第七十話 戦うために生まれて
私は自分の背丈よりもずっと高い岩の遮蔽物に身を預け、その陰で、ゆっくりと掌の中に光の魔力を溜めていた。
先ほど立てた計画通りなら、まず右側の岩の遮蔽物を回り込むようにして、少しずつファロへ接近する。できれば彼の側面、あるいは背後まで移動し、そこから光弾を連続で撃ち込んで、一気に彼の護盾の強度を削る。
その後、もう一度岩の陰へ身を隠し、魔力を溜め直して、最大威力の光弾を一発用意する。
最後は遮蔽物を回り込み、正面から彼へ突撃して、至近距離で一撃を叩き込む。
……
魔力はもう十分に溜まった。
まずは、普段の訓練で使っている程度の光弾が、護盾にどれほどの影響を与えられるのか試してみよう。
私は岩陰からそっと顔を出し、向こう側をうかがった。
対面には、まるで動きがない。
よし。ならば計画通り、まずは右側の遮蔽物まで素早く移動する。
だが、私がその岩陰へ飛び込もうとした瞬間、一発の光弾が私の護盾をかすめて飛び抜け、そのまま封印術の施された壁に命中した。小さな爆発が、壁面で弾ける。
ファロのやつ、最初からあれほど威力のある光弾を溜めて、私が動く瞬間を待っていたのか。
私は自分の護盾を確認した。
さっきより、ほんの少し小さくなっているように見える。
まさか、先に被弾したのが私だとは。
私は悔しさに、少し歯を食いしばった。
幸い、あの一発は正面から命中したわけではない。もしまともに受けていたら、護盾は一気に大きく削られていただろう。
いずれにせよ、私の移動経路はすでに見破られた。先ほどの計画を、そのまま続けるわけにはいかない。
次はどうするべきか。
さっき光弾が飛んできた位置は、おそらく最も遠い場所にある、あの一番大きな岩壁の左後方だ。
あいつ、よりによって最大の岩を隠れ場所に選んだのか。
そうなると、こちらが先に魔力を浪費して岩を砕き、それから攻撃するという手は使えない。
どうする。
このまま膠着すれば、最後に負けと判定されるのは私かもしれない。
なにしろ、私の護盾はすでに彼のものより少し削られているはずだ。
落ち着け、ペラルド。
私は深く息を吸った。
まず、彼が本当はどこに隠れているのかを見つけなければならない。
そのためなら、もう一度被弾しても構わない。
ただし次に動く方向は、今の位置から近く、すぐに身を隠せる岩を選ぶべきだ。遠くにある大型の遮蔽物を目指すのは危険すぎる。
なら、まずは右前方で一番近い岩の陰へ飛び込む。
私はわずかに腰を落とし、一瞬で駆け出せる姿勢を取った。
そして私が飛び出した瞬間、また一発の光弾が岩の向こう側からこちらへ飛んできた。
幸い、その一発も私の護盾をかすめただけで、正面からは命中しなかった。
ファロのやつ、普段の授業で練習している時は、あまり命中精度が高くなかったはずなのに……
まさか、今日私と戦うために、特別に訓練してきたのだろうか。
ただ、今度は光弾の飛んできた方向を特に注意して見ていた。
先ほどと同じく、左側からだ。
次は、左前方にある岩の陰へ移る。
あの岩は今隠れているものより少し大きい。私の体を完全に隠すには十分なはずだ。
そして走り込むと同時に、彼が先ほどいた方向へ二発の光弾を撃つ。
当たるかどうかは重要ではない。
私が無事に次の岩陰へ到達できれば、それでいい。
用意、走れ。
心の中で短く数え、私は一気に飛び出した。
走りながら、岩の左側を狙って威力を抑えた光弾を二発放つ。
光弾は岩に命中し、細かな石粒を飛び散らせた。
私が新しい岩の後ろに身を隠し終えた頃、ようやくファロが私の位置へ光弾を放った。
その光弾は岩にまともに命中し、表面に走った亀裂が、側面まで伸びていく。
あんな一発を正面から受けるわけにはいかない。
そうなれば、この後の戦いは一気に厳しくなる。
それに、ここにも長く留まれない。
もし彼が亀裂を狙って攻撃を続け、この岩が砕ければ、私は終わりだ。
今すべきことは、こちらから彼のいる位置へ連続で攻撃を加え、私の方を狙い続けられないようにすること。
そのうえで、彼に最も近い岩陰まで移動する機会を作る。
本当は、もっと魔力を温存して、楽に勝つつもりだった。
だが、どうやらそうはいかないらしい。
私は再び魔力を溜め直し、彼がいると思われる方角へ連続して光弾を放った。光弾は彼の隠れている位置の周辺の岩を打ち、表面を削り、凹凸だらけにしていく。
ファロもまた、数発の光弾を撃ち返してきた。
