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日常

「あ、あんなトコに燈夜居る。」

「ん?」

「ほら、あそこ。」

流輝が指を差す方向を見、海陸も燈夜の姿を認める。

「おーい、早く〜!」

二人して手を振る。

(………。)

燈夜を待ちながらした雑談。そろそろ検査項目が全て終わるらしい,と海陸が言っていた。笑いながら、楽しい会話を続けながら、流輝の気持ちはズブズブと沈み込んでいった。

「流輝?」

首を傾げた海陸と目が合う。

「ぼーっとしてるけど、何かあった?」

「うぅん?何も?」

何かは、無い。これから起こる事にこの気持ちを引き起こされているから。

じっと、心を覗き込むように海陸が流輝を見つめる。

「え?私の顔、何か付いてる?やだ〜っどこ??」

「ふふ、付いてないよ。」

自分の気持ちを悟られまいとおどけてみせると、柔らかい笑顔が返ってきた。

「…初めて会った時はさ、ホント無表情で何考えてるかわかんなかったのに。いつの間にそんな可愛く笑えるようになっちゃったの?私より可愛くなるのやめてよねー。」

ガバっと抱きつきにいく。感情が豊かになっても、嶺亜相手に反抗的な態度を取るようになっても、海陸は流輝のスキンシップを拒むことはなかった。

「海陸はさ、私がベタベタすること嫌じゃないの?」

燈夜が相手に同じことをしようものならきっともう振り解かれている。

「?何で嫌なの?」

返ってきたのは素朴な疑問だった。

「んー…私が可愛いから?」

「そうかもね。」

「そこは“かも”じゃないでしょ!」

いつも通りの、他愛無いやり取り。

あと何度出来るかわからないやり取り。

「…整備部とか、研究班のみんな…頑張ってるかなぁ。」

「もしダメだとしても、蒸都は止まらないよ。」

(………。)

海陸は上層部の認識と同じく蒸都の自走計画が失敗しても、『協力』をするつもりなのだ。嶺亜の計画は知らない。

「海陸………」

「うん?」

「私の事、…忘れないでね」

「??どうしてそうなるの?忘れないよ?」

ここ最近、流輝は気分の浮き沈みが激しいのを知っている海陸。笑っていた筈の彼女から突然ズビズビと鼻を啜る音が聞こえるのにも驚かず受け答えをする。

「待たせて悪_うわ、流輝またかお前…。」

「うるさいなぁ!疲れてるの!たぶん!燈夜が遅い所為!バカァ!!」

見事なまでの八つ当たりに苦笑いするしかない燈夜と海陸。泣き止んだ流輝と三人でゆっくりと歩いた帰り道。

孤児院に着く頃には楼蘭が心配するくらいに夜が深くなっていた。


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