に住んでいたら起こる筈など無く、今年も日本列島はじめっとした猛烈な暑さに襲われている。
「いやぁ、日本の夏ってのはどうしてこうも不快なんだろうな」
『お主、今の言葉を他の人間に聞かれたら刺されるぞ。
日本全国何処へ行ったとしても、これほどに過ごしやすい場所は存在していないだろう』
化け狐の言う通りか。
真夏の暑さを前にして北の方から雪女が到着したので、家の前の池を一部凍らせて貰って外の気温を下げている。
打ち水もしばらく凍った状態でその場に止まってくれるので存外涼しい。
それに屋敷の襖を一ヶ所開けておけば中から冷気が漏れてくるからな。
「暑いから閉めてくれ」
その冷気の大本から少しばかり文句は言われるけれども。
雪女は暑さに弱いから夏の間は出てこない筈なんだが、日が出ていない夜の内に移動して我が家まで辿り着いたらしい。
暑さ対策で震々を背負って来たのにはちょっとばかし驚いたが。
あやかし同士でも組み合わせによってシナジーがあるのかもしれない。
あやかシナジー。
おっとこの寒さは俺の背にも震々が憑いたのかもしれない。
「今日はNamzonで注文した荷物が届いたらしいから下まで取りに行くとするか」
『また我に乗るつもりか?
全くもってお主は何時まで経っても我頼りではないか』
やれやれと化け狐が首を横に振る。
確かにガキの頃から化け狐に頼りっぱなしなのは確かだがな。
「そうだな。だったら今日はミミズに乗ってみるか。
乗せてくれるか?」
何匹もいる加夫羅太伊の中でも一番でかいのを撫でて問い掛けると頭を下げて了承してくれたので背中?胴体?に乗る。
『我が乗せてやると言うのに。
ミミズなんぞに乗りおって』
何故だか機嫌の悪い化け狐が並走する形で加夫羅太伊が山を這い下りる。
化け狐と比べて速度は出ないが顔面が変形しない丁度良い速さだし、グニャグニャした体が股や尻にフィットして存外乗り心地が良い。
山を移動する時の騎妖としては理想的かもしれない。
『この我を差し置いて生意気な』
化け狐の機嫌が悪いので今回限りになるかもしれない。
兎にも角にも中々に快適な陸の旅で麓に着いたので、爺の家を訪ねて段ボールの中身を鞄に詰めた。
今後は納屋を荷物置き場にするから態々訪ねて来なくても良いと鍵を受け取った。
俺のベンツに乗って町へ繰り出すので忙しいらしい。
帰りは機嫌の悪い化け狐の背中に乗る事にすると。
『ふ、ふん。我ではなくミミズを選んでおいて何を今更。
ま、まぁお主がどうしても我の背に乗りたいと言うのなら乗せてやらない事もないけどな』
とか言ってツンデレを発揮していた。
普段尊大な空気を醸しているが、存外可愛い奴でもあるのだ。
『誰が可愛いだと?偉大な我に対して失礼であるぞ!
ま、まぁお主に可愛いと言われて嫌な気はしないがな』
存外可愛い化け狐である。
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