しかし、私が狙っているのは、まさに彼が光弾を撃ってくる位置だった。
今度は、こちらが主導権を握っている。
彼はもう、先ほどのように正確に私の位置を撃つことができない。
そろそろ移動する頃合いだ。
私は今の岩陰から素早く離れる直前、威力をやや高めた光弾を一発撃ち込んだ。
光弾が岩に命中し、煙のような粉塵が舞い上がる。
彼の咳き込む声が聞こえた瞬間、作戦がうまくいったことを確信した。
これで彼は、私がすでに位置を変えたことに気づかないはずだ。
このまま大岩の前側をゆっくり回り込み、彼の背後を取る。
私はできるだけ爪先に重心を乗せ、足音を抑えながら素早く岩へ近づいた。
今、私とファロの間には、この大きな岩一つしかない。
その時、光弾が私の先ほど隠れていた岩を撃ち砕いた。
よし。
どうやらファロは、まだ私がそこにいると思っている。
私は岩の縁に沿って、ゆっくりと後方へ回った。
そして、ファロの姿を見つけた。
彼は片手で岩に触れながら、緊張した様子で前方を覗き込んでいる。
その手の中には、まだ一発の光弾が集められていた。
ふふ。まさか、私がもうここまで来ているとは思っていないだろう。
私は得意げに、手の中の光の魔力をゆっくり最大まで高めた。
この一撃で勝負を決める。
だが、その瞬間だった。
戦闘場の外から、オスワルドの声が飛んできた。
「ファロ! この田舎者、早く後ろを見ろ!」
ファロは勢いよく振り返り、魔力を溜めている私を見た。
おのれ、オスワルド……!
こいつ、対戦中の者に助言するなんて、明らかに規則違反ではないか。
仕方ない。今すぐ撃つしかない。
私はファロへ向けて光弾を放った。
光弾は彼の胸元に直撃する。
ぱん、と音が鳴った。
彼の護盾は、今にも砕けそうな水晶球のように、表面へ淡い光を広げた。
もしオスワルドの声がなければ、あと一、二秒だけ魔力を溜められていた。
そうすれば、あの一発でファロを倒せたはずなのに。
今は急いで隠れなければならない。
この状態で私が撃たれれば、こちらもかなり危うい。
ファロは慌てて私へ数発の光弾を撃ってきた。
そのうち一発だけが私の護盾をかすめ、残りはすべて壁へ飛んでいった。
私の魔力にはまだ余裕がある。
だが、この先はどう戦うべきか。
彼はおそらく、こちらへ突っ込んではこない。
なにしろ、彼の護盾は今、私の一発で砕けるほど脆くなっているはずだ。
もう一度、背後から奇襲するか。
いや、その手はもう通じない。
今後、彼は必ず前後を常に警戒するだろう。
それなら、正面から一気に飛び出し、彼を狙って撃つ。
確実に命中させることを優先するべきだ。
私はやや大きめの光弾を練り上げた。
大きさだけで言えば普段のものよりずっと大きいが、魔力の密度は先ほどの一発には及ばない。
しかし、命中率をできる限り高めるなら、今は密度より体積の方が重要なはずだ。
太陽神よ、どうか、私に成功を!
私はそのまま、正面へ飛び出した。
予想通り、私が遮蔽物から出た瞬間、ファロはすぐに数発の光弾を撃ってきた。
しかし私は、あえて姿勢を低くしていた。
どの光弾も、私に正面から命中することはなかった。
そのまま私は一気に力を込め、彼の目の前まで駆け込んだ。
ファロの目に浮かぶ恐怖を見た瞬間、私は腕を振り抜き、手の中の光弾を彼の体へ直接投げつけた。
轟、と爆発が弾ける。
ファロの護盾は完全に砕け散り、彼自身もその衝撃で地面へ倒れ込んだ。
よし、危ない場面はあったが、私は学院での初戦を無事に勝ち取った。
ただ、あのオスワルド……
いつか、必ず話をつけなければならない。
「よろしい。勝負ありです。両生徒は、そのまま戦闘場の外へ戻ってください」
レオンはほかの生徒たちとともに拍手を送った。
導師は、オスワルドについて何も言わないのだろうか。
さっきのは、明らかに規則違反だったはずなのに……。
「ペラルド、すごかったな」
ファロが駆け寄ってきて、私の肩を軽く叩いた。
どうやら、先ほどの魔力制御はうまくいっていたらしい。彼に怪我はなかったようだ。
「ありがとうございます、ファロ。とても良い戦いでした」
ファロは、私が思っていたよりもずっと強かった。
最初の対戦相手として、彼は本当に優秀だったと思う。
「では、次の対戦に移りましょう。オスワルド対セオドール」
あの嫌なやつと、もう一人の貴族の対戦か。
それなら、しっかり見ておかなければならない。




