表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
繋がりの断片  作者: 寡猫
1章:選べなかった答え

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/17

9話:覚悟の先にあったものー後半ー

 宿屋へ戻る途中。私は、さっきの出来事を何度も思い返していた。


 助けられた命ではなかったと、分かっているのに、胸の奥が重い。

 人の死を目の前にして、動けなかった。

 もし、次も……、そう思うと、この先が不安になってしまう。


 オーランの判断は正しかった。

 守る側になりたいのに、守られてしまった。


「悔しい……」

 

 宿屋の前に着いた時、カルレットが扉の前で待っていた。


「話は聞きました。部屋でゆっくり話しましょう」


 そう言い、部屋まで案内される。

 その後ろ姿は、仕事として向き合っているからなのか、とても真剣に見えた。


 部屋に入り、真っ先に言われてしまう。


「覚悟と現実の違いがわかりましたか?」


 昨日と同じ、冷たい目をしていた。


 私は、何も言えなかった。選択を間違えれば、誰かが死んでしまう可能性。

 それ以上に、私は、本当に人を斬れるのだろうか。


 目の前で、母やナテアが危険にさらされていたのなら、迷わず斬れるとは思う。

 でも、それを、自分の正義だと、言えるのかがわからない。


「殺した、殺された、なんて現実は、日常ではないですから」


 そう言い、カルレットは、自分の手を見る。


「だから、私は決めたんですよ。自分が死んだら、守る以前の話ですから」


 守るために、殺すんじゃない。

 守るために、自分が生きなければならない。

 そのための選択なのだと、思った。


「それでも守れない命もあります」


 少しだけ、言いにくそうにしているのが分かった。


「それが現実ですよ」


 カルレットの冷たい目の奥に、別のものがあるような気がした。

 それが悲しみなのだと、私はこの時、思ってしまった。


 しばらく、誰も何も言わなかった。

 静かな時間だけが過ぎていく。


 それを破るように、部屋の扉を叩かれる。


「どうぞ」


 と、カルレットが言うと、ゆっくりと扉が開く。訪問者はオーランだった。

 部屋に入って早々、何かを悟ったかのように、私たちを見てくる。

 そして、一息ついてから、話し始めた。


「嬢ちゃんは、経験がないのに、ちゃんと前を見たんだ。俺だったら、泣いてたぞ」


 オーランの言葉に、カルレットが目を逸らす。

 それを見逃さなかったのか、続けて言う。


「カルレット。お前の気持ちもわかるが、現実を突きつけすぎるな。思い詰めるのは、心を壊す」


 考えているのか、少しの沈黙から、カルレットが言った。


「わかっているんですが……ごめんなさい」


 頭を冷やしてくる、と言い、部屋から出て行ってしまった。


「大目に見てやってくれ。あいつも色々あったんだ」


 オーランも、部屋から出て行こうとする。


「オーランさんは、どこへ?」


「この街の騎士団に協力してくる。……っと、今日は街から出られないと思う。自分なりに整理するといい」


 そう言い残し、行ってしまった。


 殺人犯が、まだ街にいる可能性もある。

 オーラン、カルレットは騎士団の人間で、知らないふりも出来ないだろう。

 

 不意に、剣に視線が行く。父が遺してくれた、形見の剣。

 私たちを守ってくれたものなのに、怖く感じてしまっている。

 

 あの日。ずっと泣いている私を抱きしめながら、父の名前を叫んでいた母を思い出す。


「アルディス!ねぇ!動いて!」


 動かない父の横で、ずっと。ずっと。


 騎士団が到着して、戦いは終わったのに、悲しみは終わらなかったんだ。

 そんな私たちを、ひとりの騎士が見ていた気がする。

 きっと、あの時のあの人も、今の私と同じだったのかもしれない。


 その日の夜、戻ってきたカルレットは、何事もなかったように振る舞っている。


「カルレットさん……その……」


 私は、少し気まずくて、どう接したらいいのか、わからないでいると。


「その時がきたら、話しますから」


 そう言って、カルレットは優しく微笑んでくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