旅の始まり
クローナの遺跡では“自動照明”が機能していた。
それらの資料も整理されて研究所にあり研究対象になっていた。
だが、不明な部分が多く再現は現時点で不可能となっている。
その自動照明は人が近づくと明かりが灯るが物や動物では灯らない。
知っている技術より一つ上の技術が使われている様だ。
調査資料から明かりが灯るための仕組みの位置も今ひとつわからない。
それを知る為には自動照明自体を分解する必要がある。
が、知らない技術の場合、一度壊してしまうと元に戻すことは非常に難しいだろう。
そして、遺跡を構成する建材。
何百年たっても劣化することの無いコンクリート。
ローマン・コンクリートが使われている。
これは地球の古代ローマ帝国時代に使われていたもので、コロッセオにも使用されている。
つまり、千年以上持つことは証明されていると言える建材である。
ローマン・コンクリートには火山灰が必要であるがこの近くに火山はない。
火山は昔の賢者が開いた温泉郷“ハルコーネン”の近くにしかない。
クローネの遺跡ではこれ以上の情報は得られそうもない。
やはり、他の賢者の遺跡も調べるべきだろう。
それらの遺跡のどれかには現状を打破する何かがあると思う。
ここから一番近い遺跡は“ギルダーの隠れ家”と言われる遺跡だ。
“賢者クローナ”の関係者であるから、その遺跡にも何らかの技術が使われている可能性が高い。
転生者の遺跡を調べるならば、先ずはそこを目指すべきだろう。
問題は爺ちゃん達にどう言うかだ。
夕飯時に爺ちゃん達とフレデリカがいたので遺跡巡りについて話す。
「ふむ。賢者の技術か。確かにそこに手掛かりを求めるか。」
「賢者が関係する遺跡は数多くあるわよ。
どこを調べるのかは前もって決めておくことをお勧めするわ。」
「何時出発予定だい?」
どうやら爺ちゃん達は遺跡巡りを行う事に異論はないようだ。
そんな中、フレデリカは
「それなら私もついて行く!」
「いや、これは俺の研究の・・・」
「「「「それは良い考えだ!」」」」
爺ちゃん達が一斉に同意する。
「フリッカちゃんがヴィンと一緒なら無茶しないでしょう。」
「うんうん。ヴィン、フリッカちゃんを守ってやるんだぞ。」
爺ちゃんも婆ちゃんに賛同している。
それを聞いた母さん達が
「そうね、フリッカちゃんなら料理も上手だしね。」
「冒険者にとって食事は大切な要素だからな。」
「いや、とりあえず俺は一人で・・・料理も出来るし。」
「・・・ヴィン。あれは料理とは言わんぞ。」
父さんの指摘に何も言えない。
何故、あの物体X(俺の料理)を知っているのだろう。
その後もいろいろ抵抗してみたがフレデリカが同行することになった。
魔法も使えるし料理も旨い。
確かに同行者として申し分ないだろう。
旅立ちの日、起きると家の前に大型の馬車が止まっていた。
二頭立てで幌の付いている荷台をけん引している。
荷台の中を見ると簡易ベットになる座席と調理道具一式が納められたキッチンが付属している。
キッチンには魔力で火を起せる魔道コンロが備わっている様だ。
しかも真新しい。
しばらくその幌馬車を見ていると後ろから声がかかる。
「どうだ。気に入ったか?」
振り向くと一家のみんながニコニコしながらこちらの様子を見ている。
「何時か旅に出る時のために用意しておいたのだが、こんなに早く必要になるとは思ってもいなかったよ。」
「冒険者たる者、一度は親元、国元を離れて世界を見るべきだからな。」
「遠慮はいらないぞ。これは親として、先輩冒険者としての餞別だからな。」
どうやら、だいぶ前からこの日の為に用意された物らしい。
「・・・ありがとう。・・・おれ・・・。」
何か、感動して言葉に表せない。
フレデリカと俺は馬車に乗り込む。
馬車自体の座り心地は悪くない。
長時間乗っても疲れない様に様々な工夫や魔術的特性がある様だ。
「じゃあ、行ってきます!!」
「気を付けていくのだよ。」
「フリッカをちゃんと守ってやれよ!」
「飲み水には気を付けるのだぞ。」
「馬車自体の魔法防御は結構あるからと言って頼り過ぎないようにな。」
出発間際にすごいことを言われたような?
ひょっとして、この馬車自体、結構な価値なのでは?
と考えながらゆっくりと馬車を走らせる。
天気も良く、雲一つない青空が広がっている。
旅の始まりとしては申し分ない。
「ねぇ。ヴィン。」
「ん?」
「・・・私が付いていくのは・・・迷惑じゃない?」
「そうだなぁ。」
フレデリカは俺が一人で旅に出ようとしたことが気にかかっているのだろう。
「小さい時から一緒だったし。
学園に先に入学した1年ぐらいの間、奇妙な感じだった。
だから、今更、一緒にいないのは何か変だよ。」
「うん。」
フレデリカは嬉しそうにそう呟いた。




