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ハレを望む  作者: 明深 昊
9章『ここにいる理由』
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7.5話 番外編:アクト目線

 物陰にユウトの気配を感じて迂回を考えたが、動く様子がなく心配になって覗き込む。


「大丈夫……?」


 反応はない。そこかしこに怪我をしていて、眠ってしまっているようだった。


 ユウトのことだから敵意を向けられれば目を覚ますだろうがこのままにしておく訳にもいかず、前に座って特に酷い右足から治癒していくことにした。


 少し前から魔法を使う度に魔力回路が痛む。いつもなら全身を一瞬で治してあげられるのに、それをすると右手が悲鳴をあげてしまう。


 一方通行にしてもらっている回路を元に戻してもらうことも考えたが、もう何時間も魔力が同じ回り方をしているのに、左手に魔力を回すために意識を切り替えられるとも思えずにそのままにしていた。


「……お前」


 起きたことに気づかず、急に声をかけられて思わず少し距離を取ってしまう。


「ごめんなさい……その、寝てたのは自分の意志じゃなさそうだったから……大丈夫かなと、思って」


 治癒を再開しながらそう言うと、ユウトは深く息を吐いた。


「今、何時」


 何時だろう。何時間も前に太陽は隠れてしまって、無心で魔物を探していたから時間の感覚がない。


「……わかんない」


 今の王都の状態を聞きたいのだろうがアクトはなにも把握できておらず、ユウトの望む回答ができなくて気まずくなってしまう。治癒を終えて奥からがんがんと響くような右腕の痛みを左手でおさえて、一つ深呼吸する。


「えっと……軍に、送ればいい?」


「お前、ずっと外にいんの」


「暴走が落ち着いたときに、一回帰ったけど……軍やギルドのことは……あまり把握してない。ごめんなさい……」


 ユウトはそんなアクトに呆れた様子で立ち上がって、ほらと手を出してきた。問題なく立ち上がれている様子に少しほっとして身構えていた力が抜ける。


「帰るぞ」


「ギルドに送ればいいの?」


 ユウトを送ったら自分も歩いてギルドに帰ろう。そんなことを思いながら聞くと、首を横に振った。


「ちげぇよ。俺が転移すんの」


「俺、戦わないと……」


 帰る選択肢はユウトの前では取れなくて。


「いいから手を貸せ」


 左腕を取って立たせようとしてくるが、急でうまく力がはいらない。呆れられてユウトが額に手を触れてきて、内側でこもり続けている熱が少し和らいだ。


 自分のことを邪険にしてきた兄がいる恐怖よりも、頼りになる兄がいることの安心感が勝ってしまって、意識がどんどん心許なくなってくる。あんなに残っていたはずの魔力はどこへ行ったのだろう。


「助けた方が倒れてどうする」


「倒れてない」


「おう、じゃあ軍でもギルドでも一人で行けるんだな」


 意地の悪い言葉。きっと強がりで言っていることはばれているんだろう。


「兄ちゃんも帰れなかったじゃん……」


 魔力はアクトの方が残っているはずで。


「今はどっかの誰かが怪我治したからな。寝て少しは魔力も回復してる」


 迷惑をかけたくなくて絞り出した言葉も言い返されてしまう。


「魔力が減りすぎて最低限の魔力強化もできてないだろう。それなのに魔法を使うから魔力回路が痛いんだ」


「魔力ある……」


「ない。そもそもの箱がでかいんだから、本当に魔法が使えなくなるくらい魔力が減ったら死ぬぞお前」


 わからない。なぜ動けないのだろう。さっきまで治癒魔法を使えたくらい魔力は残っているはずなのに、どうにも体は言うことを聞いてくれなくて。


「今の自分の不調はわかってるだろ。これ以上魔力を使うなっていうサインだ。覚えておけ」


 それを的確に指摘されて、虚勢もはれなくなってしまう。駆け回っていた魔力が封印されてしまい、力が抜けて倒れかけると、ユウトに支えられてそのまま背中に背負われた。


「ごめんなさい……」


「お前は……アクトは、よくがんばったよ」


 暖かい、優しい言葉が昔の兄に戻ったようで、小さく返事を返してそのまま体を預けた。

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― 新着の感想 ―
過酷な戦いの中だからこそ? 起きた小さな救い……良かった。
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