第二章 赤髪協定 (三)
実験棟。
第三実験室。
実験棟には、十の実験室がある。
実験室すべては、年度前か実験室の研究は、ほぼ予定が決まっている。
とくに、予算が大きい研究は何年も前から計画が決まっている場合もある。
第一から第六研究室はほかの研究で使用することができない。
これは、実験棟の決まり事の一つになっている。
残りの四つの実験室では学生たちの模擬実験や新たに始まる研究の実験がおこなわれている。それでも毎日の予定は時間ごとに決まっている。
その実験室の第三実験室はここ何年かは、ウィルソン教授の研究が埋めていた。
紅魔装置、学園だけでは足りない予算をボヘミア卿の出資団体が予算の援助をしていた。
まだ、紅魔装置は出来ていない。
起動すらできない状況。
理論段階。
それが、先ほど見た学園の研究報告書では、そのように書かれていた。
しかし今、シャーロットとレストレードの前には、完成した装置がある。
そして、その装置からはいくつもの魔力導管が伸びている。
それは実験室の魔力導管に結びついていた。
一番の問題は、装置から伸びた魔力導管は、実験室の魔力導管の色を変えている。
通常の魔力導管の色は、淡い青色である。それが赤く、真っ赤に染めあがっている。
「シャーロット、どういうことだ?」
レストレードは、現状の把握に急ぐ。
「ええ、これは」
シャーロットは、紅魔装置、その配置そして魔力導管の流れを確認する。
「シャル?あそこに、誰か倒れているわ?」
レストレードは慎重に近づく。
赤い。
赤い髪をしたそれは、ウィルソン教授だった。
「息をしていない」
レストレードは、周囲を確かめる。
ワトソンは、ウィルソン教授の脈を確認し、心臓の音を聞く。
「亡くなっているわ」
シャーロットは、見つめる。
紅魔装置。
高さは、二メートルくらいの円柱の装置。
中央のシャーロットの視線の位置には、紅魔装置の中心装置、そこには赤く輝く宝玉がある。
この宝玉により、紅魔装置は、学園の魔力導管から得た魔力を赤色因子に変換するしている。赤色因子になった魔力はある能力を持つ。一部の魔力の力を拡大させることができる。それは、さらに赤髪、いや赤色因子を持った人間の観測能力をさらに上昇されることができる。
通常、魔力導管から伝わる魔力は、どの人間でも一定の力で使用できる。それにより、魔法都市ロンドンのインフラとしての安定した役目を果たす。それは、調理に使う熱源になり、寒さを防ぐ暖房になり、そして生きるために必要な水を浄化することができる。
しかし、紅魔装置で赤くなった魔力導管は、赤色因子を強く持つ者を観測値を上げてしまう。一の力が二にも三にもなる。それは、効率という点では優れている。
ただ、それは人を選ぶ。
赤い髪、赤い目、赤い肌。
容姿はあくまで、一時的なものの。
この状態が続くと、人々の中では区別ではなく差別が生まれる。
赤色因子を持たないものは、能力がないと。
更に紅魔装置はもう一つの問題を発生させている。赤色因子以外の能力を極端に下げてしまう。
シャーロットは、この装置の理論を聞いたときに、ある種の期待がある。
色による区別により、さらに能力を上げれるのならば使用場所により、より効率化されるはず、また違う色も同じようなことができれば適性なものが的確に使用できる。
現実は違った世界は偏るのである。平等であることは正しくはないと同意ではない。
一部の能力を持つ者は更に偏っていく。
これが今の現実だった。
もったいない。
シャーロットは、この装置の歪んだ人々の思想を惜しく思う。
「シャル。学生も倒れている」
ワトソンが駆け寄り様子を見る。
「こっちはまだ意識がない」
全員、赤髪の学生。
白衣を着ていることもあり、赤い髪がさらに際立っている。
学生たちの体から、紅魔装置に管が結びついている。
観測魔法のための補助器具だろうか
「シャル。これはもしかして」
ワトソンは、紅魔装置を見あげながら言う。
そうだ。
今一番の問題は、まだ紅魔装置は動いている。
なぜだ?
