第九十九話 林間の剣光
朝の光が天幕の隙間から差し込み、ちょうど私の顔を照らしていた。
私は目を擦りながら、ぼんやりと瞼を開いた。どうやら、もう夜が明けているらしい。
少し離れた場所には、誰も寝ていない寝床が一つ残されているだけだった。
昨夜、スレーとハンクの二人は交代で外の見張りをしていたはずだが、今は天幕の中に私以外、誰もいなかった。
私は服を着替え、天幕の幕を持ち上げた。
外では、すでに焚き火が新しく起こされていた。
スレーが火のそばにしゃがみ込み、鍋で何かを煮込んでいる。立ち上る湯気に乗って、ほのかな脂の香りが漂ってきた。
私が出てきたことに気づくと、彼は少し意外そうに顔を上げた。
「ああ、坊ちゃま。もう起きたのか。朝食ができてから起こそうと思っていたんだが」
「おはようございます、スレーおじさん」
「おはよう、坊ちゃま。……おじさんは余計だよ。何度言っても直らないな。さあ、こちらへ。もう少しでできるから、座って待っていてくれ」
私は焚き火のそばへ腰を下ろし、左右を見回した。
「ハンクおじさんは?」
「先に、この先の道を調べに行っている。戻ってきたら、朝食を取りながら今日の行程を相談しよう」
スレーは匙で鍋の中身をかき混ぜながら、もう一言付け加えた。
「それと、今日からは基本的に、馬車で飛び続けることはしないつもりだ」
「では、馬車と天馬はどうするのですか?」
「後ろからついてこさせればいい。あの光翼天馬たちは、きちんと訓練を受けているからね。頭もいいし、そう簡単に迷子にはならないよ」
それから、さほど時間は経たなかった。
簡単な地図が描かれた一枚の紙を手に、ハンクが林の中から戻ってきた。
彼は焚き火のそばへ腰を下ろすと、その紙を広げた。
「近くの道は、だいたい確認してきた。このまま真っ直ぐ進めば、ソルヴィア城の管轄下にある村を一つ通る。その先には分かれ道があって、片方は別の村へ続いているらしい。多少の補給はできるだろうが、長居する必要はないな」
そこまで説明すると、ハンクはスレーへ顔を向けた。
「それと、昨日話していた周辺の魔物の巣の地図だが、今日ももう一度、取りに行ってもらえるか?」
スレーは頷いた。
「ああ、わかった」
「その間、俺は坊ちゃまを林へ連れていって、少し実戦形式の訓練をするつもりだ」
その言葉を聞いた瞬間、私は顔を上げた。
スレーが小さく笑う。
「ここの地形は、家の訓練場ほど整っていないからね」
ハンクも続けた。
「だが、坊ちゃまにとっては、むしろちょうどいいだろう。林の中は地形が複雑だからな。今のうちに、森林での戦い方を少しでも経験しておいた方がいい」
私は二人の話を聞きながら、すでに期待に胸を膨らませていた。
正直なところ、私はこれまで、二人の王剣騎士と数えきれないほど剣を交えてきた。
けれど、それはあくまで訓練だ。
二人が本当に全力で戦った時、いったいどれほどの強さを発揮するのか。私は、ずっと気になっていた。
以前読んだ資料によれば、光の領域全体を見渡しても、王剣騎士の総数は十万人にすら満たないらしい。
帝国における、まさしく精鋭中の精鋭と言ってよい存在だった。
王剣騎士の上には、騎士長や軍団長といった役職も設けられている。ただし、それらは主に職務上の区別であり、本質的には同じ王剣騎士に属するという。
一方、黄金魔法師の立場は少し特殊だった。
名目上、黄金魔法師と王剣騎士は、どちらも帝国最高位の戦闘者に数えられる。しかし、王宮や軍における地位を考えれば、王剣騎士の方が明らかに昇進の機会に恵まれていた。
黄金魔法師は、それとは少し異なる。
彼らの多くは帝国の魔法師体系の中で活動しており、比較的独立した立場にある。
しかも騎士に比べると、黄金魔法師には貴族出身者の割合が明らかに多い。そのため、光帝陛下や帝国の権力中枢にも、より近い存在なのだという。
だからこそ、私はずっと知りたかった。
本気で戦う王剣騎士とは、いったいどのようなものなのだろう。
もちろん、二人の全力を本当に見るためには、おそらく極めて強大な敵と遭遇しなければならない。
それは決して、望んでよいことではなかった。
けれど、危険だとわかっていても、好奇心を完全に抑え込むことはできなかった。
朝食を終えると、スレーは天馬に騎乗し、野営地を後にした。
ハンクはその場に残り、天幕を畳んで馬車を整え、天馬たちの世話を済ませてから、私を連れて近くの林へ入った。
そこは、野営地の周辺よりも明らかに木々が密集していた。
幾重にも重なる枝葉の隙間から陽光が差し込み、地面には大小さまざまな光の斑が落ちている。むき出しの木の根が土を押し上げ、低木や茂みがあちこちに生い茂っていた。
まともに足を置ける場所さえ、家の訓練場とは比べものにならないほど少ない。
ハンクは、その中でも比較的開けた場所まで進むと、足を止めた。
「坊ちゃま、剣を抜いて構えてみようか」
私は少し驚いた。
ここで、いきなり始めるのか。
けれど、ハンクがそう言うのなら、従うしかない。
私は剣を抜き、彼の姿をじっと見据えた。
