魔蟲戦 その1
「そろそろ目的地に到着ですよ。」
“エルブンデンドロン”と言われる100mを越える木々が生える森の中を進む。
樹高の高い木々が立ち並ぶため、地表は薄暗く気温が少し低い。
地表に届く少しの光でも成長できるコケやシダ類が生えている程度である。
そんな薄暗い森の道なき道を俺達は進んでいた。
フレヤの“ミッション達成”の為にである。
そうやって進んで行くと森の中に光が差すところが見えてきた。
どうやらそこが目的地の様だ。
一旦ここでキャンプを張り、討伐の準備をするのだ。
フレヤのミッションは討伐依頼と言われる特定の魔物を退治するミッションだ。
冒険者のミッションには大きく分けて5種類ある。
討伐、護衛、採取、探索、救助
その中でも多いものが討伐と採取である。
今回の討伐対象は“ニジオオキリムシ”
“キクイオーム”の成虫であり昆虫型の魔物、魔蟲と言われるモノなのだ。
この魔蟲がエルブンデンドロンに卵を産み付けるのを減らす目的がある。
だがこの討伐依頼の難易度はBランクである。
本来、Dランク冒険者の俺たち(出発時にランクを上げておいた)が受けることは出来ないのだが・・・。
「貴方たちがDランク冒険者で助かりましたわ。
Eランクだとミッションを受けることが出来ませんでした。」
ドワーフのフレヤはCランクの冒険者である。
Cランクの冒険者が同程度のランクの冒険者二人以上と組んで討伐する場合、一つ上まで許可される。
そして、Dランク冒険者は二人でCランクと見なせる。
(正確には二人で一つ上のランクとして扱える。)
森林の魔物退治ならエルフが行えば良いと考えられるが、エルフは“ニジオオキリムシ”討伐が得意ではない、と言うより苦手である。
“ニジオオキリムシ”は名前の通り虹色をしている。
この虹色が魔法を阻害する働きを持つ。
そして、この魔蟲と呼ばれる種類の特徴として固い外殻がある。
それは矢、細剣、槍の突系統、斧、刀、剣の斬系統の武器では倒すことが困難なほど固い。
エルフが得意な魔法、矢、細剣での討伐が難しい。
正にエルフが苦手とする魔蟲なのである。
「では各自、武器の用意はいいかしら?」
フレヤが各自に準備が出来たのか確かめる。
彼女は身の丈以上もある槌斧と言われる一方が槌になっている斧。
パメラは籠手。
フレデリカは杖。
そして俺は六尺棒である。
全員、叩系統の攻撃武器である。
隊列は前衛をフレヤとパメラの二人。
中央に回復役のフレデリカ。
殿に俺となっている。
「これはエルフからの依頼ミッションで、討伐目標数は3体。
制限時間はないので一日1体でも問題ありませんわ。」
フレヤがミッション内容を説明するとゆっくり前進し始めた。
最低限の3体でも1日1体なら三日かかることになる。
出会う数が少なければもう少し時間が掛かるかもしれない。
その証拠に、フレヤは食料を1週間分用意する様に言っていた。
しばらく進むとフレヤが立ち止まった。
それに呼応して俺達も立ち止まる。
「幸先良いですわ。」
フレヤが指さすその先を見ると虹色の巨大なカミキリムシが木に止まっていた。
遠くから見ると木に抱き着くような形で止まっている。
木自体が樹高100m直径でも10mもある為、その大きさが判ると言うものだ。
「“ニジオオキリムシ”が魔蟲として最悪なのは卵を産み付ける位置が木の一番下である事です。」
フレヤによるとニジオオキリムシは根元に近い位置に卵を産み付ける。
底卵から孵った幼虫は上を目指しながら木を根元から食い荒らすことになる。
その結果、再生も不可能なダメ―ジを負う。
正に森林の害虫、この場合は害魔蟲か?
戦闘に備え、加速、身体強化、盾の呪文を使いパーティを強化する。
当のニジオオキリムシは産卵のための穴をあけようとしている様だった。
木をかみ砕くバリバリと言った音が響きだす。
「いきますわよ!」
フレヤの合図と共に、ニジオオキリムシに突撃する。
加速と身体強化による効果で移動速度が大幅に上がる。
僅かな間でニジオオキリムシに肉薄し速度の乗った攻撃を叩き込む。
ベキョ!ドサッ!
ゴシャ!
ゴスッ!
フレヤの槌斧によって叩き落とされ、パメラの籠手によりその頭を叩き潰される。
そしてまだ動くその体を俺の六尺棒で地面に縫い付ける。
「ええええええ?」
Bランクであるニジオオキリムシを瞬殺した為、驚きの声を上げるフレヤ。
「貴方たち本当にDランク?」




