獄炎
「変ねぇ・・・」
パメラが不思議そうに相手を見つめる。
「どうした?」
「ああ、フリッツ、ちょっと変じゃなかった?」
「変?・・・そう言えば手ごたえが少し軽かったな。盾で押し返す力が少し弱かったような?」
解呪の効果を考えても相手側の抵抗力が弱いと感じていた。
ニ、三合打ち合った攻撃は目を見張るようなものでは無い。
実力者にしては少し弱すぎるのだ。
「わざとじゃないのか?火焔壁に巻き込むために。」
「それは無いわね。その為にはある程度の抵抗が必要よ。でもそれも無かった。」
「・・・何が目的なんだ?ロドリコの奴は・・・。」
実際は作戦でも何でもなかった。
ほぼ毎日、ロドリコのレベルアップにつき合わされた結果、ロドリコ以外の参加メンバーは攻撃魔法や剣の攻撃でのダメージが残っていた。
回復の呪文は万能ではない。
傷は治せても体に蓄積された疲労は取ることは出来ないのだ。
(まったく、役に立たんな。ニ、三合しかもたないとは)
ロドリコ率いるファフニール寮の参加人数は多い。
その為、一戦ごとメンバーを変えることが出来る。
今回もロドリコ以外のメンバーを変えてきた。
だが、集まって来た者をよく見ると所々に切り傷ややけどの跡がある。
顔色も良くない。
「その方らせっかく与えた機会を無駄にするつもりか?」
「「「「いえ、我々はそのようなことは・・・」」」」
「ならばすぐに突撃を行い証明するのだな。」
「・・・わかりました・・・。」
(やはり、役立たずは予定通りの方法で役に立ってもらうか。)
ロドリコは隊列を組み突撃しようとする四人を見て不気味な表情を見せていた。
「ロドリコ以外、来た!」
アルフレートがそう叫ぶと、フリッツが大盾を構え先頭に立つ。
「先ほど戦闘が偽装ならこれで分かるはずだ。パメラとカーティスは両側から迎撃してくれ。」
「わかったわ。」
「わかったで。」
パメラは両こぶしを構えカウンタースタイルに、カーティスは弓を剣二本に持ち替えて構える。
ドガッ!
重い音が鳴るがフリッツは持ちこたえている。
「やはり威力が軽い。このまま押し返すぞ!」
フリッツがそう言った時、突撃してきた集団の後ろにロドリコが詠唱を始めているのが見えた。
「炎よ!煉獄の業火よ!」
「あれは獄炎の呪文!」
「流石に直撃を受けると不味いな。倒れはしないが行動に制限がかかる。」
獄炎の呪文はダメージが高い事に加え、朦朧、麻痺などの行動制限を与える呪文なのだ。
「相手と離れずこのまま押し込むわよ!!突撃してきた相手を壁にするわよ。」
「そうか!俺たちの位置を目視できなければ効果範囲に収めることは出来ないからだな!」
そう言うとパメラやカーティスは突撃してきた相手の影に入り、ロドリコの視線を外そうとする。
だが、それを見てロドリコは邪悪な笑みを浮かべた。
「不味い!!」
それを見てカーティスは咄嗟に叫びその場所から大きく離れようとする。
「遅いな。獄炎」
唱えられた獄炎の呪文はパメラ、カーティスやフリッツだけでなく味方をも巻き込んだ。
アリーナの半分を埋め尽くした炎は疲労困憊だったロドリコの見方を退場に追い込みパメラ、カーティス、フリッツの三人はなんとか退場にならずに済んでいるが麻痺で高ふぉどう不能に陥っている様だ。
「味方ごと巻き込むとは!正気か!」
「ふん。何とでも言え。彼らの様な愚民は私の役に立てたことを誇りに思うべきなのだ。」
「解呪!」
俺はパメラたちに解呪の呪文をかけ行動不能を打ち消そうとするが獄炎の呪文の方が強いようで解除できない。
「クフックフックフッ。無駄だ。お前ごときの低レベル呪文で打ち消せるものか!」
ロドリコはそう言うと剣を構えてこちらへ進んでくる。
「キキ、仇、取る!」
アルフレートが叫ぶと俺とロドリコの間に割り込んだ。
「魔獣憑依!!角熊!!」
魔獣使いは魔獣を使役するだけでなく、魔獣の力を肉体に宿すことが出来る。
アルフレートも持つ切り札だ。
角熊の力をその身に宿し、ロドリコにラッシュをかける。
ズガガガガガガガガガ!!!!
だが、ロドリコの盾とそれを強化する呪文、堅牢要塞に阻まれる。
ロドリコはゆっくり剣を振り上げアルフレートに一撃を加える。
ドシュ!!
「ふむ。堅牢要塞中はダメージが低くなるか。」
アルフレートも角熊を憑依させているだけあって防御力が上がっている。
しかし、こちらのダメージが通らない以上、倒されるのは時間の問題である。
状態から見て後2、3回ダメージを受ければ倒される可能性が高い。
今の解呪の威力では呪文強化を行わない限り堅牢要塞を解呪することは難しいだろう。
呪文強化は威力や効果が高まる半面、詠唱に時間が掛かる。
「その詠唱時間を短くする方法が・・・。それこそ省略する様に・・・。」
その時俺の頭に一つの考えが浮かんだ。




