10話:踏み出した一歩-前編-
翌朝。物音がしたので、目が覚めてしまう。
音がした方を見ると、カルレットが着替えていた。
「起こしちゃいましたか?」
騎士団の制服へ、袖を通し、襟を整えている。
街への滞在を、1日延長すると、寝る前に聞かされたことを思い出す。
「今日は1日、自由に過ごしていてください。街、見たがってましたよね」
そう言い、部屋から出て行ってしまった。
そんなこと急に言われても、と思いつつ、せっかくなので、街を散歩することにした。
着替えを済ませ、部屋を出る。
宿屋を出ようと、出入り口に向かった時だった。
どこからか、香ばしい匂いがしてきた。
「昨日、何も食べてないや」
そう思った時だった。ぐぅ……、とお腹が鳴る。
恥ずかしくて、お腹を抑えてしまう。
「誰も聞いてないよね……?」
「朝食どうぞ〜」
と、いつの間にか、隣に店員が立っていた。
恥ずかしさと、驚きで、反応できないままでいると、席に案内される。
「今日はお客様が多いので、こちらの席で、相席でお願いします」
街の出入り口が封鎖されていたから、と思いながら、席に座る。
店員は、目の前に座る、女性に一言告げると、去っていく。
印象的な桃色の髪に、薄緑色の瞳。
旅人なのだろうか、足元には大きな荷物が置いてある。
「気になる?」
聞かれてしまった。気になるものへ、視線が向きやすいのかな?と思ってしまう。
返事ができないでいると、女性は続けて言う。
「私の仕事道具が入ってるんだよ」
そう言い、荷物の中身を少しだけ見せてくれた。
そこには、見たことのない道具が、色々と入っていた。
「遺跡の調査とか、そういうことしてるんだよね」
村の近くにも、遺跡の跡地があったのを、思い出す。
「シトルフェン領から来たんですか?」
技術が進歩したシトルフェンから、よく調査隊が来ていた覚えがあった。
「そうだよ。今は帰ってる途中なんだけどね」
長旅なのだと分かる。道中のこととか、興味で聞いてみたい、そう思った時だった。
「ラナリア!出発の準備だ」
少し離れた席の男性が、女性を呼んだ。
「私行くね。また会えるといいね」
そう言い、荷物を背負うと、男性の元へと駆け寄っていった。
15人くらいで来ていたようで、一気に静かになる。
私は朝食を終えると、部屋へ剣を取り、外へ出る。
少し遠くに、調査隊が見える。荷物が多いと、大変そうだ。
ちょっとだけ見送る。
特にやりたいこともないので、塀の向こう、昨日の事件現場の方を眺める。
「オーランさん、よく気づいたな……」
見える景色の中で、小さな点を探すようなものだった。
よく見ると、オーランとカルレットらしき人物がいるように見える。
私は、昨日のことが気になるので、現場へ行ってみることにした。
歩いて向かう途中、昨日のことのせいか、人が少なく感じる。
裏路地の前には、騎士団員が立っていた。
「昨日、本部の方々と一緒にいた子か。2人なら、奥にいるぞ」
私たちから事情を聞いた騎士だったおかげで、通ることができた。
2人と合流しようとした時だった。
「調査隊のメンバーと癒着していた可能性か……」
不穏な空気を感じた。
「資金面において、シトルフェンの調査隊は裕福ですからね」
「あいつの可能性が高くなったな」
あいつとは誰だろう?そう思った時だった。
「このままだと、調査隊が危ないな」
私は耳を疑った。危ないってことは、狙われているってこと?
「また会えるといいね」
ラナリアと呼ばれていた、女性の言葉が浮かんだ。
なのに、二度と会えなくなるってこと?
頭から、女性の言葉が離れない。
何もしないなんて嫌だ。
そう思った時、気づけば、足は動き出していた。
今なら追いつけるかもしれないんだと、ひたすら走る。
見送った時間から考えて、そんなに移動していないと思う。
助けられるかわからないからって、立ち止まるなんて、嫌だ。
街の出入り口を越え、街道に出る。
向かっている先が合っているかなんて、知らない。
でも、きっと、この道だと信じて走り続けた。




