第五十九話 黒髪
私は両手で剣を掲げ、身を屈めて力を溜めた。光の魔力を両腕へ注ぎ込み、さらに両手を通して、その魔力を剣の刃へとまとわせていく。
そうしなければ、スレーおじさんの聖光の護盾を斬り開くことなど、到底できない。しかも、彼が今展開している護盾の強度は、普段の戦闘時の十分の一にも満たないらしい。それでも私にとっては、これが一度に注ぎ込める最大量の魔力だった。
私は一歩踏み込み、まず正面から剣を振り下ろした。続けてその勢いのまま右へ足を運び、横一閃に斬り払う。
しかし、視界の端で見えた結果は、やはり同じだった。
二度の攻撃は、どちらもあの光の護盾を切り裂けていない。刃が護盾に触れた瞬間、まるで弾力のある球の表面を斬ったかのように、あっさりと弾き返されてしまった。
私はひどく落ち込んだ。
スレーおじさんは言っていた。私がこの光の護盾を斬り開けるようになるまでは、次の段階の知識は教えない、と。
光族が最も重んじるのは、貫通力である。それは光の魔力そのものの特性と同じだ。十分な攻撃能力がなければ、どんな相手も恐ろしく、到底勝てない存在に見えてしまう。
その時、背後からハンクおじさんの声が飛んできた。
「ぼんやりするな!すぐ次の攻撃を準備しろ!一回で斬れないなら、何度でも試せ!」
その隣に立つ老執事ドワインも、すでに半ば嗄れた声を気にすることなく、続けて叫んだ。
「坊ちゃま、剣身にまとわせている光の魔力の精度がまだ足りません! もっと精神を集中なさいませ!」
誰かがそばで声をかけ、助言してくれるのは、もちろんありがたいことだ。
けれど、私は本当に大きな重圧を感じていた。
とはいえ、今はほかのことを考えている時間などない。
実戦であれば、これほど長い準備時間を与えてくれる相手などいるはずがない。それでも私は、ドワインの言葉に従い、できるだけ意識を集中させた。全身で、自分の魔力核の内側でうねる魔力を感じ取ろうとする。
どうやら、私自身の魔力量は、かなり満ちているらしい。
ならば、次の一撃では、さらに多くの魔力を両手へ注いでみる。
……うまくいった気がする。
やはり今の段階では、準備時間が長ければ長いほど、私はより多くの魔力を両手へ集められるようだった。両手からさらに刃へ移す作業は、まだ感覚に頼るしかない。それでも、「魔力を高める」と一心に念じれば、その過程自体も少し速くなるらしい。
もう一度だ。
ただし今度は、できるだけ先ほど斬りつけた位置を狙う。
私は目を細め、護盾の表面に傷が残っていないかをよく観察した。
あるような、ないような。
……仕方ない。
さっき当たったはずの場所を、大体の感覚で狙う。
行け。
私は再び剣を掲げ、前へ駆けた。今度は突きを選び、魔力をできるだけ剣先へ集中させる。
鈍い音が響いた。
剣先は、護盾を貫いてはいなかった。
けれど、先ほどのように弾き飛ばされもしない。剣先はそのまま光の膜の中へ食い込み、まるで護盾そのものの隙間に挟まったかのように止まっていた。
これは……護盾を破ったと言えるのだろうか。
私は顔を上げ、護盾の内側にいるスレーおじさんを見た。
彼は両手を腰に当て、にやりと笑っただけで、何も言わない。
どうやら、まだ駄目らしい。
だが、今ここで剣を引けば、また最初から魔力を凝縮し直さなければならない。それなら、このまま一気に、剣先へ魔力を注ぎ続けて突破を試みた方がいい。
しかし、スレーおじさんが手を伸ばした。
すると光の護盾も、その手に合わせて外側へと伸びる。彼の光る手は護盾を越え、私の頭の上に届き、ぽん、と軽く叩いた。
「それでも護盾を破ることはできる。だが、実戦でそんな機会はないぞ。坊ちゃま、次は一撃で斬り開くことを試してみよう。今日はかなり進歩したぞ」
私は剣を引き戻し、わずかに裂け目のできた光の護盾を見つめた。少し惜しい気持ちを抱えたまま、今日の実戦訓練はそこで終わった。
次は、ドワインによる光魔法の運用訓練である。
主な内容は、光の魔力を凝縮してエネルギー弾を作り、それをドワインが用意した的へ正確に命中させられるかどうか、というものだった。
今日も、きっちり二十発を当てなければならない。外した分は数に入らない。
この訓練は、魔力運用の熟練度と命中精度を鍛えるだけではない。基礎魔力を体外で光の魔力へ転換する速度と効率を高める目的もある。
それは、魔法師としての基礎中の基礎だった。
スレーとハンクの二人の王剣騎士も、もちろんこれらの技術を自在に扱える。だが、魔法により精通しているドワインが教える方が、明らかに適しているのだろう。
