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キングス・ワールド  作者: 昂 あきら
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第八話 邪悪の蔓延

【風の領域】鬱蒼とした果てしなく続く森の前に広い広場があり、この美しい景色を見下ろす比類のない巨大な竜がいる。「彼ら」は普通の竜ではない。


 なぜ「彼ら」と言うか、それは竜には頭4つもあり、それぞれ名前も性格も考えも違うからだ。その太い首の下にある4つの特大の巨大な爪がこの重い体を支え、太く長い尾はまるで城壁のようだ。「彼ら」は全身の色がシルバーメタリックであり、その色は創造神殿を守る剣背龍を思い出す。背中にある12本の銀の剣とよく似ている。となると、「彼ら」は竜の血に覆われているだろう。


 竜の鋭い目は森の隅々まで見回す。巨大な体の周りにいくつかのキャンプがある。護衛ではなくこの場にいるエルフ達はまだまだ見習い中だ。戦士たちは話したり、のんびりと歩いたり、魔法や武器を練習したりしている、たっぷりと平和を満喫しているようだ。


 それと異なるのは僧侶たちだ。一刻も早く修行をするために祭壇で祈りの呪文を唱える、周囲の森から豊かな魔法の力を引き出す。


 一方、薬剤師たちは、蜂が花粉を集めるように植物の一部を採集しているが、それと同時に呪文を植物にかけている。そうすると採集された後の植物は緑色の光が放ち、元の状態に戻る。ここは自然への愛を感じられる静かな場所だ。




 突然、冷たい空気が森から飛び出し、植物は氷で凍りそうになった。兵士たちは頭を向け、冷たい空気が飛び出す方向を見つめる。


 このような突発状況でも薬剤師たちは呪文を歌い続け、薬草を解凍している。竜の最も前にある頭は戦士と同様、冷気の方向を見つめているが、他の3つの頭はこの際に何かを囁く。


 グラシューが森から出て、司祭たちは祈りの儀式を止め、他の人と同列に氷帝に左手を出しエルフ部族のお礼をした。グラシューもポールトル族の敬礼を返した。そしてグラシューは竜に話しかけた。


「風帝、緊急事態だ、ソロムネスは封印の深淵から解放される。」


 この瞬間、風帝と氷帝を除く全員気が動転している。


「ドムだ。奴は間違いなく「蛮炎の軍団」と逆世の悪魔を率いて闇の領域に攻撃するだろう。その時、前回の大戦からこれまでの努力はすべて無駄になってしまう。光帝のカルロ・ジックはすでに創世帝の命令を受け炎の領域のドムと逆世から塵世に通るゲートを探すと任されたが一時的にブロックする。同時に、三大領域の力を合わせて闇の領域に行き新しい防衛線を構築しよう。」


 風帝の前の頭が話す。


「封印の深淵の現地に新しい防衛線を構築するのはいいと思うが、余力があれば光帝のほうにも援軍を遣るとよいかもしれない。」


 グラシューはうなずいた。


 風帝は続いて話す。


「しかし、創世帝の命令は如何か。」


「時間がないため、僭越ながら余は判断を下した。」


 風帝は明らかに少し不満で反論をしたいが、頑固なポールトル族の王に多言する必要がないと判断し黙った。


「では、お互いの軍団を召集し、闇の領域でまた会おう」


 グラシューは風帝にお礼をしたあと魔法陣で氷の領域に戻った。


 その後、地面から人と同じ大きさの黒曜石のようなものが突き出し、その名から声が再生された。


「風帝、今の会話により、やはり先に創世帝に事態を知らせたほうがよろしいかと。」


「そうだな、逆世の滅世帝すら封印された今、ドムの魔力ではかつて大戦中に召喚された悪魔ほど強くはないと思うが、破壊の力が持つ悪魔を相手にして油断はできない。もう一人か二人のドムと同じ強さの敵だけでも厄介だからな。もう、この土地に二度と戦争の火を持ち込みたくない。」


「御意。ではすぐに創世帝まで伝言させる。」


 その黒曜石は地下に戻った。風帝は遠くの赤い川を見ていて何かを考えているようだ。


 だが、その時。




【炎の領域】ドムの咆哮は谷の中でこだましていた。


「もう手遅れだ!塵世の生き物たちよ!魔法の輪が広がり、世界と世界の間のトンネルが開かれた!逆世からの裁きを待っていろ!ハ!ハハ!」


 ドムはすでに祭壇の頂上に登り、頭上に形成された非常に暗い空間の亀裂に最後の破壊の力を発射した。破壊の力がその亀裂に注入された途端、星全体が突然爆発したような音を出し、ドムの大笑いと混ざり合った。


「滅世帝・ソロムネスの力に惹かれよ、飢餓の悪魔!魔力の経脈に至上の魔力が跳びはねる快感を楽しむが良い!無双の戦果に感心せよ!貴様らの主人は深淵に投獄されている。われは炎帝・オルカ・ドム!貴様らを呼んでいる!来たれ、罪悪よ!目覚め、悪魔よ!生き物の嘆き声の中で貴様らの暴威を見せてやれ!」




