10ー10 王位継承権
10ー10 王位継承権
翌日。
あたしとあたしの新しい養父母となる『東の魔女』とエドワードさんは、クリエスタの街の教会で親子の縁を結んだ。
教会の女神の像の前でクリスティア様とエドワードさん、それにあたしのサインを契約の書に書き込むと本が白い光を発した。
『お前たちは、家族となった。お互いを慈しみ思いやり幸せに暮らすがいい』
それは、愛の女神であるスレニアよりの言葉なのだろう。
あたしたちが名を記した本の開いたページに刻まれた言葉だった。
街から離れた山奥にあるクリスティア様の屋敷に戻る途中にクリスティア様があたしを優しい眼差しで見つめた。
「これで・・あなたは、正式に私たちの娘となりました・・つまり、チカ、あなたは・・今日から王族の一員となったのです」
ええっ?
あたしは、ちょっと驚きを隠せなかった。
「当然だろう?」
エドワードさんがあたしににかっと笑った。
「お前の名前は、チカ・ヤツハシ・ラフニノフになったんだからな!」
マジで?
あたしは、おろおろとクリスティア様とエドワードさんを見た。
「でも・・てっきりあたし、クリスティア様は、王家から出られているものとばかり思ってました」
「クリスティアは、王族のまま『東の魔女』になったからな。そして、王族の娘が婚姻などする場合、その地位は、引き継がれる。つまり、お前もこれからずっと王家の名前がついて回るってことだ。例え、すぐにジークナー公爵の嫁になったとしても、な」
エドワードさんの言葉にあたしは、はっと気付いてしまった。
はめられた!
これは、『西の魔女』の罠だ。
あたしに王族の籍を与えたかった『西の魔女』の策略だ!
あたしは、うわずった声できいた。
「でも・・ただの名前のみの遠い親戚って感じですよね?」
「いいえ」
クリスティア様がにっこりと口許を綻ばせる。
「あなたには、低いですけど王位継承権が与えられることになります」
王位継承権?
あたしは、背筋が寒くなる。
嫌な予感がするし!
「まあ・・あなたには、ジークナー公爵という婚約者がすでに決まっていることですし・・それでも、群がってくる者たちはいるでしょうけど・・」
クリスティア様がおっとりとした様子でエドワードさんを見上げる。
「まあ、私たちもいますし・・何も案じることはない・・わよね?エドワード」
「ああ、もちろんだ!」
エドワードさんがあたしに微笑んだ。
「この俺様がついているんだからな。もしもお前を泣かせる奴がいれば例えそれがジークナー公爵であろうともただではおかん」
あたしは、ひきつった笑みを浮かべていた。
『西の魔女』は、やはり魔女なのだ。
とっても性格が悪い!
もう、いろいろ悪い予感しかしないし!
虚ろな瞳で馬車の外の流れる景色を見ているあたしにそっとメイアが囁いた。
「チカ様、ガンバ」




