最後の魔王
“魔王”それはこの世界最大級の厄災を示す。
ある時は超巨大ドラゴン、ある時は強大な帝国の皇帝、又ある時は邪教集団であった時もあった。
それらは50年から100年の周期で復活し、世界に厄災をばらまく。
それが最後とはどういう事だろうか?
「爺ちゃん。最後の魔王って?魔王を倒したのも初耳だけど・・・」
「おお、ヴィン。そう言えば話していなかったな。」
俺の爺さんは話し出した。
わしは“ボリス・ジンネマン”。
トースィア村、都であるパーロから遠く離れた辺鄙なところ、いわゆる辺境だ。
村の近くには魔獣の住む森があり、人が住むには厳しいところだった。
”ところだった”というのはその村も都も国さえもう無いからなのだ。
最後の魔王であり深淵のアブソリュート、全てを喰らう者によって失われた。
わしはその頃、丁度できたばかりの冒険者、アバロン学園にいて無事だった。
剣の腕を見込まれて一人学園に通っていたのだ。
”故郷壊滅”
この事実で天涯孤独なった。
だが、故郷を失た事実はワシを奮い立たせた。
それまでのんびりと過ごしてきたのだが、”打倒魔王”を目指して猛特訓の日々が始まったのだ。
なりふり構わぬその姿、行動に恐れられたり疎まれたりした。
だがそんな時に支えてくれたのがばあさんであり、当時の仲間だった。
たゆまぬ鍛錬の末、”剣聖”の域にまで届いたワシは魔王を討伐に選ばれるまでとなった。
かくして魔王は倒された。
だが、魔王を討伐しても倒すだけで何年かすればより強大になり復活する。
今回の魔王は国一つを滅ぼした。
次は国を一つ二つ、いや世界をを滅ぼす可能性が高い。
復活できない様にする為には、魔王がなぜ生まれたのかを知る必要があった。
魔王が生まれた地、それは”最果ての地”と言われた世界の果てにある。
冒険は困難を極めた。
数多の国をめぐり秘境を超えワシらはその地にたどり着いた。
そこは生き物さえ存在しない静寂の世界だった。
風さえ起らない白砂一面の世界。
そんな静寂の世界の中心にそれ、のちに”魔王の祭壇”と言われる物があった。
それは銀色の円筒形をした筒のような何かで、時折、光が明滅し動いているようだった。
ワシらはそれを壊すために攻撃を試した。
はっきりとした異変が起こったのは、ばあさんが広域呪文を使用した時だ。
ばあさんが発した、流星の嵐が銀色の筒に吸い込まれた。
それまでの中級の技や呪文には反応しなかったのだが、上級の呪文に反応したのだ。
呪文を吸収したにとどまらず、上級剣技も吸い込まれる。
それと同時に銀色の円筒の中で何かが集まるのが感じられた。
仲間の賢者が言うにはこの筒は周りから何らかの力を吸い取ることで魔王を作り出すのだろうと。
この辺りが生物さえ存在しない静寂な環境になって居るのは、エネルギそのものを吸い取るためであろう。
だが、このまま放っておくと第2の魔王が誕生するのも時間の問題であった。
上級の剣技や呪文でさえ吸い取られてしまう。
銀の筒を破壊する為にはそれを上回る力が必要だった。
ワシやばあさんはそんな技や呪文は知らなかった。
一人を除く仲間も同じだった。
だが賢者だけは一つだけ方法を知っていた。
”アルティメット・ファイナル・アーツ”
賢者が言うには本来、魔術の杖の内包するエネルギーを攻撃に変換する業だが、杖自体にスキルを移すことによりスキルの持つエネルギーを攻撃に変換する最終奥義だそうだ。
ワシらはより確実性を高めるために、自らの持つ最も高いスキルを移した。
追加して移すことも試したが、各自1つしか移せなかった。
だが、その甲斐あって最終奥義にふさわしい威力の技だった。
銀の筒は最初の方こそ、最終奥義のエネルギーを吸い取り始めたがある一定の量を吸い込むと、それ以上吸い込まなくなり自己崩壊を始めた。
そして轟音とともに跡形もなく吹き飛ぶ。
後には銀の筒らしいものが残されるだけであった。
かくしてワシらはスキルと引き換えに魔王の復活阻止に成功したのじゃ。
昔の爺ちゃんは剣聖だった。
そのスキルを代償に魔王が復活できないようにした。
だから“最後の魔王”という事である。
つまりこの世界には魔王は存在しない。
魔王などの厄災も過去の事になったのだ。
そして、学園での因縁の相手、ロドリコは親ともども捕まり斬首になるらしい。
来るべき日の為にスキルを上げて今や万色無双、万能魔法戦士と言われるようになっていた。
だが、それらが必要とされることはなかった。




