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発覚

嶺亜に連れてこられたのは使われていない小部屋だった。

「選ばせてやる。知りたいか、知りたくないか。」

「?何を、ですか?」

唐突な質問に理解が追い付かない。

「知るっつーんなら、お前は共犯者。知りたくねぇならお前は利用されただけ。そんだけだ。この後もココでのうのうと働きたいなら後者を勧めとく。」

「…あの、意味がよくわからな__」

「『人形部屋』。さすがに覚えてるだろ?あれについてだ。」

(!)

心臓が跳ねた。思わぬ好機の到来に、急いてしまう気持ちを抑えて頭を冷ます。

「あぁ、あの変わった機構の…」

「ふん、どこまでも機械バカだな。まぁ良い。そんな機械バカなら全部知ってた方が面白いだろうから聞かせてやるよ。」

あくまで自分を機械好きな整備士として認知する嶺亜の口から語られたのは、想像よりずっと重い、蒸都と海陸に課せられた現実だった。

「お前ら整備部の残業が増えてたのも、あのF‐369が核から離れた所為だったってわけだ。」

「……。」

「どんな手を使ったかは知らねぇが、結局F‐369も戻ってきた。一安心かと思えば監査員相手にひと暴れして挙句の果てにハンスト。あいつを外に出したヤツ、見付かったらタダじゃ済まねぇだろうな。」

どことなく愉快そうに嶺亜は笑った。

「嶺亜さんは、何をするんですか?」

「機械オタクくんには辛いかもしれねえけど、まず『人形部屋』の機能を止める。スマートに停止させるんじゃない。壊せ。」

壊す、という言葉に、整備士としての本能がざらりと逆撫でされた。言っている言葉は理解出来る。だが、嶺亜の狙いが読めない。

「なぜ、ですか?」

「あの構造があるからクソみたいな手段に頼るんだろうがよ。昔からそうだ、とかこれが正解だ、とか思ってやり方を変えようとしないヤツらにはそれくらいしなきゃわかんねぇよ。」

「…嶺亜さん、統括部の人…ですよね?」

「あ?見りゃわかるだろ。」

自分の着る徽章の入った外套を示す嶺亜。統括部にしか支給されないものだ。

「胸張ってこれが正解だって言えるやり方ならコソコソ隠れて人攫いみたいなマネしねぇだろ。マジできしょい。この役職があるうちに全部ぶっ壊してやろうと思ってな。…理解はしたか?ここまで聞いたら拒否権は無ぇぞ。」

「…はい。」

有無を言わさぬ圧に頷いた。圧がなくとも、頷いていただろう。

「いい度胸だ。手始めに人形部屋に細工する。付いてこい。」

嶺亜は立ち上がると小部屋を出て行った。今まで足掻いても届かなかった海陸への道筋が、壊すべき歯車として、一気に輪郭を持った。


ーーー

 

数ヶ月前、あの部屋まで続くこの道を通った時の自分と、今、同じ心境で歩いている。

何があるのか、何が起こるのか。

覚えようと気持ちを持って通っていた道。しっかりと記憶にある。

海陸は今、医務室に留められており、調整槽室には居ないと聞いた。

それでも胸は高鳴った。

あと少し。もう少し行けば調整槽室(あのへや)に辿り着く。そんな時だった。

「あー、マジか。やべぇな。予定変更だ。このまま真っ直ぐ進むぞ。」

嶺亜が静かに指示を投げた。しばらく先の曲がり角から人影が出てきた。

(!!!)

海陸だった。二人の男に挟まれてゆっくり歩くその姿は最後に見た時より窶れている。

思わず呼びかけそうになった声を飲み込んで、俯いたまま歩く海陸に視線だけを向ける。

(こっち、向けよ!)

心の叫びが届いたのか、それとも偶然か。海陸が顔を上げた。

見開かれた青い瞳。燈夜と同じように口を開きかけて、すぐに閉じて俯いた。

次に上げた顔は、今にも名前を呼んできそうな、穏やかで柔らかい笑顔だった。

(海陸…。)

笑顔の意味は?

__『大丈夫。』…か?

(馬鹿野郎…っ!!)

「おい。」

振り返ろうとした燈夜を止めたのは嶺亜だった。

反応する間もなく強く胸倉を掴まれて壁に押し付けられる。

「燈夜。…お前だろ。“内通者”。」

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