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シャーロット 〜魔法の調べは、観測の果てにあり〜  作者: 桜の浜


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第十四章 緋色の研究 (十六)

「研究は完成したのか?」


 男は報告書を閉じる。


「ええ、十分な成果を上げています」


「今、第三王子に亡くなられては、魔法省と大議会の力関係が崩れてしまいますので」


 計画は順調ではなかった。


 古い資料から、ある研究を見つけた。

 半信半疑になるような内容であり、研究者もすでに亡くなっていた。


 しかし、外務調査局がその研究を利用したものを使用している、という情報を得た。

 さらに、実験体がまだ生きていることも知った。


 ちょうど、この街はインフラ事故によって混乱していた。

 彼を招き入れる準備をした。


 彼の心は壊れていた。

 だが、実験は成功していた。


 それでも、計画は順調ではなかった。


 再開発地域にいた人間たちを利用することにした。

 実験には失敗がつきものだ。


 少しばかり死傷者が出たが、大した問題ではない。

 いなくなっても困らない者たちだ。


 次の計画に移行した。


 若く健康な市民の力を使う。

 期間を間違えなければ、死傷者は出ない。


 ただの指輪だ。


 一つだけ問題がある。


 計画に必要だった実験体が、さらなる混乱を引き起こしている。

 だが、まだ消すわけにはいかない。


 外務調査局は、プライドばかり高くて役に立たない。

 ボヘミア卿と外務調査局に指示を出す。


 そこへ、内部調査局がしゃしゃり出てきた。


 面倒だ。


 あいつらは、すぐに外部へ情報を流す。


 仕方がないので、外務調査局を使い、監視局へそれとなく情報を小出しにする。

 監視局が動いているだけで、少しは内部調査局への牽制になる。


 実験体が人を殺めた。

 復讐を優先したようだ。


 それ自体は問題ではなかったが、監視局に通報された。

 指輪のことまで知られてしまった。


 シャーロットが関わっている。


 仕方がない。


 これ以上続ければ、さらに面倒になる。

 ある程度の結果は出た。

 症状の改善にもつながっている。


 後始末に移る。


 外務調査局と内部調査局を使い、監視局へ情報を流す。


 実験体の始末は外務調査局に任せたはずだった。

 それなのに、なぜか監視局へ自首した。


 心が壊れている者の行動は読めない。


 自分が殺されることを知り、駆け込んだのか?

 だが、そのような感情を持っているようには見えない。


 殺人犯が自首しただけの話で終わるよう、報告書を作る。

 あとは、その指示どおりの結果になる。


「今、第三王子に亡くなられるのは困る。騒ぎになることも、この国の安寧のためには避けなければならない」


 男の思考は、あくまで国だ。


 正しさではない。

 国があるから、人は生活ができるのだ。


 そういえば、シャーロットは事件に絡んでくるが、捜査が終わると口とつぐむ。

 

 騒いだところで、混乱が起きるだけ。

 だから、あえて黙っている。


 シャーロットの場合は、反撃するタイミングを待っているのかもしれない。


 それはそれで、楽しみだ。


 あの瞳は、何を見ているのだろう。


 マリアは軽く息を整える。


「では、失礼します」


 男からの返事はなかった。


 扉を閉め、マリアは思う。


 シャーロットの魔法が、きっと奴に対抗できる唯一の鍵になるはずだ。


 そのために、長い時間をかけて、天才と呼ばれる者たちを育ててきた。

 結果として、生き残っている者はあまりいない。


 危機に対応できる力と才能こそが必要だ。

 死んだということは、それだけの者だったのだ。


 これこそが、私の研究。


 緋色に染まったドレスが、ゆっくりと闇に溶け込んでいく。


 廊下には、靴音だけが響いていた。


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