 空間の割れ目からこの星だけでなく、炎の領域全体を襲って侵食するような黒い嵐が広がった。空に黒い稲妻と炎が空中で激しく踊り、その後、徐々に拡大する割れ目から順番に四人の人物が降臨した。




 最初の人物は全身茶色の岩で構成されている。そして胸の赤い芯から祭壇まで「カチカチ」と真っ赤な液体が流れだした。目から放つ赤い光は人の魂を飲み込むようだ。たくましい体は嵐の中でも「カラ、カラ」という恐ろしい音が聞こえる。腕は黒い破壊の霧によって形成された鎖で結ばれ、体に纏う魔力はドムより上回る。




 二人目は人型というより玉に近く、紫の鎧とローブに包まれていたため、顔も体も見えず、ただ目の前の世界を観察しているかキョロキョロと見回す緑色の目がかすかに見える。とても不気味だ。不思議に紫の鎧から力強い竜の魔力が感じられる。魔力は今の石の男よりも強い。




 三人目の人物はややひ弱で、彼の魔力はドムよりも弱いと感じられる。灰色のローブを着ていてローブと同じ灰色の短い髪はばらばら風に吹かれる。顔に右から左に3つの傷跡があり、その黄色い目はすべてを呪っているようだ。背中に自分の身長よりも高く、黒い鎌を持っている。




 最後に降臨した者の姿は全身が真っ黒で、細長い緋色の目だけ色が違う。背中に巨剣を負っている。その巨剣から感じられる魔力は計り知れない。まるで破壊の力の具現化となる黒い霧の源のようだ。ただし、意外なのは、塵世に置いて一般人でも少し魔力を持っているが、この者の全身に魔力を全く感じることはできない。この魔法の力で開かれた宇宙間のトンネルを通して、少なくとも全身に魔力の痕跡を見つけることができるはずだが、感知できる魔力はすべて巨剣から発散している破壊の黒い霧からだ。さらに、彼の目と合うと、心が波立ち騒いで落ち着かなくなる。そして体の震えを止められず、最終的に神経崩壊してしまう。


 ドムは斧に寄りかかり、石の怪物を見つめた。これで彼の心の恐怖はわずかに和らいだ。三人の悪魔の体と巨剣から発せられる魔力は、掃き、吐き出し、侵食する。




 最初に出てきた石の怪物は口を開けて胸から声を出した。


「ドム?このトカゲの名前か。お前が俺たちを呼んだか?お前はまだソロムネスの力を持っているか。ん?凡人」


 ドムは石の怪物の非常に傲慢な態度に憤った。炎が混ざった熱気は彼の鼻から噴き出した。


「ホー-、そうだ、われは滅世帝様を救うために呼んだ、われと一緒に来よう。」


 石の怪物はドムを頭から足までじっくりと見たあと、左手を上げてドムの前にある黒い炎を誘爆し、ドムを打ち飛ばした。


 ドムはすぐに翼を広げ、口から魔力に混ざる血を吐き出した。ドムの惨状を見て、石の怪物は笑って口を開け、大地はその声で震えて引き裂かれた。


「お前は不満を表明したか、凡人。この一撃でお前と俺の実力差を知らせてやる。ソロムネスがどこにぶち込まれたか早く教えろ!」


 ドムはグラシューとの大戦終えたばかりで魔力も怪我もまだ全快していないため、ここで怒り出しても意味がないとドムが考えた。


「滅世帝を救い、更なる破壊の力を得た後また貴様と戦う」


 考えを止め、天誅の炎で自分の怪我を癒した後、ドムは再び口を開けた。


「では、われらはすぐに滅世帝がいる闇の領域に向かおう!」




 しかしその瞬間、無数のビームが空に現れ、流星群のようにどんどん明るくなって降り注いだ。石の怪物はその流星群を指さしてドムに質問を投げた。


「あれはなんだ?」


 ドムは不吉な笑顔で答えた。


「能力を過大評価された隠光の軍団だ。」


 石の男は笑った。


「つまりそれは敵だな、よく来た!さて、少し体を動かせてくれ。」


話した後、石の怪物は体を動かしゴロゴロと音が鳴った。




 二人目の人物はそっと微笑んだ。


「マルフォン、忘れずに残しておいてください。この世界が私にどれほどの楽しみをもたらすことができるか知りたいのです。」


 マルフォンは再び笑った。


「ザンカフロス、そっちこそ俺の楽しみを奪うなよ。さぁ来い、光よ、俺らの食料となれ。」




 しばらくすると、ビームは星に当たった。光エネルギーの巨大な球を形成し、ピラミッドと地面を砕いた。


 その後姿を現した光帝・カルロ・ジックは空で下の祭壇の残骸を見つめ、眉をひそめた。


「悪魔…私たちは一歩遅れているようだ。順番からみて最初に来た悪魔は最も弱いらしいが、それでも一撃でドムを飛ばした…事態は想定よりかなり乖離している、これは私だけでは十分ではないだろう。できるだけ悪魔たちを牽制し、闇の領域にテレポートして防御線を強化しよう。伝令兵!すぐに創世帝に報告!」

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