不運の呪いとフレヤの提示
俺はギルドへ向かう馬車の中で木箱を調べることにした。
取り敢えず、鑑定の呪文をかけて調べてみる。
魔法をかけてはいけないとは言われてなかったから大丈夫だろう。
木箱:フレヤ製作
からくり木箱、100個の仕掛けを作動することで開けることが出来る。
・正規手段では無い方法で開けた場合、不運の呪い(抵抗不可)
・箱自体を破壊した場合、不運の呪い(抵抗不可)
不運の呪いね・・・・
不運の呪い
運が悪くなる。あらゆる判定にペナルティが付く。
成功しても効果が最低の物しか得られなくなる。
流石に呪いだけあって、効果は抜群だ!!
ペナルティの程度までは判らないが内容からすると最悪の部類にはいるだろう。
通常、この様な強力な呪いはかかることが無い。
と言うのも呪いが強力なほど代償が必要であり、それが無い場合、抵抗が容易になる。
だがこの呪いは代償が無いのに抵抗不可である。
箱の上に現れた文字の誓約に同意したのだから抵抗不可になると言ったところか。
解析を唱えて詳しく調べようとするが弾かれた。
かなり強力かつ特殊な対魔法障壁の様だ。
鑑定は良いが解析はダメだという事か。
「そろそろギルドに着くわよ。」
と御者台からパメラが声をかけてくる。
急いで木箱を机の上に置き馬車を降りる用意をする。
アサギリのギルドはケレスのギルドと違い受付のカウンターが三つある。
(ケレスは1つ。)
それぞれのカウンターには人間、獣人、エルフの受付嬢が冒険者を捌いている。
何処の受付嬢にも言えることだが、美人が選ばれるようになっているのだろうか?
そして、冒険者ギルドの定番と言える依頼掲示板と食堂兼酒場が併設されている。
フレデリカは気になったのか先に依頼掲示板を見ている。
受付嬢を見たパメラが
「へぇ。エルフの受付嬢は珍しいわね。」
「そんなものなのか?」
「エルフの自体が珍しいからね。でも、“エブンデンドロン”がある為かな。」
「?エルブンデンドロン?」
「高さが100mほどある巨木の森のことよ」
「世界樹ほどでないにしてもエルフはその森を大切にしているからね。」
「その関連の依頼も幾つかあるはずよ。」
「あ、本当だ。“キクイオーム”退治、1匹10SP。ランクはD。」
「1匹でその依頼料だと嫌な予感しかしないな。」
その依頼内容を持って受付嬢に聞いてみる。
「ようこそ。アサギリのギルドへ。私は受付嬢のヘレンと言います。今日はどんなご用件で?」
「僕らは見聞の旅の途中なのです。」
と言ってギルドカードを出す。
「皆さんは見聞の旅の途中ですか、・・・ああジンネマンさんですか。冒険者一家の。」
「あ、すみません。“キクイオーム”の話でしたね。」
ヘレンさん曰く、全長5mほどの巨大芋虫でエルブンデンドロンの葉を食い荒らす魔物なのだそうだ。
「5m・・・」
「胴回りは1m近くあるそうよ。この依頼、受けるの?」
「と、とりあえず。パスで!」
「それ以外となると、この時期はFランククラスかなくてお勧めできませんねぇ」
ヘレン曰く
この時期は“キクイオーム”退治を主としている為、他の退治依頼は受理していないそうだ。
常時必要とされるFランクの採集系があるが、これはFランクの冒険者が日当を稼ぐための物であると言える。
Eランク以上の者はよっぽどのことが無い限り手を出すことはタブーとされている。
「仕方がない。今日の所は宿をとって明日又来よう。」
「そうね、流石に何日も馬車のベットじゃ疲れるし」
「その割にパメラは真っ先に寝るよな。」
「睡眠不足は乙女の天敵なのよん。」
等と言いつつ、馬車に戻る。
ん?
「ここに置いておいた木箱を知らないか?」
「私とパメラは先にギルドに行ったからヴィンが最後のはずよ?」
「おかしいな?確かにここに置いたはずなんだが・・・」
この馬車の盗賊対策はかなり強力だ。
何かを盗もうとこの馬車に入ろうとしても障壁が発生し中には入れない。
万全の対策と言える。
「あれ?この馬車お兄ちゃんの物なの?」
馬車の近くにいた少年が訊ねる。
「そうだよ。何か気になることでも?」
「うーん。さっきお兄さんでない人から箱を忘れたから取って来てって頼まれたんだ。」
「ええ?でその人は?どんな人?」
「お兄ちゃんより背の高い人だよ。で、小物入れも忘れたからそれも取って来てと頼まれたんだ。」
「今その人は何処に!!」
少年からその人物がいた場所に急いで向かうが既にいなくなっていた。
何という事だ。
箱を馬車から持ち出した少年は忘れ物を運ぼうとしただけで盗もうとしたわけではない。
万全と思えた対策も本人が盗むつもりで無いのならば対策にならないという事なのだ。
困った。
不運の呪いをどうすればいいのだろうか?
このままだと確実に呪われてしまう。
チュンチュンチュン
小鳥の無く声が聞こえる。
もう朝か・・・。
あれからいろいろ呪文を試してみた。
まず無くなった木箱を思い浮かべての物品探査。
結果・・・反応せず。対象に対魔法障壁があるため感知できない様だ。
次に啓示。
結果・・・“アサギリの町にその箱はある。”と出た。この街について詳しくないのが原因だろう。詳しくなる為の時間もない。
次に物品探査を多重詠唱し魔法障壁の突破を試みる。
結果・・・反応せず。ついでに精神力切れで朝まで気絶することとなった。
「すみません。こちらの宿にジンネマンさんと言う方はお泊りでしょう?」
朝早くからフレヤがやって来た。
木箱の確認の為だろう。
だが、返却できる木箱はない。
「・・・と言うわけで木箱が無くなったのです。」
「ふぅ。それは想定外です。」
「このままだと契約不履行になるので“不運の呪い”が掛かりますよね?」
「そうですねぇ。正確には私が契約不履行と判断した時なのですけどね。」
「え?それはどういう?」
「流石に期限の朝に木箱が戻ってないから契約不履行となっていては“呪い”が掛かりすぎます。
なので、私が不履行と判断した時のみ呪いが発動するのです。」
どうやら呪いの発動まで猶予があるらしい。
「予定と少し変わりましたが、ジンネマンさん。」
「はい?」
「貴方たちが私に虚力してあるミッションを達成してくれるなら“契約履行”としましょう。」




