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悪への誘い

「カノジョちゃん、悪いな。彼氏借りてくぞ。」

「え?!あの…!」

流輝も、彼女の困惑も全て置いてきぼりにして燈夜の肩を掴んだままズンズンと去っていく嶺亜。

「あの…俺そろそろ昼休み終わるところで…」

強引な嶺亜を振りほどけずに進みながらも抵抗を試みる。

「わーってるよ。だから整備部一緒に行ってやるんじゃねぇか。…にしてもお前なー、何したか知らねぇけど女泣かす男は最低だぞ?」

「別に俺が泣かしたわけじゃ…」

「ガキ!放置してる時点で同罪だろうが。」

頭をスパンと叩かれ視界がブレる。

安心は出来ないが、嶺亜のこのノリからあまり深刻な雰囲気は感じ取れない。

海陸脱走の当事者として目を付けられたわけではなさそうだが、正直あまり関わりたくはない。澪が訝しんで嶺亜を遠ざけてくれるのを心の底から祈った。



「失礼します。統括部、嶺亜と申します。主任はおみえですか?」

(!!?)

そのまま連れてこられた整備部。

着いた途端に今までのちゃらけた雰囲気を消し去った嶺亜に言葉を失う燈夜。ギョッとして嶺亜を見ると、口だけで“黙れ”と言われた。

「あら、統括部の方がわざわざ…どうされましたか?」

「突然申し訳ありません。少し、統括部の管轄下で整備が必要な箇所が見付かりまして。前回手を貸してくれた彼にもう一度ご助力を願えないかと伺いました。」

誠実そうな笑顔で澪に話している嶺亜は見たこともない。まるで初対面の人間だ。

「そういう事ですね。承知しました。燈夜くん、配置を変えておくからそのまま嶺亜さんに従って。申請書は後から来ますか?」

「あぁ…それなんですが、今統括部の送達管が不調でして…また別の者に追々届けに来させます。お手数をお掛けします。よろしくお願いします。」

最後まで誠実そうな態度と笑顔のまま嶺亜は澪の前をやり過ごし、燈夜と共に整備部を後にした。


「チョロいな。良いか、これでお前は正式に俺の駒だ。精々役に立て。わかったな?」

変わり身の早い嶺亜を冷ややかに見ながら余計な事を話すなと言わんばかりに澪の死角でずっと抓られていた腕を擦る燈夜。

「…で。俺は何をさせられるんですか?」

トゲのある返しも嶺亜は気にする様子は無い。


「蒸都をぶっ壊す。それだけだ。」

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