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異相の理  作者: 赤鰯 はこぼれ
第三章 わが身ひとつの 心にも
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第十三話 あとしまつ

 刑事課の面々が現場に到着したのは、栗花落君と北潟幸恵を乗せた救急車が出て直ぐのことだった。


「……うっわ、何ですかこれ」


 開口一番、植木は顔を引き攣らせた。

 それもその筈。先程、栗花落君が居た場所には血溜まりができており、応急処置をしていた俺のシャツも血塗れだ。傍から見たら酷い有様だろう。


「遅かったね」

「……御子神さん。それ、大丈夫なんですか?」

「俺の血じゃないよ。栗花落君が負傷して、この状態」

「ええ!? そりゃ、大変なことに……。と、とりあえず、状況についてお話いただけますか」


 状況を話すと言っても、刑事課に提供できる情報は殆どない。

 北潟幸恵を尾行中、何者かによって栗花落君が負傷。北潟幸恵は、現場で意識を失った――と。

 怪異に関わる内容は全て伏せて伝える。


「――なるほど……。相変わらず、特案が絡むと意味不明なことが起きるなぁ」


 植木が困ったように頭を掻く。

 その仕草はどことなく真田さんに似ていた。


 植木に事のあらましを伝えている内に、新橋杏南を張り込んでいた志木さんがこちらに合流となった。


「お疲れ様です」

「いやあ、派手にやったね……」


 志木さんはじろじろと俺の悲惨な状態を見ながら呟く。


「新橋杏南の方は大丈夫なんですか?」

「勅使河原さんがそのままついてるから大丈夫でしょ。――それより、お前の読み通りだったって感じかね」


 志木さんは少し声のトーンを落としつつ、ちらりと現場確認を行っている刑事課に視線をやる。


「……そうですね。北潟幸恵の前に、般若面の怪異が現れまして。北潟幸恵を庇った栗花落君が負傷。交戦の末に怪異は消えました」

「消えた、か……。まあ、この後どう転ぶかは、呪い次第だなあ。ひとまず、お疲れさん」

「どーも」


 志木さんは呪い次第と言ったが、既に二人も人を殺しているのだ。

 犯人は無事で済むまい。


「――じゃ、現場は俺が担当するから、お前はさっさと着替えて病院に行ってきな。そんな恰好でうろつかれたら困るし」

「車もそのままなので持って帰ってもらっていいです?」

「あー、はいはい。そっちも回収しておくから」

「助かりまーす」


 そう言って、車のキーを志木さんに投げ渡す。「投げるなよ」と不服そうに言われたが、笑って誤魔化しておいた。

 植木にもこの場を離れる旨を伝え、俺は早々に現場を後にした。

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