第12話 家庭菜園を作ろう
「お前らってやっぱりキュウリが好きなの?」
家の庭に池が出来て、そこに河童が住み着いた。
期せずして水場が出来てしまったので、今度は池の水を利用して何か出来ないだろうかと考えた。
そして辿り着いた結論はスローライフと言えばこれ!とでも言うべきあれ。
そう、家庭菜園である。
家庭菜園を作るならば、どうせなら野菜を食う奴が喜ぶ野菜を育てたい。
そんな訳で河童にキュウリ、好きか?と聞いているのだが。
お前らの頭の中では今デスメタルでも流れてるのかな?ってぐらいにヘッドバンキングしている。
「畑作るか」
こうして追放住職のスローライフらしいスローライフが遂に開幕をしたのであった。
実は家庭菜園はその内するだろうと考えて爺には農具を借りられる様に手配はしてある。
なので面倒だがもう一度山を下りなければならないのだがな。
「面倒だから明日で良いか。せかせか生き急いでたらスローライフにならんからな。
お前らも飲むぞ」
キュウリは確か四月辺りに種を撒くはずだが、今はもう七月。
今から種を植えても収穫が出来るかはわからないのだから、一日二日畑作りが遅くなったからと言って誤差でしかないだろう。
そんな事よりも魚が釣れたので囲炉裏で焼いて食いたい。
食った後は骨酒も楽しめるからな。
「くあぁ、うめぇ!」
『うむ、悪くないぞ』
飲んで食って飲んで飲んで。
眠くなったら泥の様に眠って翌朝。
家の横に広めの畑が出来上がっていた。
「でっけぇミミズだなぁ。
加夫羅太伊ってやつか?」
犯人は恐らくニシキヘビみたいにでっかいミミズだろう。
これが土中をうねうね動いて畝を作り上げたのかもしれない。
『結局ダジャレか』
「今のは狙ったので認めざるを得ない」
俺も心は永遠の十七歳だが、体は十二分に爺だからな。
ダジャレの一つや二億個ぐらいは出てしまってもやむを得ないだろう。
「それにしてもだ。
あやかしって万能過ぎないか?
加夫羅太伊って単にでかいミミズだろ?」
『それだけお主が愛されているという事だ。
料理が悲惨な妻だって愛する夫の為ならば料理の勉強をして出来るようになるだろう。
つまりはそう言う事だ』
「何だその例え。お前は一体何キャラなんだよ」
化け狐がふいとあちらを向いてしまったので、案外触り心地の良いミミズを撫でてやってから、知ったかで土を食ったらクソ不味かったので吐き出した。
家庭菜園すら素人の俺が土を食って良い土かどうかなんて判る筈がなかった。
口直しに酒を飲んでから農具を持って来て二度三度と鍬を振ったら腰が痛くなった。
なので俺の畑作りはこれで終わりだ。
真面目に家庭菜園作って自給自足してる奴らってスローライフしてないだろ。
俺は真面目にスローライフをする所存なので、あやかしが手伝ってくれるのならば任せてしまって楽をしようと思う。
だってそれが本当のスローライフってもんだろう。
『それは単に怠惰な生活なのでは?』
それを言っちゃあお終いよ。
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