第11話 家の前に河童が住み着いた
随分と武家屋敷らしく仕上がった家を出たら目の前に池が出来ていた。
うん、意味わからんだろ?
俺にも意味はわからん。
『梅雨の時期だからな。
そんな事もあるだろう』
「ねぇわ!海外から精霊の類とか来てねぇよな?
ウェンディーネとか」
『来る筈がなかろう。
あれらが何かやったのではないか?』
化け狐がそう言うと、池の中からザバンと小柄な緑色のあいつが現れた。
ファンタジー脳だったら小柄で緑と言えばゴブリンだろうが日本にはゴブリンなんてあやかしはいない。
ヨーロッパの方にはいるかもしれないけどな。
話が逸れたが日本で水場にいる小柄な緑色と言えばやはり河童だ。
頭には白い皿。
背中には亀の甲羅みたいなのを背負っている。
これサングラス掛けて白髭を着けさせたらすぐさま有名キャラクターのコスプレが出来そうだよな。
そしてアーティスティックスイミングの如く8人もの河童が池から出て来て後頭部を擦り、全員揃ってまたオレ何かやっちゃいました?感を出してきた。
きっとこいつらは何かをやっちゃった事に気付いてはいるんだろうが、俺が若干戸惑っている原因については気付いていないのだろう。
「ま、庭に池があるのは武家屋敷のグレードが上がった感があるから寧ろありだな」
『うむ、風情があって良いではないか』
あやかし関係はさっさと受け入れてしまうのが一番だ。
そもそもこういう濃縮した不可思議体験をしたくなければあやかしを遠ざけておけば良いのだ。
面白いからと俺が望んで傍に置く事を決めたのだから、この山の中では放任主義で好きにさせてみるに限る。
「お?この池魚もいるじゃねぇか!
釣って塩焼きにしてつまみにしようぜ!
あぶねぇ。危うく魚と肴でクソつまらんダジャレを言い掛けてしまったぜ」
『他に誰も人がおらんのに気にし過ぎではないか?』
そうは言ってもスベったなって空気になるのが嫌なんだよ。
釣りをする道具が無いので一度山を下りて爺に道具を借りて来た。
いつまでも借り物を使うのも気分的にはよろしくないのでNamzonでカーボンの釣竿と釣り針やらウキやらの道具を一式注文しておいた。
釣り堀で釣りをするイメージなのにカーボンの釣竿が必要なのかは知らないし知るつもりもない。
なんか素材がカーボンって格好良いじゃないか。
子泣き爺らしきあやかしは姿を隠してしまったので乗るのは諦めて、化け狐の背に乗って屋敷に戻る。
餌はミミズか幼虫かなと、その辺の木から虫の幼虫を捕まえて餌にして釣り糸を垂らした。
「釣れねぇなぁ」
『そう焦るものでもあるまい』
俺がくあぁと欠伸をすると化け狐も釣られてくあぁと欠伸をした。
あやかしは寝ない筈なんだが、一緒にいる時間が長いのでどうにも行動が似てくる。
「酒でも飲みながら待つか」
そう言って酒を取りに行こうとした時。
『おい、引いているぞ』
「マジか。おお?これは大物だぜ!」
かなり竿がしなっているのと手に感じる重さで大物が掛かった事を確信してテンションが上がる。
糸自体長い訳ではないので切れなければ直ぐに釣り上がる筈だ。
俺は気合いを入れて竿を立て、ググっと一気に竿を引いて。
ザバァン!
後頭部を擦っている河童を釣り上げた。
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