ハンクも片手で剣を握っていた。
ただ、いつもの訓練とは違い、真正面から私と向かい合ってはいない。身体をわずかに斜めへ向け、片足を前に、もう片方を後ろへ置いている。
さらに不思議なことに、その身体は絶えず、ごく小さな幅で動き続けていた。
わずかに揺れるような立ち姿。
そのせいで私は、彼が次にどちらへ身をかわすつもりなのか、まるで判断できなかった。
どういうことだろう。
普段とは、動きがまったく違う。
私は剣の柄を握り直し、不意に一歩踏み込んだ。
下から突き上げるように、ハンクへ剣先を繰り出す。
彼は護盾すら展開しなかった。
剣先が身体へ迫った、その瞬間。
ほんの少し、身体を横へずらしただけだった。
私の剣は、その脇を擦り抜けていった。
やはり、横へ避けるか。
けれど、今の突きは、もともと牽制のための一撃だ。
私はすぐに剣を引き戻し、半歩後退する。その勢いを利用して手首を返し、ハンクが回避した方向へ横薙ぎの一撃を放った。
ところがハンクは、最初からそうするとわかっていたかのように、同時に一歩後ろへ退いた。
再び、剣が空を切る。
そして次の瞬間には、彼はすでに一本の太い木の背後へ身を移していた。
私は思わず動きを止めた。
家の訓練場では、こんな戦い方をするところなど、ほとんど見たことがない。
木を使って視線を遮り、自分から距離を取り、それどころか護盾すら使わない。
やはり、ここは訓練場とはまるで違う。
こうした地形では、足場をうまく確保し、相手の動ける位置を制限することが、戦い全体の流れを握ることにつながるのかもしれない。
私は念のため、先に護盾を展開した。
淡い金色の光膜が身体を包み込んだところで、改めてハンクへ視線を向ける。
彼は木の幹に沿うようにして、ゆっくりと姿を現した。
左足が前。
右足が後ろ。
右手には片手剣を握り、左手は自然に胸の前へ持ち上げられている。
私は一気に緊張した。
視線を彼の右手と胸元へ集中させる。
それと同時に、視界の端では脚と足運びも追い続けた。
手を見れば、剣がどこへ向かうのかがわかるかもしれない。
足を見れば、次にどちらから接近してくるのかがわかるかもしれない。
私も、それに合わせて構えを変えた。
右足をわずかに引き、身体の重心を後方へ置く。左足は軽く前へ出した。
そして両手で剣を握り、右肩の上へ担ぐように構えた。
これなら、ハンクが正面から来ても、側面から来ても、剣を振って迎撃するだけの余地はあるはずだ。
おそらく、一秒ほどしか経っていなかったと思う。
突然、ハンクの右足が前へ踏み出された。
同時に、右手に握られた剣が私の胸元へ向かって真っ直ぐ突き出される。
速い一撃だった。
けれど、私はずっと彼の右手を見ていた。剣先が届くより早く、肩に担いでいた両手剣を、そのまま斜め下へ振り下ろす。
刃と刃がぶつかった。
私はハンクの突きを、力ずくで地面の方へ押し下げた。
ただし、そのまま前へ踏み込むことはしなかった。
ハンクの重心が、先ほど踏み出した右脚に、まだ残っていたからだ。
彼の攻撃は、終わっていない。
私はほとんど反射的に半歩後退し、剣を再び持ち上げた。そして剣先を、ハンクの胸元へ真っ直ぐ向ける。
こうしておけば、彼がさらに前へ出てきた時、そのまま突き返すことができる。
少なくとも。
私は、そう考えていた。
しかし。
地面へ押し下げたはずの剣が、不意に向きを変えた。
ハンクは手首だけで剣を操り、低い位置でごく小さな円弧を描いた。
そして次の瞬間。
横合いから、私の剣身の中ほどへ勢いよく刃を打ち当ててきた。
ガキンッ――!
剣を伝い、重い衝撃が一気に両腕へ走った。
なんという力だ!
こちらは両手で剣を握っているというのに。
ハンクは片手だけで私の力に拮抗し、それどころか、明らかに押し勝っていた。
私は歯を食いしばり、両腕へ力を込めた。
剣をもう一度持ち上げ、彼の力を別の方向へ逃がそうとする。
けれど、ハンクは少しも動きを止めなかった。
私の剣が下へ押さえ込まれた、その一瞬。
彼はすでに、自分の剣が進む方向に合わせて足を踏み出していた。
素早く数歩を運ぶと、その身体は、先ほど背後へ回り込んだ木の幹を擦るほど近い位置を通り、側面から一気に私へ迫ってきた。
しかも、そこはちょうど、私の両手剣では即座に防御へ戻しにくい側だった。
私は慌てて後退しようとした。
だが、その時にはもう遅かった。
ハンクの剣が、再び突き出されていた。
剣先が護盾へ衝突する。
淡い金色の光膜が、激しく揺れた。
私は反射的に、そこへ魔力を集中させようとした。
けれど、ほんの少し間に合わなかった。
剣先が護盾を突き破り、小さな穴を穿った。
直後。
冷たい刃が、その裂け目を抜けて私の左腕を掠めていった。
鋭い痛みが走る。
私は慌てて後方へ飛び退いた。
視線を落とすと、左腕にはすでに、細長い傷が一本刻まれていた。
私は剣を握ったまま、自分の腕を見つめた。
それから、すでに剣を引き、静かに立っているハンクへ目を向ける。
……この一戦は、私の負けだった。




