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高みへ

「昇降機の確認?僕が?」

「昇降機自体の確認じゃなくてさ、その…周りの空気への耐性?を見たいらしい。」

海陸に突然、別の『協力』要請が舞い込んできた。

蒸都と外の世界、“原界”を繋ぐ、唯一の道。

動力庁舎、調整槽室と同じくらいの深みに、隠されるように昇降機が設置されている。

かつて動力管理部はその昇降機を使って原界に赴き、適合者を連れてきていた。自走計画を目指している蒸都からすれば、負の遺産でもある。

「僕が行ってどうなるの?」

首を傾げる海陸。原界の空気は適合者にとってはあるべきもの。耐性を見るべきは蒸都の人間であるはずだ。

「燈夜。お前、説明下手クソだな。海陸、お前一人で行かせんじゃねぇよ。原界の人間…まぁお前ちょっと蒸都(こっち)に順応してるからあれだけど…二人いなきゃ比較出来ねぇだろ?外に出過ぎんなっつってんのにフラフラしやがって。」

「……。」

ガシガシと頭を揺らす嶺亜に全くの無反応で対抗する海陸。もはや見慣れた光景に燈夜の中に仲裁するという選択肢も無くなっていた。

「というわけだ。今から行くわけだが…相方を選ばせてやる。俺か、燈夜だ。」

「………。」

「ククッ、わかりやす。…だとよ、燈夜。お前もその方が良いんだろ?」

短く“はい”と返した燈夜はどこか緊張した面持ちだった。

「ま、手っ取り早く決まったところで動くとしようぜ。残念ながら蒸都には遊んでる時間はねぇからな。」

立ち上がり、早速動き始める嶺亜。

二人もその後に続いた。動力庁舎内はいつも通りの忙しさと共に人で溢れている。会議に向かう者、慌ただしく現場に向かう者、早めの昼休憩をとる者、夜勤を終えて帰路につく者もいる。

「あれ?三人揃ってどしたの?」

流輝だ。購買部で買ってきたと思われるパンを両手にいつも通りの調子で声を掛けてきた。

「昇降機の確認だよ。」

もう庁舎内でもこそこそする必要は無い。燈夜が普通の声量で、周りを気にせず伝える。

「昇降機??ふぅん。よくわかんないけど…」

きょとんとする流輝だったが、すぐに彼女らしい明るい笑顔で向き直った。

「海陸、気を付けてね。いってらっしゃい!」

「うん。…ありがとう。」

久しく見なかった影を帯びない明るい笑顔に海陸も少し驚きながら答えた。

「っはぁーん。お前らそういう仲か。なるほどな。」

「嶺亜さんセクハラ!訴える!」

「言ってろ言ってろ。」

流輝を軽く往なして目的地へと進み始める嶺亜。

少し気になるようで後ろを見ながら数歩進んだ海陸だったが、嶺亜に促されて早足でその後を追っていった。


「海陸ぅ……」

せっかく買ったパンは、流輝の手の中で固く変形していた。

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