旅は道連れ
爺ちゃんが用意してくれた幌馬車はすごい性能だ。
内部にキッチン、魔道コンロや流し台、保冷箱(内部に冷却魔法が常時かかっている箱)がある。
そして、折り畳みベッドが最大10人分ある。
(展開が複雑怪奇だが・・・。)
という事は最大10人乗ることが出来そうだ。
その中でも特筆すべきは貯蔵庫であろう。
紋章術と言う、魔法を刻み込む為の術式の粋を極めたものという事で、積載量が多くなっている。
それにより様々な設備が折りたたまれている。
例えば浴室もその一つである。
また、馬車に張っている幌自体も特殊な繊維で出来ているらしい上、複雑な紋章が刻まれている。
紋章の効果に盗賊対策として、悪意ある者はこの馬車に乗り込めない仕組みのがある様だ。
「しかし、爺ちゃんはこんな幌馬車どうしたのだろう?」
と俺がつぶやいたのをフレデリカは聞いていたのか
「魔王を倒した時に使っていたものだそうよ。」
やはり国宝級の幌馬車じゃないか。
それを引く二頭の馬も戦馬の血を引く馬で、うちの家では1、2を争う馬だ。
黒い方の馬をシュバルツ、茶色い方をウインディアと言う。
力も強く体力もある申し分ない馬である。
(至れり尽くせりの馬車だなぁ。)
フレデリカと二人幌馬車に乗る。
ちょっとした新婚旅行モドキって感じか?
ちょっと緊張してきた。
村の門から半日ほど進むと川に出る。
川がここら辺一帯の境界になっている。
この先はベルクール男爵領となっている。
平民の出だが周りとの調停がうまく、その外交の手腕で男爵になった人物である。
当然、領地経営でもその手腕が発揮されている。
ベルクール男爵領との境の川には橋が架かっている。
その袂に女の様な人が手を振っている。
(うん、きっと知らない女の人だ、知っている人物に似ているがここにいるはずが無い。)
記憶にある人物は学園の研究室に在籍しており、学園はここから馬車で一月近くかかる。
この幌馬車の出発に合わせてやって来ることはまず不可能である。
「どもー」
おれは軽く会釈して通り過ぎようとした。
「まてぃ。」
振り返るとそこには鬼がいた。
「いやーねー。似たような人ってこんな美人は他にいないでしょう。」
「・・・美人は女の人の形容詞で・・・。」
「それがなにか?」
目が笑っていない。
よし、この話題は触れないでおこう。
「ところで、パメラはなぜあそこに居たのだ?」
話題をそらすためにここにいた理由を聞いてみる。
「ああ、それね。研究の過程でベルクール男爵の屋敷にいたのよ。
すぐ近くにヴィンやフリッカがいることを思い出して連絡したら、馬車で出発するっていうじゃない。
慌てたわよ。」
どうやら、フレデリカに連絡を取って事の次第を知ったらしい。
「聞けば面白そうな旅だし、私も付いて行くは。」
「おいおいパメラ。研究の方はどうするのだ?」
「研究はひと段落したし、次のステップには新たな発見が必要だからね。」
「それにフリッカの親御さんにもよろしく頼まれているしね。」
なぬ?
そうか、フレデリカの家の方に何も言われなかったのはそんな取り決めがあったからか・・・。
叔父さん、パメラのこと知らないのではないのか?
「というわけで、よろしくね。」
出発半日もせず、人数が増えた。
斯くして、新婚旅行モドキは半日で終わりを告げたのであった。
幌馬車は某RPGの馬車のイメージです。




