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おかえり

「無駄に心配させるのもなんだから、下ろすな?ゆっくりなら歩けるだろ?」

そう言われて燈夜の背中から下り、自力で跨いだ孤児院の敷居。もう子供達は寝静まる時間だ。足音を忍ばせてそっと灯りの点いた談話室の扉を開け、入っていく燈夜に続く。

「……!」

ガタッと音を立てて椅子から立ち上がったのは流輝だった。

驚きで見開かれた瞳はあっという間に涙で潤み、泣きながら海陸に捨て身のような抱擁を喰らわせて泣き叫んでいる。

「流輝…ちょっと__」

「〜……っ、!__…うぁあ〜!」

抱きつかれた勢いで壁にぶつかり、座り込んだまま流輝と彼女の話す言語にならない言葉を受け止めている海陸。

「“心配したんだから”だってさ。いい歳して幼児泣きすんなよ。」

「もっ…あぅ__だッッがらぁぁ〜っ」

流輝が言っている事が全く理解出来ない。

困惑したまま燈夜を見ると、“もう会えないと思ったらしい”、と慣れた様子で通訳した。

「…ごめん。」

見上げる涙目としっかり視線を合わせてそう伝えると、再び何か喚いて顔を擦り付けてきた。多分、名前を呼んだのだと理解した。

「…全く、あんま大声出すと他の子が起きちまうじゃないか。」

楼蘭も苦言を零しながら懐かしい笑顔を浮かべている。

「あの…」

何も知らない楼蘭や孤児院を下手に巻き込んでも良くないのではないか。海陸の頭にそんな考えが浮かぶ。

「二人から全部聞いたよ。全部聞いた上で、帰っておいでって言ったんだ。ここはあたしが“援助しろ人を回せ”ってうるさく言い過ぎて爪弾きにされてるからね。よっぽどのことが無きゃお偉いさんは来ないし、他の理由突きつけて追い払ってやるさ。」

「………。」

普段あまり見ない楼蘭の悪そうで、力強い笑み。返す言葉を見出だせずに黙ってしまう。

「さ、海陸。まだ聞いてないよ。帰ってきたら、何て言うんだった?」

「……ただいま。」

「「おかえり」」

流輝の泣きじゃくりながらの言葉が雑音にはなっていたものの、久し振りに言われた言葉。

痛みではない、胸の奥に温かい何かが流れ込んでくるような感覚がくすぐったく思えて、海陸はその言葉を噛みしめるようにゆっくりと瞬いた。

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