第十三話 あとしまつ
刑事課の面々が現場に到着したのは、栗花落君と北潟幸恵を乗せた救急車が出て直ぐのことだった。
「……うっわ、何ですかこれ」
開口一番、植木は顔を引き攣らせた。
それもその筈。先程、栗花落君が居た場所には血溜まりができており、応急処置をしていた俺のシャツも血塗れだ。傍から見たら酷い有様だろう。
「遅かったね」
「……御子神さん。それ、大丈夫なんですか?」
「俺の血じゃないよ。栗花落君が負傷して、この状態」
「ええ!? そりゃ、大変なことに……。と、とりあえず、状況についてお話いただけますか」
状況を話すと言っても、刑事課に提供できる情報は殆どない。
北潟幸恵を尾行中、何者かによって栗花落君が負傷。北潟幸恵は、現場で意識を失った――と。
怪異に関わる内容は全て伏せて伝える。
「――なるほど……。相変わらず、特案が絡むと意味不明なことが起きるなぁ」
植木が困ったように頭を掻く。
その仕草はどことなく真田さんに似ていた。
植木に事のあらましを伝えている内に、新橋杏南を張り込んでいた志木さんがこちらに合流となった。
「お疲れ様です」
「いやあ、派手にやったね……」
志木さんはじろじろと俺の悲惨な状態を見ながら呟く。
「新橋杏南の方は大丈夫なんですか?」
「勅使河原さんがそのままついてるから大丈夫でしょ。――それより、お前の読み通りだったって感じかね」
志木さんは少し声のトーンを落としつつ、ちらりと現場確認を行っている刑事課に視線をやる。
「……そうですね。北潟幸恵の前に、般若面の怪異が現れまして。北潟幸恵を庇った栗花落君が負傷。交戦の末に怪異は消えました」
「消えた、か……。まあ、この後どう転ぶかは、呪い次第だなあ。ひとまず、お疲れさん」
「どーも」
志木さんは呪い次第と言ったが、既に二人も人を殺しているのだ。
犯人は無事で済むまい。
「――じゃ、現場は俺が担当するから、お前はさっさと着替えて病院に行ってきな。そんな恰好でうろつかれたら困るし」
「車もそのままなので持って帰ってもらっていいです?」
「あー、はいはい。そっちも回収しておくから」
「助かりまーす」
そう言って、車のキーを志木さんに投げ渡す。「投げるなよ」と不服そうに言われたが、笑って誤魔化しておいた。
植木にもこの場を離れる旨を伝え、俺は早々に現場を後にした。




