瑠璃色の空
さて、今後のことを考えましょう。
瑠璃色に輝く空を眺めながら。
現状を報告しなさい、私壱。
「夏休みはあと二週間で終わります。」
うむ、そのとおり。
「つまりあと二週間ありますな。」
どこからともなく私弐。
「そして、予定は空白です。」
口に出して言う。
風呂場を弾んでどこにいった。
あの言の葉よ。
「ここで追記事項です。」
まだあるのか私壱。
「今日で宿題は終わりましたので、気兼ねなく、出かけることもできます。」
その予定と相手がいないってことなのよ。
まったく、と、あげた手を下す場所はここにない。
両手で湯船の湯をすくって、顔にかける。
「そうよ。やることは終わったの。」
したいことをすればいいじゃない。
今度の言葉はここにある。
いままでは一人だった。
進んでそうしてきたのだ。
本を読み、知らない世界を知る。
それが私の好きなこと。
絵本の世界、小説の不思議、漫画の景色……、どれも現実にはないものだった。
……結局、無いものねだりなのよね。
そして、世界を知るということの怖さも知った。
知っているはずだ。
「何も予定のない期間が二週間、贅沢な悩みだぁ……。」
暗いことを考えたくはない。
あれはいじめではなかったはずだ。
必要のないことならなおさらだ。
いま考えても、現状は変わらない。
だから、前を向くって決めたじゃないの。
落ち着けって。
ぱんっ!
両手を合わせる。
これまでの喧騒は止み、そこにはわたし独りだった。
しかし、よく考えてみれば最近の私は頑張りすぎている。
わたし、朧月白夜は頑張りすぎている。
人付き合いが苦手な自分を克服するために、委員長になった。
そしてよくわからない転校生の相手もしなくてはいけなかった。
不器用な私にも友達ができて、夏祭りに行った。
「……休もう。にさんにち、ゆっくりしよう。」
月は頭上のはるか向こうに出ていた。
先ほどと変わらない、瑠璃色の空を照らしながら。
「白夜、ここでなにしてるの?」
「あ、お母さん。」
庭から月を見ていた。
「ほら、今日は月が丸いから……。」
「そう……、湯冷めしないようにね。」
「うん。」
「……母さん。」
部屋に戻ろうとする母に声をかける。
「どうしたの?」
細い体に何か不安そうな目。
私は。
「ううん。何でもない。」
「そう。おかあさんもお風呂入っちゃうわね。」
「うん。」
私は……。
あの人に何を伝えようとしたんだろうか?




