万色無双
「馬鹿なっ!
火炎嵐にあそこまで大きくなったブラックプディングを焼き尽くせるはずがない!!
それに今の発光は見たことが無い!
何をしたヴィンフリート!!」
呪文の詠唱の際に出る発光現象も唱えた系統の色が出る。
通常の火炎嵐では赤く輝く発光現象を伴う。
俺の唱えた呪文の発光の色は金色に輝いていた。
ロドリコは火炎嵐ではブラックプディングを消滅できない事を知っていた。
その上で呪文を使うように煽ったのだ。
普通の火炎嵐を使えばフレデリカを焼いた上にブラックプディングは生き残ると言ったことになっただろう。
だが、発光の色が示す通り、俺が使った呪文は火炎嵐ではない。
火炎嵐は赤魔法の中級、Lv10以上で使用できる呪文だ。
赤魔法のスキルさえ十分にあれば使うことが出来る。
俺が使った火炎嵐は赤魔法だけでなく、発火燃料である木粉を生成する緑魔法、広範囲に空気を取り込むための橙魔法、そして特定の範囲に効果を及ぼさない為の無魔法によって成り立つ。
魔法の構成自体が違うものになっていて、もはや別の魔法である。
赤魔法に加えて3つの系統を混ぜ合わせたことで爆発的な威力を生み出したのだ。
通常他の系統を合わせるのは2系統から3系統。
それも並行詠唱で効果を補助するだけで威力の上昇は低い。
完全に混ぜ合わせることは出来ない。
これは俺が持つスキル、“万色魔法”の効果なのだ。
「そんなはずはない!
火炎嵐であの量のブラックプティングを始末できない!
私の獄炎でさえ難しいのに!
低レベルの!
出来損ないのヴィンフリートなんかに出来るはずが無い!!」
「認めない!認めない!認めない!」
逆上したロドリコは血走った眼をしている。
「・・・・・そうだ、そうだよ・・・。」
突然何かに取り憑かれたかの様に独り言をつぶやきだした。
「何も難しい事じゃない。
今までと一緒だ。
ちょっと私の手間が増えるだけなのだ。
相手は出来損ないのヴィンフリート。何も問題はない。」
「・・・今まで通りここで始末してしまえばいいのだ・・・。」
そう呟くとロドリコは剣を振り上げ駆けだした。
「ヴィンフリィートォォォォォ!!」
「不変なる鋼よ!我が拳に纏え!金剛籠手!」
ガキャァーン!!
通常、剣道3倍段と言われる通り、槍や長刀に対して剣は三倍の技量が必要とされる。
これは「間合いの長い武器に対しては三倍の技量が必要である」と言う意味でもある。
従って、徒手空拳で剣を相手にする場合でも相手の技量を上回る必要がある。
ロドリコの剣のレベルは20。
赤魔法のレベルが30あるのだがどうやら魔法に偏って鍛えた様だ。
魔法も攻撃に偏っているらしく強化系の呪文を使った様子はない。
そのおかげで付け入る隙が出来たという事だ。
白系統の金剛籠手の他に
無系統の加速
橙系統の筋力上昇
緑系統の生命力上昇
を合わせて唱える。
混ぜ合わせて一度に発動できそうな気もするが今は試している時ではない。
ガン、ガガン、ゴン
ロドリコの剣を金剛籠手で受け止め、流し、弾く。
「何故だ!なぜ倒れない!!」
有効打を与えられない事に業を煮やしたのか、滅多矢鱈に切りかかってくる。
ガン、ガン、ガガン、ガガン、ガガン、ゴン、カン!
その剣を大きく弾き強化された拳を打ち込む。
「真空螺旋拳!」
ゴォン!
金剛籠手で強化された拳は螺旋を描きロドリコの体を吹き飛ばす。
「馬鹿な!螺旋拳だと!」
伊達に特訓を受けたわけではない。
パメラはかなり高レベルの格闘家らしく俺のレベルはかなり高くなっている。
螺旋拳はその際に習得した技で、それに槍術の“真空突き”を混ぜたものだ。
ロドリコは壁際まで吹き飛ばされ大きく間合いが空いた。
「夜の帳よ!現れよ!暗黒格子!」
ロドリコの周りが黒い雲で覆われる。
「何だこれは!何も見えんぞ!!」
ここに来たのはロドリコを倒す為ではない。
フレデリカを助け出すために来たのだ。
台の上にはフレデリカが横たわっている。
薬でも盛られたのか指一つ動かない様だが呼吸はしている。
着衣の乱れや外傷はない様だ。
「よかった、無事だ。」
おれはフレデリカを抱えると急いで出口に向かうのだった。




