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シャーロット 〜魔法の調べは、観測の果てにあり〜  作者: 桜の浜


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第十七章 株式仲買店員 (二)

「それは、なんて会社?」


 シャーロットは、ヴァイオレットのために会話を始めた。


「ああ、ウェストブリッジ社だ」


 ホールは、いきなりシャーロットが会話に参加してきたにもかかわらず、驚きもせずに答える。

 シャーロットがいつ話しかけてきてもいいようにしているようだ。


 ここが、ただシャーロットと会話をしようとする他の人間と、ホールとの違いでもある。ヴァイオレットはそこに感心しているが、もっとシャーロットの表情や態度を見たら、さらに会話がうまくいくのにな、と感じている。


 ウェストブリッジ社。


 黄色い仮面の家の家主。


 少し調べていたが、セドリックに止められた。


「これ以上、君が関わると別の事件になるから、やめてくれ。グラントの家族の関係も良くなったんだから、もういいだろう」


 依頼された内容は解決したからいいのだが、シャーロットの関心は、その時にはすでに別のものへ移っていた。エフィーの研究とウェストブリッジ社の行動に重きを置いていたのだ。


 だが、ワトソンにも言われた。


「やめなさい」


 とは言われたが、エフィーの研究室にはまだ通っている。

 本当のエフィーの研究が判明したので、今まで以上にシャーロットの楽しみになっていた。先ほども、その研究を利用した魔法式の実験を頭の中で行っていた。


 そのウェストブリッジ社の名前が、またシャーロットの目の前に現れた。

 興味が一気に引き寄せられる。


 また、ワトソンに怒られる。

 しかし、それは仕方がないことだ。


 シャーロットは、ワトソンに対する言い訳を考える前に質問を始めた。


「どうして、ホール先輩なのですか?」


 いきなり、とどめを刺す。

 聞く人が聞けば、結構なダメージを負いそうな言葉を、たまに平然と言う。

 感情のこもらない、抑揚のない声。それだけで普通の言葉以上に冷たく聞こえる。

 ホールは、そんなことはまったく気にしていないような顔をしている。


「ホール先輩が優秀だからじゃない」


 ヴァイオレットは、さらに助け舟を出す。

 このままでもシャーロットとホールは気にしないかもしれないが、聞き耳を立てている周りの人間たちは、二人の仲が悪いと思ってしまう。


 こう見えても、ホールはシャーロットと会話できる数少ない生徒なのだ。

 ヴァイオレットは、もっとシャーロットが周りと打ち解けてほしいと思う時がある。


 昔は、シャーロットが誰かと会話していると少し嫉妬したが、長く一緒にいて築いた関係は簡単には壊れないし、揺らぐこともない。それはもう、ヴァイオレットの中で確信に変わっていた。


 だからかもしれない。

 シャーロットにも学園生活を楽しんでもらいたい。

 そう、勝手に考えていた。


 だけど、シャーロットに近づいてくるのは、なぜか少しアクが強めのタイプが多い。ホールがシャーロットに近づいてきた時、ヴァイオレットの胸は高鳴った。


 え、これは、なに。


 シャーロットにいくら冷たくされてもめげない。

 そんなホールを、いつの間にか応援し始めていた。


 でも、後でホールにその気がないことを知り、落胆したのだが。


 何かが違う。

 シャーロットの頭は、そう告げている。


「調べましょう」


 そう言ってシャーロットが立ち上がろうとした瞬間、授業のベルが鳴った。

 抜け出そうと考えていたが、ヴァイオレットが服をつかんで離さない。

 仕方なく、椅子に座り直した。


 後でシャーロットは知るのだが、ヴァイオレットはワトソンから、シャーロットが授業を抜け出さないよう、同じ授業の時には見ていてくれないかと頼まれていた。


 シャーロットは、学力に関しては学内トップクラスなのだが、たまに授業からいなくなる。試験中に試験用紙へ自分が研究していることを記載したりするので、成績にはかなりの波がある。


 ワトソンはハドソンからそのことを聞かされ、ヴァイオレットにお願いをしたのだ。シャーロットは、ヴァイオレットの言うことなら聞くと考えてのことだ。


「シャルが授業中にどこかに逃げ出すときは、止めて」と。


 ヴァイオレット自身も、シャーロットがたまに補習を受けている姿を見たくないので、快く引き受けた。


 教師が教壇の前に立ち、授業を始める時には、ホールはいつの間にか教室からいなくなっていた。


 授業を頭の片隅で記憶しながら、シャーロットの思考はウェストブリッジ社の情報整理を始めていた。

 シャーロットの真剣な表情を見て、横の席にいるヴァイオレットは安心していた。


 いくつかの授業を終え、お昼になった。

 シャーロットとヴァイオレットは午前中ずっと同じ授業だったため、シャーロットは授業を抜け出すことができなかったが、その分、情報整理に回せたので頭がすっきりしていた。


「シャル? 何食べる?」


 ヴァイオレットは、シャーロットを連れて学内の食堂に来ていた。

 基本、シャーロットに食への関心は薄い。

 食べても食べなくても、あまり困らない。


 だが、栄養補給は頭の回転と体力の維持につながるので、最低限はしなければならないと考えていた。だが実際は、食べることをほぼ忘れている。


 朝、晩に関してはワトソンが口酸っぱく言うので、義務的に食べるしかないのだが、昼はワトソンがいないので、シャーロットは自由時間だと考え、校内をうろつくことが多い。

 今日は午前中ずっとヴァイオレットと一緒なので、それもできない。


 食堂にあるメニューを見る。

 いつもはワトソンが食べるものを決めてくれるので、シャーロットはメニューの前で固まる。


 ランチメニュー。

 本日の日替わり、ローストビーフとマッシュポテト。パンとスープ付き。

 Aランチ、Bランチ、Cランチ。

 さらに単品メニュー。


 今日の体調と朝の献立、夜に出されるであろう料理を推測し、栄養補給に最善なのは何なのかをシャーロットは思考する。


 メニュー表の前で固まっているシャーロットを見て、ヴァイオレットはいつものようにこう言う。


「シャル、私と同じ、日替わりにするからね」

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