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僕が死んだ夜、猫は「ごあん」と鳴いた ~銀色の相棒と異世界を歩く~  作者: 浮島太郎
下僕、モフモフ三匹を連れて王都へ行く

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第29話 僕下僕。それなのに神獣使いと称賛されてしまう

森を蝕んでいた瘴気は、消えた。

王様直属、王都封印局の精鋭――セラフィナ隊長率いる封印隊と力を合わせ、

発生源だった瘴気核も、きれいさっぱり破壊した。

これで僕らは、文句なしの大手柄を引っ提げてレノアの町へ凱旋――のはず。


だが、決め手は、猫のオシッコだった。

もちろん、そんな真相を堂々と公表できるはずもない。


表向きは

『神獣様の聖なる浄化によって人々は救われた』

ということになっている。


嘘ではない。確かに嘘ではないけれど……

ずいぶん神々しく盛ったものだ。


そして町へ戻った途端、なぜか僕まで英雄の仲間入りをしていた。

「神獣使い様!」「召喚術師様!」

いや、待ってほしい。どちらも僕のことではない。

「違うんです。神獣使いじゃなくて、僕、下僕……」

「いやぁ、神獣使い様はダジャレまでお上手じゃ!」

(ダジャレじゃねーわ!)


僕が必死に訂正している横で、当の神獣様はといえば――

グレイル支部長から、約束の肉樽を受け取って嬉々としていた。

町中の歓声などどこ吹く風。ギンの尻尾は、ゆったりと右へ左へと揺れている。


しかも、いつの間にか別の取引まで成立していたらしい。

別途、干し肉のお礼とばかりに、リーネはギンの銀色のモフモフへ顔を埋め、至福のひとときを満喫していた。

その光景を、セラフィナ隊長と結界術師のユーディアさんが、なんとも羨ましそうに見つめている。


やがて、二人の我慢も限界に達した。


「わ、私にも神獣様をモフモフすることは許されるだろうか……?」


「ともに戦った仲間ですもの。少しくらいは……ね?」


ちらちらと僕を見ながら、なおも諦めきれない様子だ。

どうやらモフモフは、大人の女性の理性すら容赦なく溶かすらしい。


ここで妙な対抗心や嫉妬心に火がついても面倒だ。僕はそっとギンに声をかける。


「ギン。悪いけど、二人にも頼むよ」


――よい。

意外にも、返事はあっさりしたものだった。

太っ腹だ。よほど肉樽が嬉しかったらしい。

まったく、現金な神獣様である。


一方、カーバンクル――

亡くなってから三十年ぶりに出会った白猫のゲンは、

キャリーケースっぽい木の檻の中にちんまり収まり、

借りてきた猫のようにおとなしく丸まっている。


異世界のステータスで確認すると、カーバンクルの説明はこうだった。


『浄化された地脈の火と虹光から生じる希少精霊獣。敵意なし』


敵意なし。なら、ひとまず問題はない――はず。


とはいえ、ゲンは瘴気核から生まれた――というより、

勢いよく飛び出してきた存在だ。


念のため、今はケースに入ってもらっている。


ただ、僕が身元を保証したことで、王都への連行されるのは免れた。

自分のペットが知らない場所へ連れていかれ、あれこれ調べられるなんて、やっぱり耐えられない。


しかも、嬉しい話はそれだけではない。

ギルドは通常の成功報酬に加え、特別報酬まで用意してくれた。

さらにセラフィナ隊長からは、王都より『特別奨励金』なる報奨金まで頂いた。


通常の成功報酬は、一人につき金貨一枚。現代日本の感覚なら、およそ百万円だ。

そこへ、特別報酬の銀貨五枚と、特別奨励金の銀貨五枚が加わる。

銀貨十枚で金貨一枚。つまり合計は金貨二枚――二百万円相当。


冒険者稼業……夢がありすぎる。

いや、下手をすれば命がなくなるんだけど。


それでもヤバい。

ギンの分も僕が預かることになり、僕らの家計は一気に潤った。


報酬の話がひと段落したところで、王都の事情についてもいくつか教えてもらった。

そういえば、王族であるエルフェリアさんには、これからどう接すればいいのだろう。

こちらの礼儀作法も仕来りも、僕にはさっぱり分からない。


けれど今は、まず始まりの村へ帰ろう。土産話なら山ほどある。

報酬のおかげで、当面の暮らしにも困らない。


カイとリーネ、それに封印隊のみんなと別れるのは寂しい。

短い間だったけれど、命を預け合った仲間なのだから。


それでも、村では神獣様ギンと精霊獣ゲン、そして元魔獣犬のポンタとの暮らしが待っている。

村長や女将さんたちも、きっと僕らの報告を首を長くして待っているはずだ。


こうして僕らは、レノアの町のみんなに別れを告げた。


たくさんの歓声と、名残惜しさを背中に受けながら――

始まりの村へ向けて、僕らは再び歩き出した。


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