ただ、私としては、全身に魔力を巡らせ、それを凝縮している最中くらいは、ドワインに横でずっと小言を言わないでほしかった。
「坊ちゃまには、一日も早く私めが扱える魔法をすべて身につけていただかねばなりません。そうすれば、その後は旦那様から、カルロ一族に伝わる家伝魔法――光の形を自在に操る力を授けていただけるでしょう」
私はエネルギー弾を撃ち出した。
幸い、それは鉄の支柱に吊るされた木製の的へ正確に命中し、一撃で粉砕した。
私は滔々と語り続けるドワインへ顔を向け、尋ねた。
「つまり、私は魔法学院へ通わなくてもいいのですね?」
「はい、坊ちゃま。魔法学院へ通わずとも、十分に優れた教育をお受けいただけます」
ドワインは両手を広げ、自信たっぷりにそう言った。
たぶん、そう答えられるだろうとは思っていた。
けれど私は、納得できなかった。
心の中に残った疑問を抱えたまま、私は今日の訓練目標をすべて終えた。
その夜、食事が終わると、メイドと執事が食卓を片づけ始めた。
スレーとハンクの二人の騎士は、少し離れたところで明日の訓練予定について話し合っている。
私はまっすぐ父上の前へ進み出て、身を屈めて礼をし、尋ねた。
「父上。パーリセウスは、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか」
「言え」
父上の眼差しは、恐ろしいほど落ち着いていた。
淡い橙色の髪は隙なく整えられていて、どう見ても貴族としてあるべき風格そのものだった。だが、なぜかその姿を見るほどに、私は背筋が冷えるような気がした。
「はい。お尋ねしたいのは、十歳になった後、私は魔法学院へ進学するのかということです」
「お前は魔法学院へ行く必要はない」
父上の答えは、あまりにも簡潔で、あまりにも明白だった。
普段の私なら、そこで会話を終えていただろう。
だが、この疑問はずっと胸の内に溜まっていた。口に出して尋ねなければ、どうにも気持ちが落ち着かなかった。
「理由をお尋ねしてもよろしいでしょうか」
父上は答えなかった。
ただ静かに私を見つめるだけだった。
そして、そのまま立ち上がり、階段を上っていった。
私はその場に残された。少し呆然とはしたが、驚きはしなかった。
父上は、理由を教えてはくれない。
けれど、私はこのまま諦めるつもりもなかった。
外へ出て学校に通えば、もっと多くのものを見られる。将来、外へ冒険に出ることも、ずっと私の胸を躍らせてきた夢だった。毎晩のようにドワインへせがんで聞かせてもらう英雄譚は、どれもその方向へ続いているように思える。
そしてそれは、母上がかつて私に語ってくれた、若い頃の冒険にも似ていた。
夜、湯浴みを終えたあと、私はすぐには寝台へ入らなかった。
代わりに、魔力で小さな灯りを点ける。
今の私は、この種の光魔力灯なら、およそ二時間ほど維持できるようになっていた。
我ながら、なかなかすごいと思う。
私は魔法書をめくり、何か先に覚えられるものはないかと探した。
父上が私を魔法学院へ行かせないのは、私が優秀ではないからだろうか。だから、家の名を汚すと思っているのだろうか。
それとも、父上は私が優秀すぎるから、目立つことを恐れているのだろうか。
うん。後者ではないと思う。
父上がそんなふうに考えるはずはない。
では、黒髪が奇妙だからだろうか。
ふっと私は昨日、あの二人の子供が私の髪についてあれこれ言っていたことを思い出した。
そうしてぼんやりしていた時、執事が軽く扉を叩き、部屋へ入ってきた。
まだ眠っていない私を見ると、彼は静かな声で尋ねる。
「坊ちゃま、まだお休みにならないのですか。もう夜も遅うございます。明日も実戦訓練がございますから、早めにお休みくださいませ。何かお手伝いが必要でしょうか」
私は首を横に振った。
父上がなぜ私を魔法学院へ行かせないのか、それを聞く勇気はなかった。
だから、ただこう尋ねた。
「ドワイン。私の黒髪は、変ですか?」
ドワインはその場でしばらく固まった。
まるで、私の問いが聞こえなかったかのようだった。
けれど私が繰り返すより早く、彼はふと我に返ったように身を動かし、振り向いて扉を閉めた。それから足早に私の前へ来て、そっと私の頬を撫でた。
「そのようなことはございません、坊ちゃま」
そう言ってから、彼は小さくため息をついた。
そして私へ寝台に戻るよう手で示す。自分は椅子を寝台のそばまで引き寄せ、腰を下ろすと、静かに問いかけてきた。
「旦那様と奥様のことを、少しお話しいたしましょうか」




