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存在確率 0.03%
存在確率:0.03%。
演算空間では、その世界はほとんど透明だった。
剪定候補。
決定は早かった。
港町。
静かな海。
誰も英雄にならない世界。
だから、削られる。
数値が下がる。
輪郭が薄くなる。
建物が透ける。
少女は防波堤に座っていた。
空を見上げている。
「……ここじゃないどこかが、ある気がする」
その言葉が、わずかな誤差になった。
世界はさらに薄くなる。
音が遅れる。
空が二重になる。
少女は立ち上がった。
向こう側の空に、歪みがあった。
本来あるはずのない継ぎ目。
その向こうで、誰かがこちらを見ていた。
視線が交差する。
数値が跳ねる。
存在確率:未定義。
演算が止まる。
世界は沈黙した。
少女は再び防波堤に腰を下ろす。
海は静かだった。
風も、波も、何事もなかったように続いている。
だが空のどこかに、継ぎ目だけが残っていた。
その向こうで、誰かが確かにこちらを見た。
たった一度。
それだけで十分だった。
ゼロにはならなかった。
だから消えなかった。
そして今。
あの日、消え損ねた世界が、
観測する側だった少年を、
静かにこちらへ引き寄せている。
存在確率0.03%。
それでも、何かは起きる。