ウィルソン教授は亡くなっている。
そして、学際たちは意識がない。
装置を起動するには、観測者が必要なはず。
意識がない学生には、そんなことできない、ましてや教授は亡くなっている。
それだけではない。
起動した紅魔装置は、ゆっくりと確実に部屋の魔力導管の色を変えている。
このままだと学園の全体が赤に染まる。
「シャル?これ、もしかして」
「ええ、動いているわ。それだけでない赤が学園を侵食する」
ただ侵食するだけでは済まない。
この赤色が魔力導管を伝い魔力塔に逆流した場合。
魔力塔は、その魔力に耐えられず制御が乱れる。最悪の場合には崩壊する。
そうなると被害は学園だけでは済まないかもしれない。
避難する時間はまだある。
しかし、このままにしておくことは出来ない。
「どうするのシャル、逃げる」
ワトソンは一番的確な答えを言う。
「いえ、まだ、止めれられる」
円。
シャーロットの固有魔法。
それは、対象物の観測する。
魔法を生み出すのではなく、事象の状態を確認をすることができる。
観測対象は、紅魔装置。
シャーロットから放たれた青い光は、ゆっくりと紅魔装置を飲み込んでいく。
紅魔装置の概要。
外装には、赤胴色の金属の骨格が全体をくるむようにある。
その中には、魔力導管を冷却そして圧縮する制御装置。
さらに奥には、赤色因子に変える色彩選別層が学園から流れている魔力導管の薄青い色を飲み込んでいる。
中央に見える核が、紅核がまばゆく光っている。
起動時間。
作動条件。
魔力導管に流れ込むまでの時間。
そして、動作を止めるための条件の確認。
何だこの違和感は
観測者なしで動作するならば、宝玉だけで起動し続けている。
しかしこの装置の制御核は、観測者は起動させている構造。
同時起動。
紅魔装置は、ただ魔力導管の性質を変えるだけではない。
赤色因子によって学生とウィルソン博士を変質させるのが目的。
ウィルソンの周りには外れた管がある。
これは、ただ魔力導管を赤く染めてるのが目的ではない。
紅魔装置は、人の因子ごと赤く染めようとするもの。
学生に繋がっている管は、制御ではなく変質させるためのもの。
もしかするとウィルソン博士はそれを外したせいで亡くなった可能性がある。
ウィルソンの周りには外れた管がある。
厄介だな。
シャーロットは、軽く目を細める。
魔力導管の動作と赤色因子の変換を同時に止めないと
一つだけ止めるとその余波がもうひと方向に流れる仕組みだ
学園全体を赤く染めるか、学生が染まるか。
中央の宝玉自体を止めるしかない。
シャーロットは、円を赤い宝玉に移動させる。
面倒な設計をしている。
宝玉の力で青を赤に、その熱を利用してさらに膨張させる。
冷却には魔力導管の冷気を循環にさせている。
一つ、一つの駆動を確認しながら、同時に止める。
一瞬、実験室が赤い光を放ち、そしてゆっくりと消えていく。
「終わったわ」
魔力導管の色はゆっくりと青く変わりつつあった。
「どうやった」
「もともとの赤色因子を青色因子に変えるように制御を変えたのよ」
「そんなことできるのか」
「ええ。同じよ、色はただの色よ」
「見えている人だけが赤だと認識するのよ」
「すぐに、救護がくる」
レストレードは、通信機器を使い監視局を連絡を取っていた。
シャーロットは、ウィルソン教授と学生を見つめながら思う。
いない。
必ずいるはずのものがいない。
「ワトソン行くわよ」
そういうと、シャーロットは、実験室を飛び出した。
「ええ」
ワトソンは、シャーロットの背中を見ながら答える。
まだ、終わっていない。




